17話目 これからやるべき事
魔族が人類領域に侵攻してきた理由かぁ。
前回の輪廻の会合における最終的な措置では、エルフ族、そして魔族は人類と隔離されることになった。
それで各種族間の争いは収まった。
しかし、その弊害として1000年ほど時を経たあたりからエルフ族と魔族の寿命と魔力が落ちてきた。
特に魔族は人類と同じぐらいまで寿命が縮まった者も出てきた。
その対応として魔族は人類領に10年ほど従軍すると内在する魔石が大きくなり、それを使用した次の世代が生まれると元の寿命と魔力が維持されるようになったと。
この人類領への侵攻による効果を炎か闇の大精霊様が魔族に教えたのではないかとの疑惑が生まれたと。
エルフは人との間に子を生すとその子の寿命はエルフ並みに長くなることが分かったが、今のところエルフの寿命対策はここまでだと。
昔はエルフの王族の一部は、風・水魔法術士であることが条件となるが、人類領に移住して人類の伴侶を探していた。
10年以上人類領で暮らしたエルフ王族の寿命が元のエルフ並みに長くなっていないか、エルフの王族、ソシオさんに確認してもらうと。
追加情報として、魔族がエルフ領に侵攻したことは魔族軍の中級幹部、それも情報部隊の隊長でも知らないと。
「今のペット魔族さんとの話やエルフ領で得られた情報を整理するとこんな感じだけど、足りない事柄はあるかなぁ。」
俺は忘れないように情報を書き留めることにしたのだ。
「それでいいんじゃないかしら。
かなり重要な情報が集まったわね。
あっ、待って。
魔族は20年前の大戦の大勝から戦線を停滞させている。
本来は一気に人類領を攻めることにより人類の勢力を減らすチャンスなのに、このタイミングで攻めてこなかったのは軍略上の定石から考えられない謎。
というのも足しておいた方が良いわね。」
「あっ、それ大事なことだわね。
魔族軍は人類が滅亡することを望んではいないのではないか疑惑だもんね。」
「わかったよ。それも書き留めておこう。」
「そのメモの情報をさらに肉付けしていけば魔族やエルフ族の寿命や魔力が減少した理由がわかるかもね。
理由がわかれば対処法を考えることもできるわね。」
「そうだな。
ただし、前回の輪廻の会合の以前の状況、3種族が今の人類領域で共に暮らす対処法はなしだな。
また、血で血を洗う状況に逆戻りしそうだから。」
「そうよね。それ以外の方法を考えないとね。」
「俺たちのこれからの役目は、輪廻の会合に集うはずの者、具体的には月の女王、各使徒とその巫女を探し出し、覚醒しもらうこと。
そして、残りの大精霊様と会うことだな。
その他には、輪廻の会合でどのような措置をするかを決定するために、このメモの事柄の関連情報を収集し、もっと掘り下げて理解していくことだな。
皆んな、協力してくれるか。」
「「もちろんよ。」」
ペット魔族さんとの語らいで、俺たちの今後のやるべきことが少し明確になってきた。
やはり、自分たちの足で情報をかき集め、自分たちで考えることは非常に大事なことだということに改めて気が付いた。
大事なこと?
何か大事なことを忘れていないか。
何なんだろうなぁ。
まぁ、思い出せないからあまり重要なことではないな。
それよりも社の解放だ。
せっかく魔族軍を殲滅したのに新手が来ては厄介だ。
そうだ、雷ちゃん、芦高さんに繋いでくれるか。
「いいぞ、久々の愛人兼美人秘書の仕事だなぁ。
シュウ、もっと俺を使っても良いんだぞ。
身も心もお前にささげたんだからな。」
雷ちゃん何という大胆な発言をするんだ。
よりによって般若様のお近くで。
「シュウ、後でちゃんと私のフォローも忘れないでね。
今夜は冷えるわよきっと。一人じゃ寝られそうにないわぁ~♪」
「私も一人じゃ怖くて寝られそうにないなぁ~♪」
「俺は常にシュウに密着しているので、いつでも昼寝ができるぜぇ~♪」
「妾はエリナの背中で・・・・・・、背中に冷気を送って、エリナが寒さでシュウにくっついた隙に若い男のエキスを補充するかのう~♪」
「ご主人様、最後に変態ストーカーおばばが出ましたので、御気を付けてくださいまし。」
「誰がおばばじゃ。お母様と比べたら妾はまだまだ赤子も同然じゃ。」
「親子で漏らすなよ。」
「・・・・・・」
「ご主人様、突っ込み返しができない究極の突っ込みですわ。
尊敬しております。ポッ」
「ご主人様、呼んだのか。」
「おおっ、ちゃんと雷ちゃんが仕事したぞ。今日一番の感動だぁ。」
「それほどでもあるぜ、もっと褒めていいんだぞシュウ。
シュウに褒めてもらえて鼻高々だぜ。」
「雷ちゃんは何とかでえらいねぇ。」
「そうか、それほどでも・・・・、何とかってなんだ。」
「何とかと煙は高いところが好き。」
「・・・・・・・」
「ご主人様、お見事です。完璧な突込みで、またまた撃沈ですわ。ポッ」
「おっほん、芦高さん。
白い魔石で比較的大きいもの、平均よりも大きいものを回収してくれるか。
回収したら、ペット魔族さんのところに送るから。」
「ペット魔族さんのところで子供が生まれるんか。」
「いや、魔族に回収されないようにするためなんだ。
もちろんペット魔族さんであれば使ってもいいけどな。」
「わかったんだな、後で理由を教えてほしいんだな。」
「もちろんだよ。後でね。
それと、あらかた回収したら社に来てくれるかな。
社を開放するんで緑の魔石が必要なんだ。」
「わかったんだな。比較的大きい白い魔石を回収しながら社に向かうんだな。」
「俺たちはこのクレーターのふちを回り込んでゆっくり歩いて社に行くからね。」
「わかったんだな。じゃぁ、後程。」
俺たちは他の魔族がいないか探知をしながら社を目指した。
何か忘れていないか。
「そこは先ほどの鬼のような突込みのダメージから復活しつつある、愛人兼美人秘書の私、雷ちゃんにお任せください。」
「期待はしていないけど、とりあえず言ってみぃ。」
「それでは僭越ながら、申し上げます。」
「おおっ、秘書らしくなったぞ。美人かどうかは判断がつかんがな。」
「おっほん、カメですね。
カメを忘れておいでです。エリナのボケが全く。
これで俺の正妻の座も近いな。ムフフフフッ。」
「カメ?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ、忘れてた。」
「どうしたのお姉ちゃん。」
「第23基地で待機しているカメさんに戦闘後の連絡をしていなかったぁぁぁぁ。
また、怒特攻大魔神様に大目玉を食らっちゃう。」
「やばい、大事なことって。前もあったな、こんなことが。」
「こちらエリナっす。聞こえますか。」
「はい、ごめんなさい。」
ジャンピング土下座するエリナ
「ごめんなさい。誠に申し訳ござらん。」
口調がやばいよ
「申し訳ござらんでありんす。」
どうしなすった、エリナどん
「社と魔石の探索に手間取りまして。」
「実は大きなクレーターが2つも出来上がりまして、それに巻き込まれた魔石をさがすのがこれが厄介、切開、十六回でしてはぁぁ。
懸命に懸命な我々の捜索にもかかわらず全く手がかりがないままに、日没を迎えまして。いったん捜索を打ち切り・・・」
日没? まだ昼前だぞ。
「すいませ~んっ、すっかり連絡を忘れていました。」
無茶苦茶な言い訳に鬼で突込みされているな。
相手はカメさんじゃないな、エリナの様子から。
どの人だ、恕の人だなこりゃ。
まだ、謝り続けているエリナを支えながら一緒に歩いていると、社が見えてきた。
芦高さんはすでに到着していて、俺たちに足を振っていた。3足で。
一人一足かなぁ。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。