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16話目 魔族が人類領を攻める理由 魔族は戦線を拡大していないのか 編

大防衛戦といえば一つ気になることを思いついたんだ。


"どうしたのお兄ちゃん。"


大防衛戦の後は魔族の戦線が拡大していないように思うんだ。

あれだけ優勢なのに20年前から積極的に攻めてこないというか。

まぁ、人類も魔族の占領地を奪い取るほどの勢いはなく、ひたすら戦線を維持するのが精一杯だったというか。


"確かにね。それまでは闇魔法という人類では対処が難しい魔法を駆使していいように人類を翻弄していたのに、大防衛戦の後はおとなしいわね。どうして? "


"確かに。

しかし、そんな話はどこからも聞こえてこなかったわ。

そんな簡単なことにも気が付かないほど人類が追い詰められていたということなんだけれどもね。"


ちょっと待って、人類を圧倒するだけの力があるのにそれ以上は攻めてこなかった。

魔族も戦線の維持を心掛けていた。


人類領が欲しいのなら人類を滅亡させればいいのにな。

何故20年前で戦線が膠着したのか。


"魔族内で内紛があったとか。"


ちょっと、ペット魔族さんに聞いてみる。


「急に黙っちゃってすいません、ちょっとみんなで念話で打ち合わせをしていました。」


「かまいませんよ。何かをしていることは感じ取れていれました。

農業という職業柄、ある事が成熟するまで待つのは慣れいますから。」


「それで一つ聞きたいことがあるのですが。」


「なんでも聞いてください。知っていることはすべてお話します。


しかし、私も魔族軍の一員でしたので、先ほどのように。聞かれもしないことまで話すつもりはありません。

積極的な裏切り者にはなりたくないというか。わかっていただけますか。」


「それで構いませんよ。なんでも手取り足取り教えてもらってはいけないと、俺たちの守護者というか教えを受けている方々にもそのように言われていますし。


できるだけ自分で考えて、仮説を立て、それを検証するような形で世の中の謎に迫りたいと思っています。」


「そうですね、自分で考えることが大事ですね。

より高みを目指すなら。


ところでご質問は何でしょうか。」


「ええとね、魔族軍は20年前から戦線を動かしていないの。なぜかしら?

20年前の大戦で大勝して、一気に人類領を奪い取るチャンスだったはずなのにね。」


「それはわかりませんね。

私も従軍して15年ほどたちますが、戦線を維持しろとは言われていますが、積極的に人類領を偵察して、弱点を探し、攻め込むような作戦はありませんでしたね。」


「それじゃ、魔族本国で政変などの権力闘争があったとかということはありませんか。

戦争どころじゃないような。」


「そのようなことはないと思います。

魔族の上層部はここ数百年ぐらいは強い皇帝の元に一枚岩となっています。

その前はいろいろあったようですが。」


「そうですか、政変もないと。」


"ということは、今のところ魔族は人類を滅亡までは追い込むつもりはなくて、やっと生きているような生殺しの状態に置いておきたいということかな。"


"人類に滅亡されては困るということかしら。"


そんな考え方もできるということにしようか。

決めつけないで可能性の一つとして心に留め置く方がいいよね。

これだけの情報で魔族軍の行動全体を判断するのは難しいと思うな。


"そうよね。"


"しかし、人類領を攻める理由は多少わかったとして、その考えからするとエルフ領を攻める理由がわからないんだけど。"


"エルフ族は魔族の役に立たないから殲滅するとか。

その割にエルフ領の一部しか占拠していないようだし、軍略から言っても2方面での同時作戦展開は妙案ではないのに。


まして、ただ邪魔だから攻めるという理由はおかしいわ。

両方とも中途半端よね。"


それも聞いてみようか。


「ところで、エルフ領も魔族は攻めているようですが、何か目的はあるんですか。

エルフを征服し、従属化したいとか。

人類と戦う際の肉壁にしたいというか。」


「え~と、私が知る限り、魔族はエルフ領には攻め入ってはいないと思います。

人類領の占領地を維持するのが最優先で、それ以上の戦の拡大は無意味だと思います。


エルフ領を占拠することで魔族の滅びが遅くなるのであれば最初からエルフ領を攻めていたと思いますよ。


う~ん、あそこを2方面同時攻略の対象とする理由は全くないと思いますが。

そんな噂があるんですか。」


「実は漸く昔のようにエルフ族と連絡が取れるようになりまして、エルフ族は魔族と対立しているようなことを言っていました。

それで人類とは仲良くしたいと。」


おそらくは、人類と仲良くしたいのは魔族との対立よりも寿命が短くなることの対策のために人類側に協力を求めたいのだと思うけどな。


"そこまでペット魔族さんに話す必要ないということ? "


もちろんそうだよ。

それを知ったからと言って、おそらくペット魔族さんたちはどうすることもできないから、役に立たない情報は知らない方が良いと思うしね。


"情報を聞き出すためにペット魔族さんをかくまっているでいいの、お兄ちゃん。"


それもあるけど、俺は無抵抗なものは傷付けないと決めたんだ。


でも、そのままで見逃すと死んでしまうか、回復した後でまた先兵となって俺たちと戦うことになるから、このような空間に住んでもらっているんだよ。


"他にもあるでしょ。もっと大事な理由が。"


そうだね、俺たちの志はすべての種族が手を取り合って生きてく世界を作ることなんだ。

どこまでできるかはわからないけど、それを目標に俺たちは進んでいきたい。


そのための第一歩として、ペット魔族さんたちと仲良くなり、魔族のことをできるだけ知りたいと思っているんだよ。


俺たちの志の達成のためにソニアも協力してくれるか。


"もちろんだよ。

私は風の使徒として覚醒したときにその使命も悟ったわ。

お兄ちゃんとお姉ちゃんの志の達成を手伝うことが私の使命。"


じゃぁ、ペット魔族さんたちこともわかってくれたのか。


"お兄ちゃんがそう考えるのであれば、今は無理かもしれないけど、じっくりペット魔族さんたちについて考えてみたいと思う。"


"今はそれでいいんじゃないかしら。

シュウが言ったから何でも従うのが使徒の役割りだとは思えないし。

ちゃんと自分で考えてね。"


"了解だよ"


「またまた申し訳ありません。

今回もお渡しした魔族さんたちは応急処置で死なない程度の治療しかしていません。

後はお任せしていいですか。」


「わかりました、すぐに医療班で対応します。

それではこの辺で失礼しますね。

また、野菜ができたらお渡ししますね。」


「期待して待っていますよ。それじゃ、また。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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