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15話目 魔族が人類領を攻める理由 魔石 編

「わかりました。申し訳ない。訂正して話します。


まず、魔族の誕生には亡くなった魔族が残した魔石が必要となります。

その魔石により生まれてくる魔族の寿命や能力などがある程度影響されます。

魔石は一族の亡くなった者から新しい命に引き継がれることがほとんどです。


実は人類領で10年従軍するとこの魔石の大きさとその質がが明らかに違うのです。

魔石の大きさと質は誕生するために受け取った状態にも影響を受けますが、誕生した後にどのように生きたかでも亡くなった後の魔石の大きさと質が変わってきます。


それがただ人類領で10年従軍するとたいそう立派な魔石になるのです。」


「では先ほどの親が従軍したかではなく、従軍した親族の魔石を受け取ることができるかで、その後の寿命も決まるし、自身が従軍することでも寿命が延びると。」


「そういうことです。」


「待って、もっと大事なことがあるわ。」

「どうしたの、エリナ。」


「私たちは倒した魔族の魔石を回収しているのよ。理由もわからずに。

それは魔族の誕生数を制限することになるのでは。」


「その所は心配はいいりません。魔族だけが魔石を持つ者ではありません。」


「あっ、魔物か。」


「そうです。魔物の魔石は小さいかもしれませんが、生気に溢れています。

150年ほどは生きられるでしょう。

その魔族が従軍すればその魔石を受け取る次の世代の魔族は通常の寿命を全うできると思います。」



「魔石の回収は強い魔族の誕生に制限をある程度掛けられるけれど、魔族の勢力後退に決定的な効果はないということですね。」


「概ねそんな感じですね。

ですから、説明としては魔石のことを省いて、親の従軍が生まれてくる子の寿命を決めると話しましたが、おお旨、その説明の方が理解しやすいかと思いまして、嘘をついてしまいました。申し訳ない。」


「われわれも勉強になりました。


だますつもりはなくても言い方と受け取り方によっては事実とは違った方向に話が向かってしまうことを。


でもこれからは、できるだけ正確に話をしてほしいと思います。

誤解は話し合いの中で修正していくことを希望します。


よろしいですね。」


「わかりました、改めて謝罪します。

話はできるだけ正確に、誤解を受けやすいことは説明を補足します。」


「それでよろしくお願いします。」


"シュウ、話を戻すけどね。


なぜ魔石は人類領で10年以上従軍すると大きくなり魔族の寿命が延びるのか、それを知ることで今抱えている各種族の問題点が明らかになり、それに対応するために最後には輪廻の会合が発生し、そして、あなたの志が達成する道が見えてくるのだと思うわ。


すべての種を滅亡から救い出すというあなたの崇高な志が。"


"私もそれは間違いないと思うな。"


エルフ族と魔族は2000前の輪廻の会合で人類と別の空間に隔離され、争いがなくなったが、やがて種の寿命が短くなり、両族とも緩やかに種としての滅亡に向かっていることを知った。


魔族はどういう経緯かは今のところ分からないが、人類領で10年間戦うとその子の寿命が延びて種の滅亡が避けられることを知った。

それを魔族が忠実に実行しているために人類と魔族が永遠と戦っていると。


エルフ族は寿命と魔力が徐々に弱くなっているのはわかっているが、魔族ほどは具体的な対策がわかっていない。


対策の一つが王族が人類領に移住し、人類との間に子をもうけてその子がどうなるか見ているとのことだ。


これは元々寿命がエルフの方が魔族よりも長いため、近々種が滅亡するような危機感がないためにゆっくりと対策を探っているというところか。


待てよ、エルフ王族と人類の間の子はエルフ族と同等の寿命になると言っていたな。

これが魔族の従軍と同じように、人類領で10年以上生活したために子の寿命が延びたとは考えられないだろうか。


片方の親が人類であるためハーフとしての寿命は生粋のエルフ族よりは短くなるはずだ。

それが同等ということは。


これはいずれエルフの王族に確認しなければならないな。


"確かにそうね。それであればこれまで見聞きしたことのすべてに辻褄が合うわね。"


"そうなんだ。

魔族が人類領で戦うのは種としての寿命を延ばし、滅亡を免れるための方策なの?。


でも、お兄ちゃんが言ったことが正解だとすれば、魔族皆が10年間人類領で生活すればいいのよね。戦う必要はないんじゃないかな。"


"確かに、人類領にも未開の地は結構あるのだから人類にお願いしてそのような場所に町を作り魔族だけで住めばいいのに。"


それは・・・・・・、種としての記憶かもしれないな。


"種としての記憶ってにな? "

"ソニア、2000年前の輪廻の会合はどうして起こり、どうなったか知っているかな。"


"ノームちゃんたちに聞いたわよ。

人類と魔族、そしてエルフ族のそれぞれが種として勢力が拡大し、互いに重なり合うようになると争いが発生したわ。


その争いの中で大魔法という多くの敵を葬る力が一般的に知られるようになると、戦いで多くの者が死んでいくようになった。

それも種としての滅亡が心配になるほどに。


そこで2000年前に輪廻の会合に集いし者共の中心にいる者の判断で、もともと数の少ない魔族とエルフ族を別の空間に転移させることにしたの、光の公女と月の女王の力を使って。


魔族とエルフ族は数も多くはないので、同じ空間でも別々の大陸に転移させることで生活圏は重ならなくなり、それぞれの種族が互いの干渉から独立し、種としての平穏を手に入れた。

という訳よね。合っているかな。"


"私たちもそのように理解しているわ、ねっ、シュウ。"


ああっ、その通りだ。

さっきの話に戻ると、魔族が人類領でその一部でも暮らすことは2000年前の争いに戻ることになる。


人類は2000年もすればそのような争い事があったことは御伽噺にしかならないが、寿命の長い魔族は数代前の実際にあった史実として認識しているんじゃないかな。


"じゃあ、人類領で暮らすために共存ではなく、まずは人類領を奪い取り人類が抵抗できないほど弱らせてしまえということなの、魔族の戦略としては。"

"そんな、あまりにも自分勝手な。"


そうする必要に迫られるほど、前回の輪廻の会合を引き起こした2000年前の各種族間の争いが激しかったということなんじゃないかな。


"しかし、魔族はどして人類領に行けば種族としての滅亡が避けられることを知ったのかしら。"

"それほどの知識があり、さらに魔族の種としての滅亡を座して見ていられない存在が教えた。"


魔族の守護者、火の大精霊、あるいは闇の大精霊。


"そんなぁ、大精霊は種の見守り人のはずよ。積極的に一方の種族に有利な情報を流すなんて。"


"お姉ちゃん、そうと決まったわけではないわよ。あわてないで。

乱れた心ではものの本質が現れたときに見逃す危険があるわよ。


感情的にはわかるけど、光の公女候補なのだからその部分は冷静な目でものを見なくちゃね。"


"ごめんね、つい熱くなっちゃった。

これまでの魔族との戦い、人類として追い詰められた大防衛戦のことを考えるとね。"


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を公開しています。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。


シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


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