10話目 第2軍団の思惑、駄女神さんの思惑
熊さんが何故か分裂して、増えた。
まぁ、違うけどな。
確か第2軍団の軍団長のベルタランさんだったか。
面倒なので、熊さん2号だな。
「熊元師匠、はちみつ酒の飲み過ぎで分裂したんですか。」
「そんなわけあるか。」
「じゃ、熊仲間ですか。もしかて、 ここは第23基地ではなく、クマ牧場?だったりしてね。」
「エリナ、ひどいじゃないか。ちなみに俺は人だ。」
「俺も人だ。」
「軍団長、お久しぶりです。入隊式以来ですね。」
「熊でも軍団長に成れるなんて、第2軍団は緩いな。」
「ソニアちゃん、それは違うと思うわ。」
「えっ、違うのお姉ちゃん。」
「熊が軍団長に成れたのではなくて、熊だから軍団長に成れたのよ。
だって、ここクマ牧場だもの。」
「エリナさん、それ冗談で言っているんですよね。本気じゃないですよね。」
「私はいつも真剣です。キリッ。」
「熊参議、リーナ様のお嬢様はこんな感じなのか。」ボソ
「一部では、天然平目ちゃんと呼ばれているぞ。熊軍団長。」ボソ
「じゃ、ボケをかましているわけじゃなくて、本気のボケ?」ボソ
「もちろん。本気でここがクマ牧場と思っているんじゃねぇか。」ボソ
「なんか、母親とは違うな、あのカミソリのような切れがなくて、ほんわかしているというか。」ボソ
「普段はそうなんだが、シュウのことと戦闘になるとあのリーナを超える鋭利さと爆発力がある。
戦闘時の爆発力の源は結局はシュウとあそこの大蜘蛛だがな。」ボソ
「あの大蜘蛛は例の進化したという。ヤバいお方ですな。」ボソ
「とにかく、あの小隊だけは本気で怒らせちゃだめだぞ。
あのリーナよりヤバいから、足元にも及ばないから。」ボソ
「知ってるよ、一晩で12魔将を含む魔族師団を3つも葬ったんだろ。
第12師団の右側に居たもう1個師団も実は彼らが亡きものうわさもあるぞ。
実際、霧が晴れるように朝になったら何の痕跡もなく消え去ったのだからな。」ボソ
「だったら、最後のそれはシュウたちじゃねぇな。
シュウたちがやったのなら1個師団分の荒野ができるはずだからな。」ボソ
「あの~ぉ、ボソボソ2匹で何をささやき合っているんですか。
おねだりの相談してもはちみつ酒はないですよ。」
「シュウ、この際だからはっきり言っておくぞ。」
「熊元師匠なんでしょうか。」
「俺は、熊じゃねぇ、人だ。軍団長は熊かもしれんが。」
「ゲッ、裏切者め。シュウ、エリナ様、ソニア様、聞いてください。」
「「「予想はつくが、とりあえず言ってみぃ。」」」
「私は、私は熊かもしれません。」
「「「「はぁぁぁぁっ? 」」」」
「熊なので魔族とうまく戦えません。
だから第233ベースキャンプ前方に展開している魔族師団を撃退してくださいね。」
「「「「・・・・・・・」」」」
「熊にはむりだなぁぁ、なんとかしてほしいなぁぁぁ。チラ。」
俺は手伝いに行けと言った死神さんと俺も連れて行ってくれと懇願した黒い塊の方の心をはっきりと掴むことができたような気がした。
黒い塊のお方が抜けた、第2軍団て。
「腑抜けの集まりということじゃな。」
「ここに聖戦士の熊公を追加しても、軍としての力は上がらないということだな。」
「ご主人様。今の第2軍団は何とか守りはできてもここぞというところで一気に攻めるというか、攻める形すら整えられないということじゃないでしょうか。
もちろんどうやって攻めようとかということも考えていないのかもしれません。」
さすがにそこまでひどくはないと思うが、俺たちがエルフ領に行く前、1週間前の第2軍団とはまるで違う集団なのかもな。
それと俺たち旅団に軍として依存し始めたということも考えられるな。
死神さんは、これが狙い?
「死神は第2軍団を乗っ取るつものなのかのう。
キーマンをからめとってしまったのはそれが狙いかのう。」
「そんなつもりはないんじゃねぇのか。
ただ、やつが欲しかっただけだよ。
しかしよう、あのからめとり方、徹底しているよなぁ。絶対にもう逃げらんねぇもんなぁ。」
「この際、ご主人様方で第2軍団を乗っ取ってしまえばいいのです。
乗っ取らなくてもこのような依頼をしてくるなんてご主人様たちの下僕と同じですわ。」
「すでに下僕と化しているとな。確かにその通りじゃな。」
「シュウ、下僕共にお前の力を見せつけてやれよ。
そうすれば本当の意味で下僕化すんぞ。」
まぁ、下僕化は置いといて、まずは魔族軍と戦い、そして生き残り、エルフ領を冒険しようよ。
「ところで、軍団長、当面の敵は1個師団ですか。」
「今のところはそうと聞いている。闇魔族が中心なので対処が難しい。」
「第233ベースキャンプにはどのぐらいの兵力が詰めていますか。」
「第22師団だ。第232ベースキャンプには第42、32師団がいる。ここには第2、12師団がいる。
敵が攻撃してきたら第22師団は後退し、第42、32師団が敵を左右から挟み込むように前進する。半包囲が完成した時点で第22師団は反転し、全軍で包囲戦とする予定だ。」
「戦闘プランはしっかりしていると思うのですが、我々旅団を呼んだのはどうしてかしら。」漸くほんの少しだけやる気を見せた駄女神さん
「基本、向こうが仕掛けてきたらの戦術で、敵さんもそれを警戒しているのか仕掛けてこないんだ。
こちらから仕掛けるのは今のところ考えていないしな。
そこで、敵にちょっかいを出すというか、できれば殲滅してほしいというところをお願いしたいと思ってな。
少なくともちょっかいを出せば、戦況が変わるだろうよ。」
「私たち旅団が敵を殲滅し社を解放したら、また、旅団の基地になりますが。第1085基地として運用しますよ。」
「そこはほれ、ジュラが我々に残す選別というか、ねっ、名前は1085基地でもいいので運営は任せてほしいとか、ねっ、いろいろあるでしょ。カロラ参議。」
「カロラって誰だ。」
「カローラ? じゃと思うのじゃが。」
「駄女神の本名ですわ。忘れたのですか。」
「「だれそれ? 」」
「熊のくせにおねだりが過ぎると痛い目にあうぞ。
まぁ、いい。今回は死神さんのたっての希望だろうからな。
だけどなぁ、我々に頼りっきりだと軍団としての体をなさなくなる時が来るぞ。
今回のことで第2軍団を見る目が変わってくるだろうし。
それでも、旅団に敵師団との戦いを預けるのか。」
「カロラ参議、その通りだよ。
軍団で魔族を倒し、社を解放するなんてどこの軍団もこの半世紀なし得なかったことだ。
君たち旅団が、言い方が悪いなら許してほしいが、異常なんだよ。
今の各軍団は負けないように人類の領域を減らさないようにするのが精一杯だな。」
「わかった、熊と軍団のあるべき姿を議論している暇はない。
我々旅団でとりあえず敵に当たってみる。
我々が行くことをベースキャンプに居る第22師団に連絡してくれるか。
今日の午前中でけりを着ける。
あとは地図の用意を。第233ベースキャンプと敵の師団の位置を示してくれ。」
「今日の午前中だと。飛んで行くつもりか。
第233ベースキャンプまでだって普通の徒歩行軍で最低9時間、馬車でも7時間はかかる。」
「その辺は熊が気にせんでいい。
シュウ、芦高さんに引っ張ってもらうとして、通常の行軍よりもどのくらい速いんだ。」
「俺たちの耐えられる速度が30倍ですね。
9時間は540分だから18分、第233べ-スキャンプまで20分ですね。」
「軍団長、第233ベースキャンプから魔族師団までの距離は。」
「行軍速度ベースで4時間だ。」
「そうすると、ベースキャンプから240分の1/30は、10分もあれば着きますね。」
「では、初回の攻撃は第3小隊とソニア様で行ってきて。
倒せたら倒しちゃって。倒すと思うけど。
第233ベースキャンプで敵の位置を確認後、戦闘、戦闘指揮はシュウに任せる。
戦闘終了後に簡単な昼食と戦果の報告。
昼食後に緑の魔石回収と社の探索。
社の解放、これはソニア様の役目ね。
解放後は他の魔族軍の探索。
第2師団が転移魔方陣で第1085基地に到着後は旅団員は全員旅団宿舎に戻って夕食。
本日は解散。そして、いよいよ明日はエルフ男若衆狩ね。
完璧な計画だわ。
シュウたちが戦闘に行っている間は私とタイさん、カメはここで待機。
うちの最高戦力の邪魔をしちゃ悪いから。
カメはエリナとの連絡係。
エリナは風魔法が届くわよね。そう、大丈夫と。
タイさんはここで戦闘の作戦支援。エリナ-カメ通信を利用してみて。
第1085基地解放後はタイさんは旅団宿舎に戻って、何かシュウたちに+夕食を作ってあげて。
私はしょうがないから第1085基地に行くわ。とりあえず一回は行っとかないとね。基本いらない基地だけど。
さっ、皆、私の決めたとおりにちゃっちゃっと動くの、いいわね。
あっ、第2師団は午後にすぐ第1085基地(仮)に移動できるように。
もう、教会本山に行っててもいいわよ。時間がもったいないから。
絶対に今日の夕飯まですべてのけりを着けるんだからね。
全ては明日のために。」
俺はエリナとソニアと顔を合わせて、うなずき合った。
「「「どんだけエルフ男若衆狩りに執着してんだよ。」」」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
本日10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を投稿しています。
この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。
死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。
時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。
シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。
一応、本編を読でいなくてもひとつの物語としては成立しているようなしていないような。
この別伝を読んでいただき、面白いと思ったら本編もどうぞ的なものに仕上がればいいなぁと思ってたりしてます。