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7話目 チンチクリンズの謀略 チンチクリン3姉妹の解散と再結成編

一度しけって、乾いたクッキーの味は、当然、お察しだ。

それでも、ソニアは嬉しそうにハムスター食いをしていた。

頬がちょっと赤い。

愛情の味をかみしめているからだろうな。


「俺たちは昨日までエルフ領に行っていました。

そこで、ソニアが風の使徒として覚醒し、そのおかげで風の大精霊のお二人と言葉を交わすことができました。」


「そうか、皆頑張ったのじゃな。

特にソニアちゃん。良かったのう。

ソフィアのことは受け入れられたのじゃな。」


「はい、お兄ちゃんとお姉ちゃん、そして、ノームちゃんとアクアちゃんが私に本当の家族としての愛情をくれていたので、お母様の辛い過去を、それに引きずられた私の重い過去を受け入れることができたの。


これまでも、これからもみんなに愛されていることが分かったから、過去の出来事にちゃんと向き合えて、そしてお母様の愛情も感じることができたの。


その愛情で私は力と使命に覚醒しました。

私は風の使徒として使命を果たします。


皆の、そして、お父様とお母様の愛情を感じながら、今度は私が皆の役に立ちたいと思うの。」


「そうか、ちょっと寂しい気がするが、娘が巣立ったということだな。

ちょっと、いや、ほんとに残念だな。さみしいぜ。」


「アクアちゃん、儂も寂しいが、子は巣立つものじゃ。

いつまでもチンチクリン3姉妹のままではおれんじゃろ。


己の重い過去を飲み込み、己の寂しい生い立ちを払い除け、己の受けた愛情を糧として、我らの呪縛を自ら解き放ったのじゃ。


だから、我らはそれを大きな祝福、ぐすん、大きな祝福を持って、ぐすん、ソニアちゃんの巣立ちを見届けねば、ぐすんぐすん、ならぬのじゃよ。」


「一人だけわかったような口をきくんじゃねぇ、ぐすん、このチンチクリン×2め。

ぐすん、そんなことぐらい俺だったわかってらぁ。ぐすん。

でも俺たちの娘が旅立ち、困難な道を進み始めたんだぞ心配ぐらいしやがれ。ぐすん。」


「チンチクリンは心配じゃなくて、寂しいだけじゃろ。

お子様じゃからな。ぐすん。

儂のは子の成長を感無量で見守る母親の心情なのじゃ、ぐすん。」


「自分だけ大人になったような口を利くんじゃねぇぞ。

俺だって、ソニアちゃんの母親のだぜ。娘を嫁に出す気分だぜ。

ぐすん。

それにしてもチンチクリン×2は成長しねぇな。もっと、牛乳飲んだ方が良いじゃねぇか。」


「きさまこそ、何万年もそのままなのじゃ。

食い意地が張っておる割にはまったく成長しておらんのじゃ。

所詮チンチクリンは無駄の大食いなのじゃ。」


「詰んだな。」

「詰んだわね。」


「ノームちゃん、むなしいからやめよ。

いくら食べても飲んでも成長しないのがチンチクリンの呪縛だから・・・・・。

私は抜けたけど(ボソ)」


「「ずるい。ソニアちゃんずる過ぎ。一人だけ成長期に入るなんて。


ぐすん。

ずるい。

ぐすん。」」


「良かったな、ソニア。もうすぐ、成長期だって。」

「ソニアちゃん良かったね。お姉ちゃんだね。チンチクリンズの。」


「えへへへへ、漸くチンチクリンズから卒業かぁ、長かったな幼児期。」

「「俺たちは数万年たっても幼児期から抜けらんねぇんだが。

シュウ、何とかしろや。」」


「しらん。」


「冷たい奴じゃ」

「幼児虐待だぁ」


「チンチクリンズがなぜ成長しないのかは置いといてっと。どうせ大精霊だからと言う答えに決まっているし。

今度、風の大精霊様たちにお会いするのだけれども、何か伝言はあるかな。

そう言えばシルフィード様は久しぶりにチンチクリンズに会いたいような話をしていたな。」


「アクアちゃん。」

「ノームちゃん。」


2人手を取ってうなずき合っている。

そして目を細めて、口の端が片方挙がった。

うぁ、こいつら何か悪だくみを思いついたな。

思いっきり顔に出ているもんな。


「わしらの伝言じゃが、久しぶりに同窓会でもせんかとシルフィードちゃんだけに伝えてくれんかのう。」

「そっ、そっ、同窓会。いい響きじゃねぇか。うんうん、同窓会。」


シルフィード様だけって、なんか引っかかるなぁ。


「伝えるのはかまけど、シルフィード様だけでいいんですか。シルフ様には伝えなくても。」


「シルフには絶対に内緒だぞ。言っちゃだめだぞ。」

「そうなのじゃ、シルフィードちゃんだけに伝えるのじゃ。

決して、シルフに気取られてはなるまいぞ、シュウ。」


「シルフさんにはどうして言っちゃだめなの。

隠しても風の大精霊だからその辺の情報は筒抜けになるかもね。」


「ソニアちゃん、大精霊にもいろいろ都合があるのじゃ。

だから、う~んっと、アクアちゃんなんかいい理由ない。」


口で言っちゃったよ、このスカ大精霊。


「とりあえず女子会だからでいいんじゃねぇか。なぁ、おばば。」

「妾もそれでいいと思うのじゃ。

久々の女子会。女子? なんか引っかかるのじゃ。

久々の幼女会じゃから、女の子だけでと言えばいいじゃろ。」


「おばちゃんさん、それでもシルフさんが付いてきたいと言ったらどうするの。」

「そうじゃなぁ、スケベとでも言っとけばいいのじゃ。」


「スケベな大精霊。ちょっと、まずい響きねぇ。

スケベでもいいから来たいと言うかもよ。」


「奥様、そこは、大精霊が二人ともエルフ領を離れるのは、エルフ領に対する大精霊の加護というか祝福が途切れるのは何か良くないことが起るかもしれませんと。

その為、今回は幼女会と言うことでシルフィード様を人類領にご招待し、水と土の大精霊様と会っていただきたいと説得するのはいかかでしょうか。」


「それはいい話の流れね。

シルフ様にも初めからそのように話してみた方が隠し事がなくていいかもね。」


「俺はまだ、何故シルフィード様だけをここに招待するのかがわかんないんだけど。」


「うるさいのじゃシュウ。

巨乳ガン見が趣味のスケベなシュウは美幼女会の話に交じってくるでない。」

「ノームちゃんの言う通りだ。

甲斐性なしのシュウは女の子の話に割り込んでくんな。」


なんかえらい言われようだ。

これは絶対何か企んでいるな。

わかりやすいからなチンチクリンズは。


「話は変わるけど、風の大精霊のシルフィード様ってどんな方なのかしら。」

「おばちゃんはかわいい人だよ。

背格好はそうだなぁ、アクア様とノーム様よりも少し背が低くて、幼い感じがするなぁ。

美少女だよ。

う~んっと、美幼女かなぁ。」


「雷ちゃん、シルフ様の背格好はどんな感じ? 」


「父ちゃんはシュウと違って、背が高くて、がっちりしていて、イケメンだぞ。

でも俺はシュウの方がカッコええと思うがな。

まぁ、愛人兼美人秘書をやっているわけだからそう思うのは当然だよな。」


「なんか対照的なお二人なのね。背が高いイケメンとかわいい美幼女。」


「おばちゃんが前にアクア様からご飯を全部シルフのデカ物に取られたからおっきくなれねぇんだと言われて、激怒したと言ってたなぁ。


ご飯と牛乳を父ちゃん以上に食ってもおっきくなれないのに、ぐさぐさと好き勝手に言いやがって、私とそんなに身長が変わらないのに少し高いからと言って自慢しやがってと地団駄踏んでたぞ。」


「まっ、雷ちゃん、シルフィードちゃんの背の高さの話はもういいんじゃないかぁなんてね。

誰も興味がないでしょ。ねっ、ねっ。」


「そうなのじゃ、誰もシルフィードちゃんの背の高さのことになんて気にしていないのじゃ。じゃからね、この話はしまいじゃ。」


はは~んっ。さてはチンチクリンズめ、何か企んでいるな。


「シルフィード様って、ここ、土の神殿に来たことはあるの。」


「かなり昔じゃが、何度か訪ねてきたことはあるのじゃ。


昔は人類領とエルフ領を繋ぐ秘密の風見鶏がいくつか設置してあって、そこに秘密の祠や小さな泉も併設されていて、お互いの神殿を簡単に行き来できたのじゃ。


前にも言った通りに大精霊が神殿を留守にすることは好ましくはないが、風の大精霊は二人いるのでシルフィードちゃんはたまにフラフラ出歩いているのじゃ。

風の大精霊だから腰が軽いのじゃ。背は低いけどな。」


やっぱ、何かがある。

背に関することだな。

漸く人類領と行き来ができるようになって、シルフィード様もここに来ることができる。

そして、ソニアが大精霊の呪縛から抜け出て、成長期に入り、チンチクリンズから卒業しそうだ。


あぁぁぁぁぁ、まさか。


「ちなみに、シルフィード様がここを訪ねてきて一番初めに何をするのかな。」


「あの壁を背にして3人並んでだな、誰が一番・・・・・・・モガモガ。」

「アクアちゃん、それを皆の前で言っちゃだめぇぇぇぇぇぇ。」


やっぱりこいつら・・・・・、ソニアが抜けた後のチンチクリンズにシルフィード様を入れて、チンチクリン3姉妹を再結成するつもりだな。


「大精霊の美幼女会のおやつには例のケーキ屋さんの新作がいいと思うけど、誰が買いに行くのかな。」


「それは決まっているのじゃ。シルフィードちゃんだ。

何せ背が一番・・・・・・モガモガ。」

「ノームちゃん、それを皆の前で言っちゃだめぇぇぇぇぇぇ。」


こいつら、シルフィード様をチンチクリンズに入れ、さらに一番背の低い彼女をいいように使いまくるつもりだな。


「ソニア、チンチクリン3姉妹の掟は誰が決めたんだ。」

「私だよ。

ノームちゃんとアクアちゃんのケンカがなかなか終わらなかったから、私が強制的にそう決めたんだ。」


「じぁ、その掟はシルフィード様は知っているのかな。」

「えっ、なんで、知っているわけないじゃん。変なお兄ちゃん。」


変なチンチクリンズに聞かせたかったんだよ、今の言葉を。

そんな掟にシルフィード様が従う理由がないじゃないか。

チンチクリンズ、マジ、乙。


目の前には絶望的な表情で地面に崩れ落ちたチンチクリンズがいた。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。



10/5より、「死神さんが死を迎えるとき」という別伝を投稿する予定です。


この物語は「聖戦士のため息 トラブルだらけですが今日も人類が生きてく領域を広げます」の別伝になります。

死神さんと旧ランク8位が結婚式のために故郷に帰ったときの物語です。

時間的には本編と同じ時の流れになっていますので、別伝としてお伝えすることにしました。

シュウが風の大精霊と会合した後の本編の進行に大きく影響してくる別伝ですので、本編ともどもよろしくお願い致します。


一応、本編を読でいなくてもひとつの物語としては成立しているようなしていないような。

この別伝を読んでいただき、面白いと思ったら本編もどうぞ的なものに仕上がればいいなぁと思ってたりしてます。


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