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2話目 帰りたくない

漸く王族との話が終わった。

これで今回のエルフ領での訪問でやらなきゃいけないことはすべて終わった。


夕食を兼ねた交流会の会場である村の集会場に行くために村長の家を出たときには日はすでに傾き始め、空が赤くなり始めていた。


俺たちはエルフの王族と連れ立って、再び集会場に戻ってきた。


戻ってこなきゃよかった。見たくないものが転がっていた。


そこには既に酔っ払いが二人。


何をやっているんですか、あんたら。

次の打ち合わせのための下準備をしていたんじゃないんですか。

ええっ、駄女神さんとカロリーナさん。


なにぃぃぃ、飲みながら打ち合わせだぁぁぁ。

なにぃぃぃ、エルフ男を愛でながらいっぱいだぁぁぁぁ。


やる気があんのか、お前ら。

人類とエルフ族の交渉の下準備のそのまた下準備なんて、めちゃくちゃ重要な事じゃないか。


酔っぱらって喧嘩でもしたら、人類とエルフ族のせっかくの友好ムードがぶち壊しになるぞ。


えっ、交流して交渉相手をよく知ることが第一の目的だから、仕事の趣旨からは外れてないだと。

どうせ今から交流会で飲むんだし、早いか遅いかの違いだと。


まぁ、仕事しているんならしようがないけどな、駄女神さんは第1083基地に今晩帰るんだから飲みすぎんなよ。


えっ、帰らない。引っ越した。


どこに?


集会場の小さい部屋に住み着くつもりと。

カロリーナさんと二人でだってぇぇぇぇ。


駄女神さんは百歩譲って、今までの経緯があるので理解したくはないが、無理やり理解したとして、カロリーナさんがここに住み着く理由があんのか。


ほっほぉぉぉ、気の合ったもの同士でシェアハウスするのか。


ちなみにどの辺で気が合いましたかね。


「「いつまでたっても男ができない!!」」


すっげぇぇネガティブなところですね。

もしかして、傷のなめ合い?


えっ、違うの?


駄女神さんは精々30年、カロリーナさんは百数十年、なるほど、年季が違うわけね。

それで、駄女神さんがカロリーナさんから数々の失敗談をおそわつていたわけね。

それを反面教師にして、今後は失敗がないようにするつもりなのね、駄女神さん。

そうすると、傷をなめてもらっていたのがカロリーナさんと言うことで。

合ってる?


釈然としないけど、改めてそう言われるとそうだとしか言えないということですね、カロリーナさん。

現状が良く見えてきたような気がします。


やけ酒とそれを煽っている駄女神さんと言うことでLAですね。

それはさぞかし、ご飲酒の量が、大変なことになってしまいそうですね。


何、忘れるまで飲むと、これまでの失敗をすべて忘れるために飲むと。


それは止めておいた方がいいんじゃないででしょうか。

駄女神さんでさえ、死ぬほど飲んでも、1/10も忘れられないと思いますよ。

カロリーナさんだったら千回は急性アルコール中毒にならないと忘れられない儚くおぞましい思い出で溢れているんじゃないですかね。


「「うぁぁぁん、幸せなシュウが私たちの心をえぐりまくっているる覚えていろよ。」」


まぁ、あれだけ飲めば覚えていられないのはどっちでしようね。


「シュウ、夕飯ができたって。村長の奥さんが言ってたわ。

明日から懐かしがってたいつものキャンプ飯なんで、今日はエルフ料理を一杯食べて行ってね。


えっ、シュウ、なんでカロリーナさんにひっ付いてんの。

こっち来なさい。」


「帰りたくない? ここに住み着くって。

住むところはどうするの?

さっきはキャンプ飯が恋しいと言っていたのに、急に帰りたくなくなるなんて変ねぇ。



住むところは集会場の隣の部屋に潜り込むの?

バッコーン(幸せもんは来んなと言いう表情をした怒特攻大魔神様の強化型ハリセン炸裂)


えっ、隣の部屋じゃなくて、集会所の台所?

それでどうして急にゴソゴソし出したの。



なるほど、台所で居場所を確保しているところを表現しているのね。」


「お兄ちゃんが、お兄ちゃんが、Gかになっちゃったぁぁぁ、どうしよう。うぇぇぇぇん。」


夫婦漫才、家族漫才はエルフ族との夕食兼交流会で一時中断した。


「交流会が終わったら帰るわよ。シュウいいわね。」

「交流会が終わったら帰るわよ。駄女神、わかった?」

「交流会が終わったら帰るぞ、カロリーナ嬢。」


「「「帰りたくなぁぁぁい」」」


交流会も無事に終わり、俺たちは特一風見鶏のある社にのんびりと歩いてきた。


王太子にソシオさん、カロリーナさん、村長にその奥さん、パキトさん、アイラにアラナ、子供たち。

エルフ領でお世話になった方たちみんなが見送りに来てくれた。


何故か、当然かもしれんが、エルフ男若衆の2人はいなかった。

駄女神さん、物欲しげにキョロキョロするのは止めましようね。

露骨に魂胆が丸見えです。今日はお持ち帰りは厳禁です。


エルフ族の皆、そんなに別れを惜しんでもらわなくとも、明日の夕方には戻ってきますって。

マイお箸とマイお皿を持参でね。

何ならお土産にキャンプ飯を持ってきましょうか。

是非、人類の文化の結晶、キャンプ飯を味わってもらいたい。


”シュウ、それは止めた方が。人類はこんな食生活が標準だと誤解されるといけないから。

言いたくはないけど、キャンプ飯が標準だなんて、どんだけ人類の文化が貧しいのとか言われて、本気で同情されちゃうから。


何なら私が1、2品料理を作って来てもいいわね。

もうタイさんも呼んできちゃおうか。

どうせ、その後すぐに一緒に風の神殿まで来てもらうことになるんだし。”


しかし、明日からの次の冒険のための準備の前に、特一風見鶏とエルフ領のことを誰にどこまで話すかが課題だよね。


”そうよねぇ。カメさんとタイさんには大精霊がらみ以外のところはすべて話さなきゃね。

ソニアちゃんがエルフと人のハーフだったこととも話しておかないとソシオさんとの話がかみ合わなくなるものね。”


”話がぶっ飛んでいて、信じてもらえないかもね。きゃははは。”


もうめんどいから、社の裏に連れ込んで強制的にここに連れてきちゃおうか。


”それだと、神隠しにあったみたいで、残された人たちに迷惑を掛けそうだから、納得して自らついてきてもらわないといけないと思うの。”


そう言えば熊師匠も駄女神さんも納得と言うか、喜んでここに来たもんな。


”人類の恥部を晒しただけだったような気がするけど。”


少なくとも熊は失敗だったね。

””だね。””


「シュウ殿、準備が終わってこの村に戻ってくるのはどのくらいですか。

それまでにこちらの準備を整えておきますよ。」

「3日間ほどはかかるかもしれません。

はじめての人も連れてくるつもりですし。」


「問題は越後屋さんの追及をかわせるかよね。」

「そうだね、儲け話には妙に鼻が利くからな。

王都で人類の土産品を売るとか、普通にやりそうだからね。」


「お土産買ってくるのでおとなしく待っとけで、うるさくなくなると思うけどな。基本的に「ただ」が一番好きなようだし。」

「よし、私も行きたいとか言い出したらお土産で手を打ってもらおう。」


「エルフ族の皆さん、いろいろありましたが、とりあえず人類領に帰ります。

またすぐ、たぶん明日の夕飯をもらいに村長宅へ伺うと思います。

それでは。帰りますね。」


「しょうがない、帰ってやるか。エルフとの交渉の準備をしなきゃならねぇし。

死神さんいるかなぁ。どうせ用もないのに第2軍団の司令部に入り浸っているんだろうな。

そんなポンコツになっても旅団の中隊長だからな。

エルフ族と人類間のことを勝手に決めたらすけぇ怒り出しそうだからな。

先日も勝手な事をしたら即首チョンにすると、シュウを脅して楽しんでいたからな。

この頃は鎌の調子が良くて、何でもスパスパきれいに切れると自慢していたし。」



特一風見鶏をソニアが回して周りが光に包まれた。

そうして、光のカーテンが落ちると第1083基地の社の裏だった。

帰ってきた。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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