31話目 王族と族長会議の使者との会合 後編
「そういえば、もう一つここに来た目的があると伺いましたが。
それについてはどうでしたか。」
「はい、無事に次回の冒険の目標が定まりました。」
「どんな冒険をするのかね。」
「はい、人類側の古文書にエルフ領には風の魔法の聖地があると載っていました。エリナは風魔法術士ですので、そこに行ってみたいと思います。
村長、今まで隠していてすいません。」
「風魔法の聖地、私は聞いたことがないわね。王太子はいかがですか。」
「わたしも聞いたことがない。風魔法の申し子ともいうべきエルフ族でなく、人類側にそのような言い伝えが残っているとは考えにくいな。一般的に言って。」
「そうなんですよ。だから、今まで言えずにいたんです。
空振りに終わる可能性が大ですので。
でも、気になるので行ってみたいんです。
幸い文献通り、その場所の方向を探る魔法が発動しましたし。
ダメもとで行ってみます。パキトさんたちには同行していただくため、ご迷惑をかけてしまいますが。」
「良いんじゃないかしら、若者の好奇心のままに行動する力。
なんか輝いて見えるわ、あなたたちが。うらやましい。
私も同行したいなぁ。」
「さすがにあなたを同行を許可するほど王族と族長会議も暇じゃないでしょう。」
「でも風魔法の聖地よ、本当にあったら、族長も王族もびっくりだわよ。」
「安心してください、それの代表して、こいつソシオをシュウ殿の冒険に同行させるつもりです。
以下がでしょうか、シュウ殿。」
「我々はそれでもかまいません、パキトさんや現地の案内人も同行していただきますし。
ただ、道中の安全は保障しかねますよ。」
「それなら大丈夫だ。こいつは王族の中でも優れた戦士として成長してきている。
ある程度の魔物であれば一人で対処できる。」
「わかりました。一緒に行きましょう、ソシオさん。
必要な準備は後でここの戦士のパキトさんに聞いてくださいね。」
「ありがとう。人類の方と一緒に旅ができるとは楽しみだな。」
「いいなぁ、わたしもいきたいなぁ。」
「カロリーナさん。あなたには別の大事な任務があるでしよう。
駄女神さんとカメさんとの話し合い。
今後、どう人類とエルフ族が友好関係を築いて行くかと言う。
冒険もいいがこちらの方も未来の両族の関わり方を決めて行くというやりがいのある仕事だと思うが。」
あっ、カロリーナさんは交渉役なんだ。俺も交渉役がいいな。あんなきれいな人と一日中密室でうふふふふ。
"シュウ、心の声が丸わかりよ。"
えっ、口にも念話もしていないのになぜ。
"あっ、やっぱりエッチなことを考えていたでしょ。
妻の勘をなめないでほしいわ。
あなたは私たちと風の神殿に行くのよ。わかった、お返事は。"
イエス・マム
「あ~ぁ、冒険が良いなぁ。交渉はソシオ君に任せるわ。
それがいいわ、そうしましょう。き・ま・り・ね。」
うあ~ぁ、死神さんのエルフ版。わがまま放題、し放題だ。
「いえ、ダメです。冒険には私が行きます。
同行しなければならない理由があります。」
「訳ありなんですか。よろしかったら聞かせてください。」
「それは儂から話そう。
こうしてエルフ領と人類領が行き来できるようになったからには、また、エルフの王族が人類領で修行をする慣行を復活させたいと思っている。
その候補がこいつだ。
そのためにシュウ殿たちと冒険に同行し、親睦を深めてほしい。
申し訳ないが、人類領にこいつが行ったあかつきにはシュウ殿たちに少々お世話になりたいと思う。
全然知らないところに放り出すわけにもいかんし。」
「えっ、じゃ、ソシオさんは人類領域に来るんですか。
まぁ、観光程度はありかと思いますが。
実際に生活してみたいと。
王族が人類領で暮らす理由があるんですか。」
「それはここではちょっとな。
後で、シュウ殿、エリナさん、そしてソニアさんと我々王族だけになった時に話す内容と被ってくる。その時に話そう。
他の皆さんには申し訳ない。」
王太子の今の話でソニアの肩がビクンと揺れたのを俺は目の端で見た。
王族が人類側で暮らす理由が、ソニアの母親と関係があると。
「それでは、そろそろ分かれて話を致しませんか。」
「村長、分かれてのお話ですか。どのようなことでしょう。」
「今ありましたように、王族のお二人はソニアさんのお母上のことで是非お伝えしなければならないことがあるそうです。
ソニアさんがそれを聞くための条件としたのが、今家族として暮らしているシュウ殿とエリナさんの同席でした。
この5名以外に同席することは許されません。
その間に、駄女神様とカロリーナ様、私で次回の人類とエルフ族の下交渉のための打ち合わせを行いたいと思います。
駄女神様、カロリーナさん、よろしいでしょうか。」
「そういうことであれば、一緒に居るわけにもいかないわね。
私はかまわないわ。」
「俺はエルフ男若衆、少なくてもエルフ男衆の同席を要求する。
これが最低条件だ。
俺だって、ソシオくんともっと話がしたいのに我慢するんだからな。」
駄女神、逃げて行った村のエルフ男若衆からもう切り替えたのか。
と言うか、ソシオさん、今日来ない方が良かったんじゃねぇ。
地獄の一丁目に足を突っ込んじゃった感じだよ。
駄女神に目を付けられちゃ~、おしまいだ。
「それでは、王族とシュウ殿たちは私の家に移動していただきます。
アイナ、アラナ案内してくれるか。家の者には準備しておくように伝えてある。
残りの方はこの隣の部屋へ。
駄女神様、パキトを同席させますので、これでよろしいでしょうか。」
「全然OKよ。
さっ、パキトさん一緒にお話しましょ。」
いつの間にパキトさんまで目を付けていたんだ、駄女神。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。