28話目 旅からの帰路
次回のエルフ領の冒険の概要とメンバーが決まった。
何か一つ肩の荷が下りたように思えた。
町での夕飯はこれまでの歓迎会のような村人の多くが参加するようなお祭り騒ぎにはならず、町長と行政官、それに俺たち旅のメンバーと言う交流会のような感じで行われた。
さすがに料理は村の歓迎会で出されたような地元の料理を山盛りにして取り分けて食べるような形ではなく、一人一人別々に料理が出され、盛り付けも料理人のセンスが感じられた。
エリナやソニアなどはエルフおばちゃんから料理を教えてもらっていたが、今日はそれができずにおとなしく交流会に参加となった。
交流会では人類領やエルフ領の現状の話から次回の冒険の準備などの話が中心で雑談と言うよりきちんとした人類とエルフの交渉のような形で話が進められた。
しかし、そのような政治・外交向きの話は俺にはできようもなく、また本来このような話題が出てきたときに対応させるために連れてきた駄女神さんがダダの、本気の駄女神に成り下がっている現状ではあまり実のあるその手の話などはできようはずもなかった。
結局、最後は本当にただの雑談になってしまった。
その中で、なぜエルフ族は大蜘蛛様をあれほど恐れるのか聞いた時には、エルフのみんなが黙って目を泳がせていた。
まぁ、雑談なので口にしたくなければそれ以上突っ込むつもりはないけど。
よっぽど過去につらい経験が記憶と言うより種族の本能的なもの刻み込まれているように思えた。
次の日、この町での今回の旅の目的も達成できたので、次の冒険の準備を早く進めるために早朝に町を立つことにした。
朝食を済ませて、町の入口に来てみると芦高さんが数名の子供と遊んでいた。
その周りを数名のエルフ戦士が取り囲んで、芦高さんを見てパニックを起こしそうになった町民をなだめていた。
まだまだ芦高さんはエルフ町民に受け入れてもらえていないようで、残念。
もう出発するというぎりぎりに、芦高さんは子供たちと再会の約束をして、準備に取り掛かった。
その準備が俺たちの荷物を背中に乗せることと言うことで、なんかすいませんね。
村長たちエルフ族は芦高さんが旅の準備を始めるとものすごく申し訳なさそうに芦高さんに頭を下げていた。
まぁ、大蜘蛛様に荷物を持ってもらう村長たちの気持ちもわかるけどもね。
そして、町長と行政官さん、護衛の戦士さん、子供たちに見送られて俺たちは特一風見鶏の村に戻る道を急いだ。
帰り道は天気にも恵まれ、順調に歩を進めることができた。
その道中もすっかり仲良くなった特一風見鶏の村のエルフたちと雑談やエルフ族のことを教えてもらいながら楽しく旅をした。
途中の村では、歓迎会などの大きなイベントはなかったが、素朴だが豪勢な食事を振舞ってもらった。
また、野宿ではないので十分な睡眠と休養が取れるため、次の日の朝は元気いっぱいに旅を続けることができた。
この帰路で特筆すべきことは、何と駄女神さんがエルフ男若衆の顔をしっかり見て話しができるようになったことである。
やればできる子の典型であったか、駄女神さん。
後は何とか丸め込んで美と慈愛の女神様を崇め奉る信徒に引きずり込むだけですね。
もじもじしなくて済むなら、いざとなっら女神様には怒特攻大魔神化すべてを破壊されたくなかったら俺の言うことを聞け、と言う必殺技を炸裂させることができますね。
これが出せればもう怖いものはありません。いくらでもエルフ男共を信徒にすることが可能になるでしょう。
さすが、人類最凶兵器さんです。大蜘蛛様伝説も怒特攻大魔神様伝説に塗り替えられるでしょう。
信徒が増えたら、俺は信徒を引退してもいいですよね。
そろそろ田舎に引っ込んで晴耕雨読の生活を目指したいと思います。
そして、仲の良い仲間との旅が終わろうとしていた。
あっ、何かまた大事なことを忘れているような。
俺にとってものすごく大事なこと。
これがないとエルフ領に来た意味がないほどの大事なことだったと思うけど。
何だっけ。う~ん、う~ん。
「エルフメイド戦隊ご主人様お世話しま~すズの結成じゃねぇのか。」
あっ、それだ。思い出したよ、雷ちゃんありがとう。
「まぁな、俺はシュウの愛人兼美人秘書だからよ。これぐらいのことは当然だぜ。」
"シュウ、この頃エルフメイド戦隊のことを言わないからあきらめたかと思ったのに。
妻とも一緒の布団で夜寝れない甲斐性なしがエルフメイド戦隊ご主人様お世話しま~すズなんて結成できるわけがないでしょ。諦めなさい。
その代わり私が夜になったら一緒の布団でたっぷり可愛がってあげるからね。"
男のロマンがぁぁぁぁぁぁ、メイドさん、そして制服はミニスカ、ニーソが、遠ざかるぅぅぅぅぅぅぅ。
「ご主人様、よ~くお聞きなさい。
エルフメイド戦隊なんちゃらを本気で設立したいなら、まずは甲斐性を磨く必要があります。
夜、奥様とあんなことやそんなことで、その結果、赤ちゃんオオカミを呼び寄せるのです。
それを私がお世話、ポッ。これがメイドの醍醐味ですわ。
最低限、それぐらいの甲斐性は身に付けねばご主人様のロマンはマロンになります。」
「マロンとはなんじゃ。」
「甘いお菓子の元、そんな甘いものはすぐに飲み込まれるという意味です・・・・。
だだの語呂です。ごめんなさい、思い付きですわ。。」
「まぁ、ロマンだろうがマロンだろうがシュウには到底無理と言うことでいいのじゃな。」
くっそぉぉぉ、言いたい放題だな。でも、言い返せない俺。
そんな馬鹿なやり取りもエルフの仲間たちには知られずに進行していました。
聞かれないで良かった。ボソ
そして、3日後に特一風見鶏の村に無事に帰ってきましたよ。
「お疲れでした。そして、村長を初めエルフの皆さん、同行してもらってありがとうございます。
おかけで、俺たちが行ってみたい場所がわかりました。
このまま、人類側に戻って準備し、数日後、う~ん、3日後には戻ってきたいと思います。
まぁ、この村まででしたら毎日来ても良いんですけどね。
人類側の風見鶏は俺らの官舎のすぐそばにあるんだし。
今度、お世話になったお礼に、人類側の料理を持ち込んでバーベキューでもしましようか。」
「それはいいわね、おいしいものを一杯作るわね。
タイさんを連れてくれば火力にも心配ないし。」
「今日はこののまま帰るんですか。」
「何もなければそのつもりです。」
「実は旅に出る前にお話したように、今日、王族と族長会議の使者が来ることになっています。
まだ、到着していませんが、お会いしていただけないでしょうか。」
「やはり合わなければなりませんか。
俺はこの旅の仲間のリーダーかもしれませんが、人類を代表しているとかそういうたいそうな者ではないんです。
これからのエルフと人類の友好を深めることは可能かと思いますが、何か取り決めなどをしたいのであれば俺にはそんな権限はありません。」
「それで次回の訪問時にはカメさんと言う方とそこの駄女神様が人類とエルフ族の交渉の下準備を整えるということですよね。
その辺は了解しています。
今日の会合は本当に何十年ぶりに訪れた人類とエルフの友好的な交流のためだけです。
今回は挨拶程度に言葉を交わして、また、おいおい取り決めなどが必要でしたら決めて行けばいいのですよ。
その交渉の窓口を決めるのが次回の訪問だと思いますよ。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。