27話目 目的の場所はマドリン近郊の山かも
日も暮れかかったころ、ようやく解放された芦高さんはそのまま門から出て、町の周囲の魔物狩りに行くようだ。
「ご主人様、では行ってくるんだな。たくさん魔物を狩ってくるんだな。」
「大蜘蛛様、よろしくお願い致します。」
「明日の朝に遊ぶ約束をしたから、明るくなったら戻ってくるんだな。
エルフの皆がびっくりしないように、また、戦士の方を派遣してほしいんだな。」
「わかりました。朝方、戦士をここに配置しておきます。」
「芦高さん、明日の朝にはここを出発するんであまりゆっくり遊べないよ。」
「そうなんだ。
じゃ、ご主人様たちの準備ができるまでは遊んでいいかな。
最後に荷物を背負って出発なんだな。」
「それでいいよ。すっかり、エルフの子供たちと仲良くなったな。」
「それじゃ行ってくるんだな。」
「バイバイ、頑張ってね芦高さん。」
「奥様、それでは行ってまいります。」
「シュウ殿、大蜘蛛様はあなたに仕えているんですか。」
「俺とエリナは家族だと思っているけど、芦高さんは家の執事になりたいようなんです。」
「執事ですか。大蜘蛛様が誰かに仕えるとは、本当に信じられないですね。」
「死にかけたところをエリナが助けたんですけど、それを随分と恩に思っているようです。
俺たちは初めはペット、意思が通じ合ってからは家族と思って接しているのに・・・・、少し寂しい気がしますね。」
「大蜘蛛様は大変高い知能を持っているということですから、他人に感謝するという気持ちがより強いのかもしれませんね。
ああっ、つい大蜘蛛様のことばかり話してしまい申し訳ありません。
まずはあなた方がここへ来た用事を済ましては如何でしようか。
町の賓客を迎える宿にご案内します。
用事が終わったら、ささやかながら交流会を兼ねた夕食会を開かせていただきます。」
「「町長さん、ありがとうございます。」」
俺たち旅の仲間と町長、行政官、そして、案内役の戦士1名は今日の宿に向かった。
部屋に荷物を置き、早速、風の神殿の方向を地図で確認することにした。
邪魔な駄女神さんはとりあえずエルフ男若衆と別室に押し込めてっと。
イチャイチャさせとけば俺たちが何していようと邪魔はしないでしょ。
ちなみに、駄女神さんは漸くパキトさんの弟たち村のエルフ男若衆と話ができるようになった。目は泳いでるけどな。
地図のことをいつものようにクレト村長に頼もうと思ったら、より正確な方位を知っている町長が地図の方位を調整してくれた。
エルフの皆には退出してもらった後に、写しを重ねて、雷ちゃんに方向を示してもらって、線を引く。
「あっ、今日はちゃんと陸地で交差したようね、相変わらず海に近いけど。」
「交差した点には、あっ、陸地だけどなんだが山の中のような感じだな。
地図に山が書いてある。ここから北東の海と山が繋がっているところと言う感じだな。」
「特一風見鶏の村からここまで3日だったわよね。この距離を特一風見鶏の村からこの交点までの距離に置き換えると直線で7倍、21日、実際は徒歩で1ヶ月は見ておいた方がいいわね。」
「1ヶ月か。そんなに休暇がないよ。
ここはエルフ族にお願いして、エルフ国内の転移魔法陣を使わしてもらうしかないな。
そうすると、この交点のことは言わなきゃなんないな。根掘り葉掘り聞かれそうだな。」
「お兄ちゃん、場所だけ言ってそこに何があるかは黙っていればいいんじゃない。
人類側でそこになんかありそうな言い伝えがあるから見に行きたいとか説明をてしていたと思うけどなぁ。」
「そうだな。風の神殿とかいきなり言っても、結局何それとか言って、さらに詳しい情報を引き出されそうで怖いな。」
「ないとは思うけど、風の神殿ではなくてもっと私たちにとって大事なものがあったりする可能性が無きにしも非ずと思うわ。
アーティファクトの導きってそういうものだと大精霊様たちは言っていたと思うわ。」
「「もっと、大事なもの?」」
「やえっ、そんなことはないぞ。風の大精霊のいる方向を示しているぞ。」
「ご主人様、奥様、雷神の言う通りです。
風の神殿かどうかはわかりませんが、確かにお母様たちのいらっしゃる方向を指し示しています。」
「風の神殿であれば、俺たちが必ず行かなければならない場所だな。」
俺たちは写しをまって、部屋の外で待っている村長とパキトさんに部屋の中に入ってもらった。
町長と、そして行政官には申し訳ないが、まだ今日紹介してもらったばかりなのでどの程度信用していいかわからないため、外で待ってもらおうと思った。
必要であれば村長から話があるだろうし。
「もし、場所がある程度絞れたのなら行政官にも中に入って直接話を聞いてもらった方がいいかもしれません。
行政官は村長や町長と違い中央の役人ですのでエルフ領の結構いろいろなところに赴任しています。
目的の場所の近くの町にも行ったことがあるかもしれません。
ここの町長と行政官は私の古くからの友人で、少なくとも私と同じぐらい信用してもいいと思います。最後の判断は当然お任せしますが。」
「わかりました。皆さん中に入ってください。そして、俺たちの話を聞いてもらえますか。」
「申し訳ない。私は夕食の配膳を始めるように伝えてこなければなりませんので、ここで失礼します。
話は後で聞かせてもらい、私のできることがあれば何でも協力させてもらいます。
とりあえず今は夕飯の準備ですな。ははははっ。」町長
「ありがとうございます。
それでは行政官さんには入っていただき、一緒に場所を確認していただけますか。」
「わかりました。私もできることは何でもは協力させていただきますよ。」
「それでは、まずはこの地図を見てください。
そして、ここが今回の旅で特定した場所です。
何があるかは今は聞かないでもらえますか。何もなかったら期待させると申し訳ないので。」
俺はエルフ領の北東部、山が海岸まで続いているところを指さした。
「ここはチュブト地方のバルデス山脈があるところですね。最寄りの町さらに北にある港町マドリンと言います。
私はマドリンには赴任したことはありませんが、そこには転移魔法陣が設置されているはずです。
マドリンまでだったら、この町から王都経由で10分ですね。
マドリンからは徒歩になります。
1500m級の山が繋がっていますね。専門の案内役を雇って、だいたい2週間もあれば縦断できるはずです。
ここの抜けた先の別の町で転移してここに戻ってくるとして、移動だけで2週間も見ておけばいいと思います。」
「行政官さん、バルデス山に何か有名なところはありますか。」
「特にはなかったと思います。一般的と言ったら変ですが、どこにでもある山ですね。」
「北の方で山だから、ここよりは寒いわね。
特に風が強く吹くような場所はあるのかしら。
あと、洞窟とか。」
「そこまで、詳細なことは現地の人に聞かないとわかりませんね。」
「やはり行ってみないとね。」
「そうよね。場所が絞れただけでも良しとしましょうよ。」
「俺たちは一度人類領域に戻って、準備をしてきたいと思います。冬山に登る準備でいいのかな。」
「装備はこちらで整えておきますよ。
現地に人数と滞在期間、背格好などを伝えればいいと思います。
バルデス山に旅をされる方を教えてもらえますか。」
「ここにいる3人と芦高さんは確実です。他には駄女神さんかなぁ。やっぱり。」
「おそらく卒試はもう終わると思うので、タイさんの方がいいと思うわ。
駄女神さんここでは全く役に立っていないもの。
タイさんなら事情を話せば二つ返事で協力してくれると思うし。
カメさんと越後屋さんはどうしよう。」
「越後屋さんは絶対ダメだろ。バルデス山には行かなくていきなり王都で商売を始めそうだよ。
人類のあやしいお土産をいっぱい持って行って、ぼったくり商売でウハウハ。
とても寒い山には来てくれないよ。」
「カメさんは。」
「いろいろ訳を聞かれそうだよ。
でも、エルフ領でいろいろ情報収集や下交渉をしてもらうにはいいかもね。
バルデス山には連れて行かない方向で。」
「そうしたら、保護者枠で駄女神さんを再度招集して、カメさんと一緒にいてもらったらいいんじゃない。」
「お兄ちゃん、それよりもそろそろ闇の死神大魔王も何か嗅ぎつけるかもよ。」
「あの人はそれどころじゃないと思うわよ。
例のランク8位以外、今のところ全く目に入っていないもの。」
「村長さん、今のところバルデス山にはこの3人とタイさんと言う女性、そして芦高さんで行きます。タイさんはエリナと同じような背格好です。
その他にカメさんと言うものと駄女神さんはエルフ族との友好関係を築いて行く準備と言うか情報収集をするために連れてきたいと思います。」
「わかりました。次回の訪問時にはシュウ君たちにはパキトを同行させ、カメさんと言う方と駄女神様は私が対応したいと思います。」
「「「よろしくお願いします。」」」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。