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26話目 町に着いたよ 芦高さんとエルフの子供たちの交流

農業の村を出発し、次は鍛冶の村を目指した。


これまでの木々一色の風景とは違って移動している方向に低い山並みが見えてきた。

そこは木々で覆われた緑豊かな山ではなく、鉱石の採掘をしているためであろうか、山肌が見えて赤い色が濃いところも散見された。


俺たちは一日かけてその山のふもとの村、規模的には町と言ってもいいほどではあったが、にやって来た。


そこでもこれまでの村と同様に大きな驚きと歓迎を受けた。


驚きの方は芦高さんの存在であった。

芦高さんを見たエルフ族が蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う姿は既にデフォと化していた。

芦高さん、ごめんね。俺たちと一緒にエルフ領を旅したために嫌な思いをさせて。


一方、子供たちが芦高さんを見るとこちらは直ぐに寄ってきて、メタルボディをなでたり、背中に登ろうとするのもお約束であった。

特に、鍛冶の町の子供たちのためか芦高さんのメタルボディを布で懸命に拭いてよりいっそう輝かせようとしているのは、見ていた旅の仲間の皆が微笑んでしまった。


なぜか子供達には超人気の芦高さん。


歓迎会のあと、今日は忘れずに地図の確認。

漸く2本の線が陸地で交差した。

それでも海岸近くであり、地図の精度がそこまで高くはないことを考えると2本の線が交差しているところは実際は海でも不思議ではなかった。


やはり、場所をより正確に特定するためにもう一日進んで、地図を確認することになった。


次の日、鍛冶の町を出発し、今回の旅の終着点を目指した。


そこはこの付近一帯の村々を取りまとめている地方行政府と言ったものが置かれているそうだ。

人の数も多く、王都のように都市までとはとてもいかないがかなり大きな町と言うことであった。


それでも町に至る街道沿いは相変わらず木々で覆われ、緑一面の街道と言ったところだった。

この辺は南部と言うこともあり、冬でも暖かく、日が当たると暑いぐらいであるが街道の上に覆いかぶさった木々が日を遮ってくれるために快適な旅を続けることができた。


そうして、日がそろそろ傾きかけてくるかもという時間に俺たちは今回の目的地の町にたどり着いた。


町は魔物の侵入を防ぐためであろうか、木の塀で囲まれていた。

門と思しき所に武器を持ったエルフの戦士が十数名と村人よりも少し上等な生地で作った上着を着たエルフが2名立っていた。


一般の町のエルフたちは遠巻きに門のところに集まったこのエルフたちを横目で見ながらそそくさと町に出入りしていたのだが・・・・・


「大蜘蛛様だぁぁぁぁ、もう、この町は終わりだぁぁぁぁぁぁ。」

とお約束の反応を示して、町から遠ざかるエルフが続出。

まぁ、町の中へパニクったエルフを入れないようにエルフ戦士が頑張って防いでいた。


あっ、そのためにエルフ戦士を多数配置していたのか。

と言うことは、門にいるエルフは俺たちの来訪を知っている方たちになるな。


そんなことを考えていると旅に同行してきたクレト村長が門の方に手を振って叫んだ。

「行政官、町長、人類の訪問者をお連れしました。」

「いらっしゃい。」

「いや~っ、ほんとに大蜘蛛様、それもメタル様をお連れしているとは。大した御仁ですなぁ。」


そんな言葉をエルフたちが交わしている間に、門のところに到着した。

相変わらず一般エルフの絶叫と逃走は続いていたが。


「なんかお騒がせして、申し訳ありません。

人類領域から来たシュウといいます。

この大蜘蛛は芦高さんと言って、俺たちの家族のようなものです。

危険はないので、余り怖がらないでもらえると助かります。」


「私はこの地方の行政官をしている者です。よろしくお願いします。」

「私はここの町長をしています。よろしくお願いします、シュウ殿。」


情報が既に十分に伝わってるためか、行政官と町長、そしてエルフ戦士たちは芦高さんを間近に見てもあわてる様子はなかったが、若干、町長は腰が半分ほど引けていた。

怖いものは怖いよね。

わかるけど早く慣れてください。芦高さんがかわいそうです。


「一応町民には大蜘蛛様がエルフとの友好を結びにいらっしゃいますが、決して失礼のないように、例えば絶叫して逃げ惑うことのないようにと何度も情報を流していますので。大丈夫・・・・・」と言いかけた町長。


「大蜘蛛様だぁぁぁぁ、もう、この町は終わりだぁぁぁぁぁぁ。」門の内側でパニクる町民、お約束

「まぁ、本能にはなかなか逆らい難いものがありまして、申し訳ない。」

「僕は町の中には入らない方がいいかもしれないんだな。町の外でのんびり待っているんだな。」


「いえ、町の外で出会った町民が卒倒するかもしれませんのでね。

暗くなり、外出する者がいなくなるまではこのまま一緒の方がいいでしょう。

それでは参りましよう大蜘蛛様。」


そのとき、またお約束。

「ああっ、おっきな蜘蛛だ。それもピカピカだぁ。」

「ほんとだ、触ってみたい。お鍋みたいに冷たいのかな。」

「私は背中に登って、滑り台したい。行ってみようよ。」


子供たちが楽しそうに次々に寄ってきた。

町だけあって子供の数も多そうだ。

芦高さんは子供たちが触ったり、背中に登ったりしやすいように足をたたんで背を低くして嬉しそうに待っていた。


この町の入り口は子供たちの遊び場と化してしまった。


「町長さん、申し訳ない。芦高さんはエルフの子供たちと遊ぶのがすごく楽しいみたいなので、子供たちが遊び疲れるまでああしてここで座らしておいていいですかね。」


「あははははっ、楽しそうですね。

新しい遊具を見つけたというところでしょうか。

しばらく、このままでいいのではないでしょうか。


彼らを見た大人のエルフがびっくりして卒倒しないように、戦士たちをここに残しますし。」


「エルフ戦士たちは俺たちや芦高さんの警戒のために出張って来たんじゃないんですか。」


「それは違います。治安を守るという意味ではそうですが、今回の警戒対象は大蜘蛛様でもあなた方でもありませんよ。

大蜘蛛様を見たエルフがパニックを起こすのを静めるために来てもらっています。


あつ、ところで、芦高さんは夜中に村周辺の魔物狩りをしていると情報で流れてきたのですが、それは本当ですか。」


「町長、それは本当です。

芦高さんは睡眠と言うものが必要ないので夜中でも普通に活動できますし、夜目も効きます。

始めは餌になるオークを狩ったついでにその他の魔物も狩っていたんです。

でも、もうおなかが一杯のようで、魔物の排除が目的となっています。」


「もしできれば、この町の周囲の魔物も狩っていただけないでしょうか。」

「芦高さん、どう? 今晩行けそう? 」


「問題ないんだな。結構、危ない魔物の臭いもするので今晩狩っておくんだな。」

「大蜘蛛様、お引き受けしていただけるんですね。ありがとうございます。

でも、子供たちが飽きてからのようですね。」


芦高さんの方を見たら、子供たちの数が20人ほどに膨れ上がっていた。

芦高さんの滑り台などは順番待ちの列が出来上がっていた。

順番が来ると芦高さんは足で器用に自分の背中にエルフの子供を乗せてやり、滑らせていた。

「キャーッ」嬉しそうな子供たちの歓声。


また別のところでは昨日のように布でピカピカにメタルボティを磨いている集団が。

また別のところでは、芦高さんに張り付き「冷たくて気持ちいい」とうっとりしている子供もいた。

芦高さんの周囲を走って競争している子供たちもいた。


走って転びそうになった子供がいると芦高さんはたたんだ足を器用に伸ばして救い上げていた。

救い上げられた子供はこれで大人の背丈よりも高くあげられて普段と違った視線になるものだから、また、大喜び。

今度は足で持ち上げてもらう遊びがはやり始めた。


それを見ていた一般の町民たちも徐々に芦高さんへの恐怖が薄らいできたようだ。はしゃぐ子供たちと芦高さんを囲んでニコニコしながら見守っていた。


そして、町が夕焼けに染まるころ子供の数か40人ぐらいまで膨れ上がったところで、芦高さんもさばききれなくなって、ギブ。

また明日の朝遊ぶ約束をして解散となりました。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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