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12話目 遠征隊の日常

「まぁ、こ奴らは・・・・・、何というか・・・・ただのアホどもだ。

気にすることはない。

説明が面倒くさいので、いないことで良いぞ。

皆の心の平穏のためじゃ。妾はうそを言わんぞ。」


「こらーっ。そこのボケ老人。

人を、人じゃないけど、勝手にいない者として扱うなーっ。」


「そうですわ。ボケると都合の悪いことを忘れるとは本当のことでしたのね。

いやだわ。おボケさん。」


「誰がおボケさんじゃ。何でも<お>を付けると上品になると勘違している、似非お嬢め、妾はまだボケとりゃせんぞえ。」


どうでもいいけど、誰なんだ。アホって。


「まだわかってないのか、ボケたばあさんに取りつかれるわけだ。

ここだよ。お前の指に、さっき、はめられちまった俺だよ。

まぁ、安心しな俺がボケと似非お嬢から、きっちりお前を守ってやるからよーっ。

感謝しろよ。」


さっき指に、えーーーっ。エリナにはめてもらった指輪か。

指輪がしゃべった。まあ、おばちゃんと鞘氏でもう驚かないけど。


「シュウ様、私はもう一つの指輪です。

お手に取っていただき、その上、しなやかな奥様のお手に着けていただきました。

非常に感謝しております。


ご主人様、これからも私だけを信じて、大事な事なのでもう一度いいますね、私だけを信じてそのガサツな指輪は煩わしいおばば共々どぶにでも捨て置いていただけたら、私のご主人様へのご奉仕も一層力が入ると思います。」


えっ、あなたたちは対じゃないんですか、仲睦まじい男女の象徴じゃないんですか。


「シュウよ、あきらめてはめた指輪をエリナに返すじゃな。

そうすれば、この煩さからは解放されるのじゃ。」


そうだねこんな煩い指輪なんていらない・・・・・・・・・・・・、いいい・・・・・・・・・・・・・、今更外せるわけないだろーがボケがぁ。指輪をはめるだけでどんだけ大感動恋愛ロマンス大河ドラマを展開したと思っているんだ。

む、む、むりだ、外すなんて。


「あきらめろ。」「ご愁傷さまです。」「妾を蔑ろにした報いじゃ。」


こいつら勝ち誇っているな。

おほんっ。ここで問題です。

ぴんぽんっ。

おーとっ。いきなりサービス問題だ。


俺が町で新たな指輪を買ってエリナに贈ったら、かび臭い古い指輪はどうなるでしょーか。

制限時間は30秒、わかるかなぁ。


「俺はタンスの中に逆戻りだなぁ。」

「私は奥様の美しいお手に残りますね。奥様のお指に指輪が一つとは限りませんもの。」

「妾はこの件には初めから無関係なのじゃ。」


おうーつと。ひとり正解の方がいらっしゃいました。

初めにお答えになったあなたです。


「ひぇーっ。わかったよ。シュウ。俺の負けだ。仲良くしようぜ。

ちょっと疲れたので昼寝をしてくるよ。またな。」


ちょろいな。さてっと。

次の問題です。

ぴんぽんっ。

おーとっ。今度はラッキーチャンスです。ポイントが10倍になりまーす。

「負けるわけにはいきませんわ」「無駄な努力を。どうせ妾が勝つのう。」


では問題です。エリナの誕生日はいつでしょうか。

そして、その誕生日に新たな指輪をエリナにこっちの方が似合うよ、こんなかび臭いのはやめなよと言ったら、かび臭い古い指輪はどうなるでしょーか。

制限時間は30秒、わかるかなぁ。まずは関係者の誕生日ですよ。


「ふっ、ギブなのじゃ。

他人の誕生日などに興味はないからのう。

アホどもの相手は疲れるのでそろそろ背中に戻ろうかのう。」


「・・・・・汗。」


さて、正解はいかに。さあ、答えて。どうしました。

ここで答えればあなたの完全勝利です。さぁ、どうぞ。


「しばらく考えますので、お時間をいただけますか。」


漸く静かになった。


「急に黙り込んでどうしたの。おなかでも痛いの。

消化促進と解毒の魔法があるからすぐ良くなるわよ。」


エリナは指輪を身に着けていても話は聞こえないみたいだ。

静かな分にはこの指輪を着けていても問題ないけどね。


「早速、俺に惚れるなんて見どころがあるガキだぜ。」


また出たよ。昼寝してろよ。


「具合が悪いわけじゃなくて、ちょっとこの指輪の使い方を考えていたんだよ。

だって、離れていてもエリナと会話、うーん?、念話ができるんだろ?

本山とここまで通じるかとか。」


「シュウは魔力が高いから通じるかもね。絶対試そうね。」


「おおっ、もちろん。」


うまく誤魔化せた。


大感動恋愛ロマンス大河ドラマやどつき漫才、嘆きのラースおじさん、おばちゃんたちの久々の感動的な再会とクイズ大会が鎮まるころにはお昼になっていた。


「よーし、お前ら今日はここでキャンプだ。

まずは昼食の準備だ。

昼食後は予め編成した通りに、テントの設営と訓練、夕食の準備班と魔物探索及び草原整備班に分かれての仕事だ。

よろしく頼む。」


館長が大声を張り上げて指示を出す。


「我々の馬車では今日の魔物探索班がマリアンナですね、ラースは雑用班。

残りの新人と私ですが、まずはテントの設営を手伝い、終わったらいつもの訓練です。

最後に魔物探索の練習をします。

まずは昼食にしましょうか。

その前に大事な馬の世話をしないと。」


馬車ごとに一つのチームを組み、その中で担当を分けているみたいだ。

クズミチと俺は馬に水をやり、草がいっぱい生えているところに馬を連れて行った。

馬たちは特に繋いでなくても勝手に遠くに行くことはないみたいだ。

よく飼い慣らされている。


「なぁ、シュウ。さっきのマリアンナさんが言ったこと本気だと思うか? 」


「どうだろう。わかんないけど、クズミチが一人前になることを望んでいることは間違いないね。

その先は分からないや。」


「でも、シュウとエリナはその先を決めてしまったんだろ?

傍から見てるとシュウがエリナに追い立てられて、有無を言わされず、あんな結論を出したように見えたけど。

まあっ、あんなに器量と気立てが良い美少女に攻められたら、うんと言うしかないけどな。

うらやましいなぁ。」


「まぁね。でも、エリナの器量と気立てだけで、俺はうんと言ったわけじゃないよ。

ここに来る前、と言っても一週間も経ってないけどね、初めて会った時に、魔物と魔族に襲われたんだ。


誰もいないし、逃げられそうになかったので二人で戦ったんだ。

初めてチームを組んだんだけど、砂漠に水を撒いたように俺の戦術をエリナがスーッと受けいれて、そして、全く危なげなく完勝できたんだ。


俺は聖戦士になり、みんなを守りたい、これが俺の小さいころからの望みなんた。

でも聖戦士は魔法術士が側に居てくれないと武人や一般の兵士と大差ないわけだけど、エリナが側に居てくれたら俺の希望が叶うと思ったんだ。


そして、俺の望みと同じくらいエリナの望みを叶えてあげたいとも思っているよ。

エリナの望みが俺とずっと一緒にいることなら、俺もエリナと一緒に居たいと思ったんだ。」


「シュウは何というか、俺よりずっと大人だな。

おれもいっぱい修行して、強くなって、誰かの望みを叶えてあげたいなぁ。」


「そうだな。まずは強くなり、館長の言う通り生き残らないと誰の望みもかなえられないな。

強くなろうな、クズミチ。」


「ああっ、俺は俺の道で強くなる。」


「強くなるには、まず昼飯だ。早く戻ろうぜ」


突然、エリナの声が響いた。

"あなたぁ、ご飯ができたわよ。

はやくもどってきてね。ふふふっ。

「あなた」って、一度言ってみたかった。

恥ずかしくて、口には出せないけど、指輪を通じた念話だから誰も聞いていないので、いくらでも言えるわ。"


"すごいね、この指輪。面と向かって話しているようにエリナの声が聞こえるよ。

馬の世話が終わったから、すぐ戻るよ。

メニューは何かな。"


"焼いたパンとチーズ、ハム、野菜スープね。

いつもお昼はこんな感じだって。軍のお昼もおんなじだって。

早く帰って来てね。あ、な、た。"


「近頃の若いもんは、結婚前からイチャイチャと。うらやましいぜ。」


「ご主人さま方の仲がよろしいのは、仕えるものとしてうれしゅうございます。」


「シュウは色ボケじゃな。」


でたな、妖怪たちめ。はっ、エリナとの念話はすべてこいつらに聞かれてしまうのか。

まずいぞ。まずいぞ。どんな茶々を入れられるかわかったもんじゃない。

早めに龍にお宝だと言って引き取ってもらい、住処の嶮山に永久に封印してもらおう。

今、なぜか龍が近くに来ているような気がする。


「心で考えたこともこの指輪をはめていると妾には鮮明に聞こえるのじゃ。」


「捨てる算段なんて、ひでぇじゃないか。

よし俺がエリナに抗議してやる。「お前、うざいからこんな指輪はいらねぇ、お前ごと捨ててやる」と考えていますぜって。」


殺意が沸いた。ペンチを用意しよう。

これ以上のこいつらの犠牲者が出ないように、つぶしてしまおう。


「まて、待ってくれ、冗談だからな、冗談、もうその話はなしで。

ああっ、また眠たくなってきた。お休み。」


なぜか、指輪がすこし小さくなり、指から抜けなくなってしまった。

くそうーっ。先手を打たれたか。


「おい、シュウ。急に黙ってどうした。腹が痛いのか。

昼飯は俺が代わりに食ってやるから寝てろ。

エリナの手づくのなんだろ昼めし。」


クズミチ、お前はラースさんの作った昼飯を食う義務があるだろうが。

俺はエリナの作った昼を食う義務があるのだ。


「何でもないよ。急いで戻ろう、」


急いで戻った俺たちは6人で昼食をとった。

同じメニューなのに作った人でこんなに違うのか。

エリナはまだ俺の腹痛を怪しんでいて、子供に与えるときのようにパンなどを少し小さめにちぎって、皿に乗せてくれた。


「馬車のメンバー変えてほしい。この光景は独身には目の毒だ。」マリアンナ

「おれもっす。」クズミチ

「私も独身ですが、微笑ましいじゃないですか。新婚さんですね、」動じない先生

「新婚の頃は妻も私にああして。今では子供ばかりが・・・・・」悲哀のラースさん


「おいクズミチ、俺にもパンをちぎってくれ。少しは、少しだけ、あの領域に近づけるかもしれない。」

「なんで俺がー。」

「返事は!!」

「アイアイ・サー。」

「早く頼む。」


楽しい昼食の後は訓練だ。いつもの基本動作の繰り返しだ。


今日は突いた後の引きの動作が新たに加わった。


構えて、突いて、もう一歩突いて、そして戻る。

突きを2段にするのは3段目の突きは左足を出すことになり、両手剣であればさらに突きを伸ばせるが、片手剣の場合は左手に持った盾が前に手でしまうため、突きの威力がどうしても弱まってしまう。


弱い突きの追撃よりは逆に出した右足を引いて、盾を出し、防御した方が無理して追撃するよりも防御の体制と次の強い攻撃の準備に入った方が良い。

盾を出して体を引きながら、剣を上に持ちあげる。

これで剣を上に構え、次に引き下げることで突きよりも強い攻撃が可能となる。

今日は剣を上に構えて、振り下ろす動作まで繰り返しやることになった。


稽古が終わると、エリナに疲労回復魔法ととクリーン、クリーンは稽古した全員にかけてもらう。

疲労回復魔法は様子を見ながら少しづづかけてもらった。

ううっ、今日は新しい形をやったので別のところが痛くなるかも。


休憩後、ラースさんを除く4人は魔物探索の訓練を行った。

エリナのように魔法ではなく目視による探索である。

魔法のように受動的な探索ではなく、出現する魔物を予測し、その行動特性を見抜き、魔物がいそうな場所を見ないと遠くの方まで探索できない。


今日はオークを想定してみた。

オークは身長が2m以上あり、棍棒などの打撃系の武器を持っているが、振り回していることが多い。

よって、武器を探すと遠くからでも発見できる。

また、発見した場合は比較的移動速度が遅いので、まずは弓などの遠距離攻撃を何度か仕掛ける。

そして、十分にダメージを与えた後に最後は接近戦で仕留めることも考える。


オーガの場合は移動速度が速いので、発見した場合に同じようにまずは弓などの遠距離攻撃を行うが、一撃後そのまま連射攻撃するのではなく、逃げながら次の遠距離攻撃を繰り返さないと、十分にダメージを与える前に接近戦となり、かなり危険となる。


シュウたちは知識として知っていることを、この草原で模擬訓練をした。


この後は夕食の準備となる。

魔物の探索班は途中で、ウサギやイノシシなどの獣の狩りを行い、夕食に花を添えることになる。

全く狩の成果がないことは滅多にないが、取れる獲物で夕食の豪華さが決まってしまう。


本日のメニューは、おにぎりと煮野菜、イノシシの焼肉、肉野菜スープ、ワイン1杯。

イノシシが2頭取れたことが大きい。

俺たちは食事を楽み、終わった後は焚火を囲んで雑談を楽しみ、それぞれのテントで見張りの当番以外は就寝した。


次回から次の章になります。

この物語の本編を進めるキーワードが漸く一つ解放されます。

期待してください。

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