21話目 旅立ち、旅の仲間は誰?
旅への出発の準備を終えたころ、丁度エリナが戻ってきた。
「エリナ、お帰り。いやな役目を押し付けてごめんね。」
「いいのよ。駄女神さんか私にしかここと人類側の風見鶏を往復できないし。
それに駄女神さんは風見鶏ではなく、アクア様の例の謎の転移魔方陣でここに来たことになっているでしょ。
人類側の風見鶏の発動は秘密だもんね。」
「ありがとう。そんなところまで気を使わして。」
「うふふふっ、気にしないで。
旦那様の考えをちゃんと掴んでそれをそつなくこなすのが良妻の務めだもんね。
ソニアちゃん、シュウにエルフ女子を近づけなかったでしょうね。
それと旅のメンバーにも入れないように村長と交渉してくれた? 」
「もうばっちりよと言いたいところだけど、旅のメンバーにはエルフ女子が二人も入ったわ。
村長が駄女神との交流だけでなく、シュウや私たちとエルフ女子の交流もさせたいと言われちゃって。」
「交渉してくれてありがとう。
まぁ、しょうがないわね。エルフ女子と話もするな、なんて言うこともできないし。
要するにシュウと密着させないことが最低限死守すべきことで、それができればぎりぎり私の勝ちだわ。」
「お姉ちゃん、何をエルフ女子と勝負しているのかなぁ。」
「ソニアちゃんも、大好きな彼氏ができるとわかるわ。
これは女の戦いなの。」
「ソニアはもう立派なレディだもん。プンプン怒。」
「ごめん、そうよね。だから、エルフ女子が大好きなお兄ちゃんの愛人にならないように私たちが注意してあげないとね。」
「わかったよ。ソニアも注意するよ。
エルフ女子が密着しそうになったらお兄ちゃんを魔法で作った土の祠に閉じ込めておけばいいんだよね。」
「それでいいけど、一応空気穴だけは開けてあげてね。窒息して使い物にならなくなると困るから。」
「わかったよ。」
そこのお二人さん、何をやらかすつもりですか。
俺のがここエルフ領で楽しみにしていたエルフ女子のチラ見とかムフフとかを邪魔するつもりだな。
そう言うことであれば、ばれないようにコソコソと。
「シュウ、コソコソしても私の探知魔法ですぐに何しているかわかるわよ。
エルフさんの風魔法の遮蔽よりも私の探知魔法の方が強力そうだからね。
隠してもむ・だ・よ。わかった? 」
「イエス・マム」
「しかし、とことん甲斐性のない奴じゃ。浮気の一つも満足に隠し通せんとはな。」
「今更それを言ってもなぁ。シュウの甲斐性のないのはもう旅団どころか、第2軍団、そして、エルフ領にまで広まっているみたいだぞ。」
えっ、そうなの? そんなに俺って有名なの。
何かちょっとうれしいような、気恥ずかしいような。
「甲斐性なしと言うのが有名になって喜んでおるのはシュウだけじゃな。
もう何とかに付ける薬はないというからのう。エリナ、諦めるのじゃ」
"いやぁぁぁぁ、シュウが甲斐性なしのままじゃ、赤ちゃんオオカミが永遠に来ないでしょ。"
「それはいけませんわ。
私のお楽しみ、赤ちゃんオオカミのお世話ができなくなるなんて。
ここは今すぐご主人様に甲斐性というものを身に着けていただきましょう。」
"風神さん、どうすればいいのかしら。"
「手っ取り早く解消を身に着けてもらうために、エルフの2号さん(愛人)を囲うというのはどうでしょうか。」
「こらぁぁぁ、ちょっと待て。シュウの2号さんは俺だと、この間のグダグダ会議で決まったよな。だから、エルフは3号さんだ。」
"とすると、愛人を囲っただけではシュウの甲斐性なしは改善されないということになるわね。"
「2号さんがいても甲斐性なしが一向に改善しないとはね。
ご主人様の甲斐性なしは筋金入りですわね。これは打ち手がないかも。」
"そんなぁぁぁ、このままじゃ、いつになったら必勝必中トンカツが発動するのよぉぉぉ。無駄になってしまうわ。
すべてのしわ寄せがシュウのお腹に行ってしまうわ。シュウがおデブになっちゃう。"
あの~ぉ、俺のことでいろいろ考えてもらって申し訳ないのですが、そろそろ出発しませんか。村長さんがお待ちです。
その前に、俺本人の意見としては甲斐性なしを改善するために是非、エルフ女子の2号さんが・・・・・バッコーン(エリナ最凶力ハリセン、圧縮木材一部使用品)。
いえ、なんでもございません。
皆様、そろそろ出発のご用意を。
「ちょっと待てシュウ、なんでエルフ女子が2号なんだ、俺が2号だろ、なっ、なっ。」
皆様、出発のご用意を。
「おい、シュウ、俺の心の叫びを無視こいてんじゃねぇぇぇぇぇ。」
「準備ができたようですな。
改めて、エルフ族の同行者をご紹介します。
私とパキトの他に、エルフ男若衆として、私の息子とパキトの弟が同行いたします。」
エルフ男若衆と聞いて、うつむいて上目遣いだった駄女神さんの目が一瞬、いやずっとだな、獲物を狙うオオカミと化した。
ああっ、うつむいてわからないと思って、舌なめずりしてるよ。
確かにエルフ男衆は皆背が高いイケメンだからは見えないけどな、成長期真っ最中の俺はそこまで背が高くないのでまるわかりだ。
あとそっと指で3を示すの止めれ。3人すべてゲットしてやるとの意気込みがひしひしと伝わって、黒いオーラを出しまくりだから。
ちょっと気持ち悪くなってきたから。
でもな、駄女神さん。いくら張り切ったところでだな、まずはそのもじもじちゃんを直そうな。
たらし込むどころがまともに話ひとつできそうにないんだが。
昨日の歓迎会は酒の力を借りて何とか話を、いや、あれは地が出て暴れてたというのかな。
二人ほど小脇に抱えてヘッドロックを決めたのはいいが、締めすぎて泡吹いてたからな。
そこで、普通はしまったと思て青くなるもんだが、あんたの場合はやったとばかりに奥の部屋にそのまま引きずり込もうとしてしてたからな。
お前はローレライの魔女か、歌すら歌わずの直接攻撃だな。
それでエルフ男衆がみんなドン引きして、夜中には誰も居なくなったんだと拝察します。
おっほん、ところでローレライって何だ。頭に浮かんだまま言ってしまったんだが。
まぁ、出発前で忙しいからこの際気にせずにおこう。
おっと、村長さん、ほっといてすまん。駄女神の幻想にはまっていたよ。
「こちらがエルフ女若衆です。シュウ殿のお好みそうなところを連れてまいりました。」
キタ――(゜∀゜)――!!
エルフ女若衆だって。
バッコーン、バッコーン。
何で殴る、エリナは百歩譲ってわからなくもない、わかりたくないが、ソニアお前もかぁぁぁっ。
「シュウ、ちょっとこっちに来なさい。
今、第1083基地に戻してあげるわ。もちろん私も一緒に。
旅はソニアちゃんと駄女神さんに任せてね。
ほんとは人類の恥部と化した駄女神さんも連れて帰りたいけど、連れて帰ったら速攻で怒特攻大魔神様に変身して、人類の滅亡が10年早まりそうだからあきらめるけど、シュウは、さっ、帰るわよ。」
そっ、そっ、そっんな、殺生な。
俺はこのためにここに来たんだぞ。エルフ女子をチラ見して、ニヤついて、あわよくばエルフメイド戦隊ご主人様お世話しま~すズを設立し、制服としてミニスカ、ニーソをあてがい、さらに究極のチラ見を楽しむ予定だったのに。
それをここで帰るなんて、いやいやいや哀だぁ。泣いてやる。
ひっくりかえって、手足をバタバタしてやる。
そして、買ってぇぇぇ、買ってぇぇぇと泣き叫んでやるぅぅぅぅぅ。
"シュウ、エルフ女若衆を指さしながら買ってと言うのは止めて頂戴。
なんか、別の意味でヤバいから。
何を買うつもりなのかドン引きされるから。
R25じゃすまないから、犯罪だから。
わかったわ。チラ見をしなければ一緒に連れてってあげるわ。"
やったぁぁぁぁぁぁ、ありがとうエリナ。これで俺のエルフ領でのやりたいことはコンプリートだ。
「この子はパキトの双子の妹たちです。
パキトはそれはそれは彼女たちを非常にかわいがっておりまして。
先日も村祭りで彼女たちをナンパしたエルフ男若衆が、その後行方をくらましました。はて、どこにいったんでしようねぇぇぇ。
シュウ殿、どう思います。
今日は特別にエリナ殿とソニア殿のお相手をするために来ていただきました。
決して、シュウ殿のためではありませんぞ。
シュウ殿のお相手は私とパキトが致します。よろしくお願いいたします。
"ナイス村長。さすがわかっていらっしゃるわ。伊達に村長をやっていないということですね。"
ぜんぜんナイスじゃないよ。俺的には。
おれの密かな、いや、ここに来た目的のすべてが村長に打ち砕かれた。
いや、待てよ、旅の宿泊は他の村だったよな。
やった、まだ、望みは絶たれていないじゃん。
いや、このぐらいの困難がないとエルフメイド戦隊ご主人様お世話しま~すズを設立した後にすぐに飽きてしまう。
そうだ、困難が俺を強くするんだぁぁぁぁ。
いろいろな思惑を芦高さんの背中の荷物に載せて、人類とエルフ族の小さな集団が始めた種族を超えた共同作業と言う偉大な一歩を、エルフの大地に刻み付けたのだった。
「偉大な一歩じゃだと? 妾には卑猥な一歩にしか見えんがのう。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。