今さら遅いけど、ノームの懺悔の部屋へようこそ 私は5人目
ガチャッ
「 ようこそ、おいでくださいました。
まだ、遅くありません。悔い改めなさい。
この部屋にはあなた以外、んっ、熊? ・・・・・・・・なんで熊が・・・・・・。
助けて・・・・・、助けてくれ~っ。
懺悔の部屋に熊が出た~っ。どこから侵入したんだぁ。
助けてくれ。うあああぁぁぁぁぁ。
服を着た熊だぁ~っ。」
失敬な、俺は人だ。
もうこのセリフを何度言っただろう。
なぜだ俺を見るとみんな逃げだすんだ。お約束か?
俺は森の熊さんじゃねぇ。
確かに、普通の人間より背が高いし。
普通の人間よりマッチョだし。
普通の人間より毛深いし。
普通の人間より力があるし。
でもなぁ、牙はねぇぞ。牙は。
どうだ。牙がなきゃ熊じゃねぇだろ。
おい、そう思うだろ。
その上、ちゃんと服は着ているぞ。
まっぱじゃねぇぞ。
シュウにそれを言ったら、確かに<野生の>熊は服なんて着てない、でも、雑技団の熊はちゃんと服を着ています。と、自慢げに断定されちまった。
ところで、シュウ、田舎育ちのおめぇが雑技団何て見たことあんのか?
それとええっと、とにかく今の俺は熊じゃねぇ。
今の俺、昔はどうだったかな。
小さいころなんて覚えていないしな。
みんなそうだろ、2~3歳の頃何していたかなんてこの年になればもうすっかり忘れてんだろ。
まさか、その頃は熊だったとか。
いやいや、それはありえん。
おおっ、そうだ。
熊は人の言葉なんて話さないぞ。
そのことをカメちゃんに行ったら、オウムは人に理解できる言葉を話します。
でもすべてのオウムが話せるわけではないので、特別なオウムが人語を話せるということができます。
つまり、オウムと言う種族のように極まれにではありますが人語を話せる熊がいても確率的には全くの0と言うことはないと考えています。
よって、熊師匠が熊族で人語を話せるとしてもおかしな話ではありません。
おおっ、そう言えば決定的な事案があります。
今、別次元から教会本山に取材に来ている者たちがいるそうですが、彼らは亜人族と総称され、まぁ~、当人たちはまとめてそういわれるのは心外だということですので、区別して言いますと猫族、犬族、狐族で人と同じように言葉を話し、人族と区別なく全く同じ生活様式を取っているそうです。
その中でここから遠く離れたスタジオと言うところで一度熊族の方がいたそうです。
その熊族の方は他の亜人族の方と同じように言葉を話し、服を着て、高度な知的水準を示したそうです。
わかりましたか、人語を話す熊族の事例が実在する以上、熊師匠は言葉を話す熊族で間違いありません。
えっ、そうなの。確かにこの間、エルフ領に行く前に居酒屋で猫族と狐族、あと犬族の人と一緒に飲んだ覚えがあるなぁ。熊族もいるのか。やっぱ、俺って熊?
いやいや違うだろ。
熊には剣は振れんだろ。
ほ~ら、やっぱり俺は人だ。剣が振れるもんな。
そんなことを特攻隊長に声高々に自慢したんだよ。
そしたらな、雑技団で二本足で器用に玉乗りをする熊がいるぞと。
俺には剣を振るよりも大きな球に足で乗って、転がして移動する方がはるかに難しいんだが。
高等技の玉乗りをする熊がいる以上、低~中等技の剣を振る熊がいても何ら不思議じゃねぇ。わかったか熊公。
と手痛い反撃を食らっちまった。
あれ以来俺は剣が振れるから人だという主張は絶対しないようにしているんだぜ。
やっぱり、俺って熊?
いやいや、違うだろ。
おおっ、そうだ、そうだ、これを忘れちゃけけねぇな。
俺は礼拝ができるぞ。懺悔だって。さすがに熊は教会に礼拝に来ねぇだろうが。
ガハハハッ、やっぱ、俺は熊じゃねぇや、人だ。
いや待てよ、このことを先日タイちゃんに自慢したんだよな。
そうしたら、熊師匠は確かに年に数回は教会の礼拝堂にいらっしゃるようですね。
でもね、以前、教会の見習い司祭様が愚痴をこぼしていらっしゃいましたよ。
酔っぱらって服をきた熊が夜中に礼拝堂に迷い込んで昼まで轟音のいびきと共に寝ていると。
教会の鐘よりうるさいいびきを何とかしてくれと朝参拝に来るまじめな職校生に苦情を言われると。
まったく、どこから迷い込んでくるんでしょうかと愚痴を聞かされましたわ。
熊師匠、酔っぱらって迷い込むのはできれば礼拝堂できなく懺悔室にしてくださいね。
あっ、礼拝堂に礼拝に行ってねぇや。酔っぱらって礼拝堂に迷い込んだだけだった。迷い込むなら、熊でもできるもんな。
やっぱり、俺って熊か。
いやいやまだまだあきらめるのははぇぇぜ。何かないか。
ああっ、そうだ、そうだ、あれを忘れていたぞ。
やっぱ、俺は人間だぜ。
熊が聖戦士になれるわけがねぇ、聖戦士職校に入れるわけがねぇな。
ガハハハハッ、やっぱ俺は何元だぜ。ざまぁみろ、シュウ。
いや、ちょっと待て。この前、シュウが職校の入試を受けた直後だな。
職校長と鉄球居酒屋で飲んだ時のことだな。
シュウの入試の結果と今後のことを相談してたんだな。
それがいつの間にか職校時代の俺の成績について話が及んだんだ。
おれは寝てばかりいて良く卒業できたよなって、当時はまだ学年主任だった職校長に話を振ったんだ。
当然ですよ、熊に付ける成績はありませんからな。
人の聖戦士であれば基準が明確にしてありますが、熊ですからね、熊。
さすがの聖戦士職校でも熊に付ける成績基準は準備していませんでした。
当然、熊が職校を卒業するための基準もないわけです。
えっ、でもよく職校に入学出来て、卒業して、そして聖戦士協会に入れたなぁ。
ああっ、あれはすべてソニア様が熊の子分が欲しいと職校の入試を見学していた時におっしゃったからです。
ソニア様のお言葉はすべて厳命と言う気風がございますので。
ソニア様の希望通りにあなたは子分と言うかペット枠に収まりましたね。
えっ、その話まじ。初めて聞いたぞ。ほんとマジ。俺ペットの熊と言う生存枠にずっと収まっていたのか。
やっぱ俺はペットの熊だった。まぁ、もうペットの熊さんでいいや。
剣が振れて、酒が飲めれば人だろうが、熊だろうが、ペットだろうが何でも構わん。
でもなぁ、俺がここ懺悔室に来たのは俺が熊か人だとかどっちだというのもあったんだがな。
とりあえず熊と言うことで納得するとしてだな、でソニア様のペットだとすれば、今回の仕打ちは酷過ぎやしないか。
絶対ひでぇぜ。
ペットなんだろ、最後までちゃんと面倒をみろや。
小学校の先生も言っていたろ。
ペットのお世話は最後までって。
最後まで面倒みろや。
俺はエルフ領に行き、好きなだけはちみつ酒、あれはこの世のものと思えないほどの絶品だった。
それを俺の歓迎会で堪能して何が悪い。
堪能したらそのまま酔いつぶれるのは自然の理だろ。
何で起きたら、門前町の雑技団の玉乗りペット枠として転職させられてんだ。
一体誰がエルフ領から門前町まで運んだんだ。
俺は玉乗り熊じゃねぇ、熊かもしれんが玉乗りなんぞできんぞ。
剣だったら振れるぞと言ったら、雑技団の団長が剣を振るなんて低級な技を披露しても受けねぇんだよ。熊は玉乗りだよ玉乗り。玉乗りのできない熊何ていらねぇんだよ。
と言われて、ここんとこ毎日玉乗りの訓練だよ。
まぁ、それはいいんだ。技を増やすことは聖戦士とって非常に大事なことだ。
でもよう、玉に乗りながら剣を振っても良いかと団長に直談判しんだよ。
そしたら、客は熊の玉乗りが見たいんだよぉ。短い足でちょこちょこ球を転がすかわいいしぐさが見たいんだ。
それで剣を振ってみろ、かわい気が殺伐感に取って代わっちまうだろうが。
剣はなし、って激怒されちまったぜ。
いいじゃねぇかなぁ、玉に乗りながら剣舞をする熊。
おれは受けると思うんだがな。
うけて投げ銭をもらって、門前町の鉄球居酒屋で飲む。
これが俺の熊人生の歩む王道だよなぁ。
よし、正しい熊人生を歩むために、もう一度雑技団長に直談判して来る。
よし、頑張ろう。熊(俺)、ファイトだ。
< ノームちゃんの懺悔を聞いた後の感想コーナー >
熊と認めたのじゃ。やっぱ、熊じゃった。
しかし、投げ銭で飲むのは止めてほしいのう。
酔っぱらって礼拝堂で寝られると、その下で生活している儂は熊のいびきがうるさくて寝られんのじゃ。
何とかしろ、雑技団長。
ペットの面倒は最後までって、中学校の先生が言ってただろうに。
ぷん、ぷん(怒)。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。