20話目 旅立ちの朝
エルフ村の集会場に泊った次の日、いよいよ旅に出発だ。
皆起きているか~ぁ。
「おはよう、シュウ。
昨日は寝るのが遅かったから、水分多めで軽めの朝食にするわね。」
「いつもありがとう。
早起きしていつも作ってくれるエリナの朝食が一番おいしいよ。
今日も一日頑張るぞって思えるよ。」
「うふふふっ、ありがとう。おいしいって言ってもらえるのが一番のご褒美ね、私には。
朝の食事次第で一日が頑張れるか。
うへへへへへっ、夕食次第で夜のお仕事が頑張れるってことじゃない。
つまり、夕食次第で甲斐性がないシュウがオオカミへの変身も有り得るということね。
うへへへへへっ、今日から毎日トンカツね。必勝必中トンカツ。うへへへへへっ。」
エリナさ~んっ、妄想が駄々洩れしていますよ~ぉ。
必勝は魔族に勝つぞと言うことだけど、必中って何?
お肉が衣の真ん中に来るようにした完璧なトンカツと言うこと?
「あっ、だめだこいつは。
前からだめだ、だめだの甲斐性もなしと思っておったのじゃが、ほんにダメなやつじゃ。
あまりのダメダメぶりに疲れた。二度寝するのじゃ妾は。」
「おっ、俺も必中ってどういう意味かわかんねぇんだ。おばば、教えてくれよ。」
「なんじゃぁ、貴様もシュウと同じ甲斐性なしだったのじゃな。わかっておったが。
いいか、よ~く聞くのだぞ。今場合の必中と言うのはなぁ・・・・・もごもご。」
「おばば様のそのフレーズが出た場合はほぼ間違っているとは思いますが、万が一に正解の場合にそれを声に出していってしまうとR-18指定を受けてしまいますので、黙っててくださいね。」
「しょうがないのじゃ、メイドが言うようにここは皆の想像に任すということで。だいたい我々アーティファクトには関係のないことじゃな。」
「えっ、もしかして正解ですか。信じられませんわ。」
「妾もやるときはやるのじゃ。
そんなに見つめる出ない。照れるじゃろ。」
照れて冷たくなるのがおばちゃんクオリティと言うやつですね。
朝からにぎやかなことでって。
"エリナも真っ赤になって何をじもじしているんだ。"
"だって、シュウがエッチなことを考えているんですもの。もうっ、バカッ。"
"トンカツの肉と衣の位置のどこがエッチなんだ? "
「ご主人様、わかるまでトンカツを食べてなさい。この甲斐性なしが。」
「良くわからないが、お腹が空いたよ。」
「もう、いつもそうやってはぐらかす。
んっもう、しょうがないわね。はいこれをどうぞ。」
俺はエリナからパンと肉入り豆スープ、果実山盛りを受け取った。
口に入れようとしたら、ソニアと駄女神さんが起きてきた。
「「「「おはよう」」」」
「駄女神さん、エルフ男衆はどうしました。」
「みんな帰っちゃったわ、昨日の夜中に。」
「えっ、一人も信者にできなかった(意訳:たらしこめなかった)んですか。」
「・・・・・・、私は今回の旅に人生のすべてを賭けるわ。
旅に出たら逃げてもかならず私の元に帰ってこなきゃいけないものね。」
「・・・・ほんとにこの駄女神は何しに来たんだか・・・・・」
「あ゛っ、なんか言ったかボケッ。ケツを蹴り上げるぞ。」
「駄女神様、地が出てますって。」
「あっ、ごめん。兎に角、私は皆に付いて行きますから。
私はエルフ男衆と手を繋いでの移動に決まりましたから。」
「もう、好きにしてください。
エルフでも、人でも、蜘蛛でも好きな人と手を繋いでくださいな。」
「じゃ、私はシュウ。」「私はお兄ちゃん。」
「もちろんいいよ。人間には手が2本あるからな。ケンカしない用にね。」
「「は~い。」」
「ちぇっ、見せつけやがって。
俺だって、この旅から帰ってくる頃には両手どころか両足にもエルフ男衆をぶら下げて見せるからな。
むふふふふふ、ハハハハハハ。」
「つまりはトラタヌ。」
「確かにトラタヌだわ。」
「トラタヌ?
トラとタヌキの夫婦の間にできた子供のこと?」
「すごいねソニアちゃんはその年でトラタヌについて詳しく知っているとは。
そうなんだよ、トラとタヌキの夫婦なんて無理だよね。
夫婦になる前にトラがタヌキを丸かじりだよ。
ましてその子供なんて絶対できるわけがないよね。
理論的には可能かもしれないけど絶対実現しない、実在しないことをトラタヌって言うんだよ。
まぁ~、ボ~ッと生きている人のことを指す言葉でもあるね。」
「えっ、そうなのシュウ?」
「そうだよ。うちの母ちゃんが言ってたもん。」
「ああっ、そうよね。そうだったわね。
うん、うん。トラタヌって、トラとタヌキの架空の子供よね。
ははははっ、そうだった、そうだった。」
「エリナまで納得してしまったのじゃ。
こんなポンコツどもを風の大精霊の前に連れて行って大丈夫なのか心配なのじゃ。
どうなのじゃ、メイドよ。」
「もう考えても仕方がないですわ。おばば様がご主人様に背負われた時点で、輪廻の会合が動き始めてしまいました。
このまま、最後まで進むしかありませんね。」
「だから、なんで俺には聞かないんだよ。」
「「同じポンコツだから。」」
「えへへへっ、それって俺がシュウの愛人だからって意味か、ちょっと嬉しいな。」
「「お前のその辺全部がポンコツって言ってるの。」」
「えへへへへっ。ポンコツの愛人。えへへへへっ。」
「「もう、ほっとこう。」」
「それはそうと熊師匠はどうしたのかな。」
「あっ、あそこのツボ頭はもしかして、熊師匠じぁ。
まだ、酔いつぶれているみたいね。」
「どんだけ飲んだんだ。」
「お兄ちゃんどうする。森の熊さんに仕立てる? 」
「あんなの連れて旅に行けないから、森の熊さんにするか人領域に捨ててくるか。」
「あんな粗大ごみ、森に捨ててくるとエルフさんたちが超迷惑を被るよ。
めんどくさいけど、風魔法で軽くして、風見鶏まで運んで・・・・・、誰が人類風見鶏に転移するの? 」
「俺は嫌だぞ。
一瞬たりともここ(エルフ男衆の隣)を離れることはまかりならん。」
「その異様な決意はどこから来るんだ。」
「私も嫌だわ。
一瞬たりともここ(シュウの隣)を離れることはまかりなりません。
だって、シュウを一人にしたらフラフラとエルフ女子のお尻に引っ付いてどこかに行ってしまいそうなんだもん。」
「俺はフラフラ付いては行かないよ。
ついて行くなら堂々とおしりを追いかけるぞ。
バッコーン(どこからか出してきたエリナのハリセン)」
「ねっ、わかったでしょ。ソニアちゃん。
シュウをここで一人にしてはいけないことを。」
「おねえちゃんわかったよ。
ポンコツだけど私のお兄ちゃんだもんね。
最後まで面倒を見なくっちゃね。
幼稚園の先生が言ってたもん、お兄ちゃんの面倒はお嫁さんが来るまでねって。
あれぇぇぇっ、お嫁さんはもういるよ。」
「まぁ、その辺は個人差の誤差範囲ね、3σ以内であればOKにしましょうか。
シュウの場合は、お兄ちゃんの面倒はお嫁に行くまでよ。」
「ええっ、私がお嫁に行くまでこのポンコツ兄の面倒を見るの。
・・・・・、別にいいけど。」
「それじゃ、私が仕方なく、いやだけどこの熊を人類に送ってくくるわ。
その間にシュウがフラフラとエルフ女子のお尻に付いて行かないように、地下室を作って閉じ込めておいてね。
一応、空気穴はあけといて、死んで使い物にならないと困るから。」
エリナちゃん、だんだん旦那の扱いが雑になってきたような。
と言うような、朝食を兼ねた朝のミーテイングの結果、次のようなことになってしまった。
駄女神 旅に同行するエルフ男衆をもじもじしながら物色中。今晩気をつけろ。
熊師匠 はちみつ酒のツボに頭をつ込んだまま御就寝中。
エリナ 熊師匠を人類の雑技団に売却するため風見鶏を往復中
芦高さん 荷物をまとめて、背中に括り付けているところ。八本の足が超便利。
ソニア 俺の監視。飽きて、芦高さんと遊んでいる。俺を忘れんなよ。
俺 穴の中。ほんとに忘れんなよ。一生、お天道様が拝めないぞ。
さぁ、エリナが帰ってきたら旅に出発だぁ。
絶対に俺のことを忘れないでね。エリナ、ソニア。
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。