17話目 地図で目的の方向を確認したよ
「熊師匠の方は、一番強いはちみつ酒が飲みたいとおっしゃったので、通称「くまごろし」をお持ちしました。
熊がひっくり返るほど強い酒なので、ここに落ちているお猪口に少しづつ注いでお飲みくださいとお願いしたのですが、口当たりと甘さが気に入ったのか、お猪口に入れるひしゃくの方から直接飲み始めて、1分。
「くまごろし」の本領が発揮されたというわけです。」
「つまり、飲み過ぎてひっくり返ったと。
まぁ、当人、んっ、当熊は目的が十二分に達せられてさぞかし満足でしょう。
このままあの森に捨ててきて野生に返してあげましようか。
あっ、いらない。粗大熊を捨てるなと。」
「何か我々の方で不手際があった様で申し訳ございません。
このまま、寝かせておいて回復を待ちましようか。」
「こちらこそ、申し訳ございません。
これほどの人類の恥部になろうとは思いもよりませんでした。
こんな立派なところに寝かしておく必要はありませんので、向こうの森に捨ててきていただけませんか。」
「シュウ、丁度いいじゃないの。
これからの村長との話を聞いてほしくない人たちが勝手につぶれてくれたんですもの。
早く始めましょうよ。地図の確認とか。」
「そうだね、とりあえずこいつら2人は森に捨ててきてもらうとして、先に俺たちの用を済ましてしまおうか。
村長、先ほどの地図を見せてもらう件についてよろしくお願いします。」
「わかりました。それでは、地図を持ってまいりましょう。」
そう言って、村長は集会所の奥に消えて行った。
奥は何か倉庫のようなものになっているのかもしれない。
しばらくすると大きな紙を撒いたような筒をいくつか抱えて戻ってきた。
「これが今、村に保管しているエルフ領の地図です。」
「これを人類側の俺が開いてみても構いませんか。」
「ええと、ちょっと待ってください。重要な施設や隠しておきたい都市が記載されていない一般的な地図から見てもらいますね。
ええとですね、これはいかかでしょうか。」
「そうですね、実際に魔法を発動してみないとわかりませんね。
ちょっと、この魔法はお見せできないので、誰もいない部屋をお借りすることはできますか。」
「ええと、この部屋は女神さんと熊師匠、そして介護のエルフたちがいますね。
隣の小さい部屋があります。
そうでなければ、私の家ではどうではどうでしょうか。」
「はやくやつらを森に捨ててくればよかったね。
お兄ちゃん、なんであいつらを連れてきたの? 」
「仕方なかったんだ、保護者枠と炎属性枠が必要だったんだ。」
「熊さんなんて連れてこなくても良かったんじゃないの。駄女神だけで。」
「まぁ、俺の師匠と言う有名無実の役割があるからな。
それにいざとなったら、熊師匠に敵を擦り付けてソニアだけを助けることもできるし・・・・と、あの頃は思っていました。
現実には今回の冒険は危険がなさそうだし、エルフ族とは友好を結べそうだし。
お荷物だな。人類側に戻しちゃおうか。
本人もあれだけはちみつ酒を飲めば満足だろうし。」
「シュウ、それよりも村長がお待ちだわ。どうするのか、お部屋の件は。」
「ごめん、そうだった。
村長、隣の部屋で構いませんが、隣に移る前にその地図でここの正確な場所を示せるかどうか確認してもらえますか。
ある程度に正確な場所が記載できればその地図を使って我々の目的物のある方向を特殊な魔法で探ってみます。」
「わかりました、ちょっと失礼して広げてみます。
まずはこれからっと・・・・・・・。
この地図ではおおざっぱすぎてここの場所を示すことができませんね。
こちらは・・・・・・・、あっここの場所がすでに載っていますね。
これであればいいのではないでしょうか。」
「ありがとうございます、それでは隣の場所で魔法を使う前に、あと2点だけお願いしてもいいでしようか。」
「なんでしょうか。」
「できればこの地図と同じくらいの紙いただけますか。
それと隣の部屋にこの地図を広げて、東西南北を正確にして置いてもらえるでしようか。」
「わかりました。予備の紙はこれですね。
あとはこの地図は差し上げますので、書き込みや穴などをあけるなど自由に使ってもらっても結構ですよ。
それでは隣の部屋に行きましょうか。」
俺たちは満足そうに気絶している駄女神の横を通りすぎ、隣の小さな部屋に移動した。
そして、村長が地図を広げて、何か魔法を使った。
おそらく大地の方向を確認する魔法なのであろう。
何度か魔法を使って地図を微調整し、最後は釘のようなもので地図を固定した。
「さっこれで方向はあっています。
あと地図上のこの村に丸を付けておきました。」
「ありがとうございます。申し訳ないですが隣の部屋で待っていていただけますか。すぐ済むと思いますので。」
「わかりました。待っている間に昼食の用意をしておきましょう。お口に会えばいいのですが。」
「申し訳ありません。我々も携帯食しか持参していなかったので、ここでエルフ族の食事をいただけるとは思いもしませんでした。」
「それではごゆっくり。」
そういうと村長が部屋を出て行った。
「地図にこの紙を重ねてっと。
そして四隅をナイフで固定して。
あっ、ナイフを貸してくれる、エリナ、ソニア。」
「「はい、どうぞ。」」
「ありがとう。ナイフを刺してっと。
何とか下の地図のこの村の位置は確認できるから、上の紙に墨で印を付けてっと。
用意はできた。
ソニアまた、この剣を握ってくれるか。」
「えっ、またなの。この剣冷たくていや。」
「妾も小娘に握られるのは嫌なのじゃ。」
「握られているのは私ですが。私は全然平気ですよ。」
鞘氏、何とか冷気を押さえて。
「わかりました。やってみましよう。」
「ソニア、握っても余り冷たくないようにするからね。一人だけ何をやっているかわからないのは嫌だろ。」
「ぶっうぅぅぅ、しようがないわね。」
それではメイドさん、風の大精霊の居場所の方向をエリナの指を使って示して。
「わかりました。奥様、地図の前にお座りください。」
俺と交代して、エリナが地図の前に座り、風神様をはめている左の薬指をこの村の印を付けた紙の上に置いた。
そして、薬指が上の方にゆっくりと動いた。
それをなぞるように俺は墨で線を引いた。
"これが風の大精霊のいる方向ね。ここから北東の方向かしら。"
"お兄ちゃん、なんでもらった地図に線を引かないの? "
これから3日間、南東か北西に移動するけど毎日の移動後に大精霊のいる方向を確認するつもりだ。
地図の正しい方向はおそらくエルフ族しかわからないから、この地図を毎日エルフ族に渡して、東西南北を合わせてもらう必要がある。
そこに線が引いてあるとエルフ族にこちらの目的とする場所のヒントを与えてしまうだろ。
"シュウ、でも南東か北西に行きたいと言った時点で、北東に目的物があるとわかっちゃうかもよ。
そこはしょうがない。
地図上の線を見られるよりかはましだ。
例えば南東に超えられない山があるとかと言う細かい情報はエルフ族からもらう必要があるので、情報をすべて隠すのは逆に得策じゃないし。
"わかったわ。基本的に地図の線はエルフ族に見られないようにするでいいわね。"
"それでいこう。"
じゃ、この線を引いた紙は俺が預かるよ。
"お願いね。"
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。