15話目 交渉の窓口は誰?
話をしながら村に向かったため、30分ぐらいかかってしまった。
村は木の塀で覆われていた。
魔物や鹿、イノシシなどから守るためのものかもしれない。
門らしきところには弓矢を構え、槍を地面に突き刺した護衛らしきエルフが立っていた。
一人はイメメンでもう一人は、スレンダーな美女、ついにキタ――(゜∀゜)――!!
エルフ女だ。俺の今日の目標と言ってもいいエルフ女とついに出会えた。
しかし、美人だなぁ。
と自分でもほおが緩むのを感じているとバッコーン、バッコーンとハリセンチョップが2発、後頭部に炸裂。
続いて、あこがれのエルフ女様と俺の間に手を上にしてばたばた振っているエリナとソニア。
「「あっち、見ちゃダメー。」」
そんなぁ、あんな健康美満載、胸は残念な美女だぞ。
それを鼻の下を伸ばしながらちらちら見るのが男として生きる醍醐味というものじゃないか。
それを遮断するとは、悲しス。
その上、粗大ゴミを見るような目で俺を見るでないわ。
「シュウ、何をガン見しているのかなぁ。
あのエルフ女より、私の方がはるかに胸はおっきいわよ。」
確かにそうなんだ、胸も美少女度もはるかにエリナの方が高い。
でもねぇ、たまには別の美も堪能してみたくなるのだよ。
男としては。
それをわかってほしんだけどなぁ。
「いえ、強そうなエルフの戦士だなぁと思って。ハハハハッ」
「なんか笑いが乾いているけど。」
「第108独立旅団エルフ支部が必要かなぁと思って。
そのためには強そうなエルフの戦士をスカウトしないとね。
それで、彼らの力量を見極めるためにガン見していたというわけです。」
はっきりとエルフ美を堪能してましたと言えない俺はやっぱりヘタレ?
「じゃ、なぜイケメンは見ないでエルフ女さんだけをガン見しているのかなぁ。」
「そっ、そっ、それは。
あっ、ほれイケメンは駄女神さんが囲い込んで支部メンバーを探すだろうから、エルフ女子のメンバーは俺がちゃんと探さないと、男女労働機会均等法に引っかかるだろ。
まったく、駄女神のやつがイケメンばっかり囲い込もうとするからな。
おれがエルフ女子をスカウトしなければまずいでしょ。」
「シュウ殿たちのここでの目的は特別な場所を探しに来たのではないのですか。
人類側を支援するエルフの軍を独自に編成することも目的の一つなんでしょうか。」
「必要とあればと言うことは考えています。
戦のようなことが起こらないのが一番ですが、避けられない場合は俺たちは戦います。
エルフ族が戦いというものにどのような考えを持っているかはわかりませんが、共通の敵のようなものが現れたらどうしますか。」
「エルフ族がどのように戦に関わっていくかは王族と族長会議にゆだねる事になりますが、我々エルフ族も必要とあらば戦は厭いませんよ。
現実に魔族との衝突はありますし。」
「エルフ族の領土も魔族に攻め込まれているんですか。」
「その通りです、少しづづですが領土を削り取られていると聞いています。」
「聞いていますということは、この辺は魔族の戦とはあまり関係のない所なんですか。」
「戦は東の方で行われています。ここは地図で確認してもらうとわかりますが、エルフ領でも南の地域になりますね。
今のところ戦の気配はありません。」
「魔族はやはり、魔族の転移魔方陣でこちらに攻め込んでくるのですか? 」
「船でも来れますが、兵力と兵站輸送に限界がありますので、一番は転移魔方陣の設置ですね。」
「船と言いますと魔族領とエルフ領は海を隔てて隣り合っているということですか。人類の領域は別次元にあるのに。」
「その通りです。」
「さっき、転移魔法陣の設置と言いましたけど、魔法陣の設置場所は選べるんですか? 」
「人類とエルフ領を繋ぐ転移魔方陣は理由がわかりませんが、固定式で魔法陣も描くというよりは装置としての扱いですね。」
「エルフ領、多分魔族領でもそうですが、対の転移魔方陣を特殊な布や魔方陣を映し出せる魔道具に描いて一方を移動したい場所に持っていけば対の転移魔方陣間で転移が可能になります。」
「人類は固定式ですね。
一方は固定されており、我々の本部にあります。
対になるもう一方は転移魔方陣とその作動装置が必要になります。
これも固定されていると言ってもいいですね。
可能ならエルフ族の移動魔方陣を一対いただけないでしょうか。人類領域で持って使用可能か試したいと思います。」
「エルフ領ではすべての転移魔方陣が中央の行政組織で管理されています。
その上、新たな転移魔法陣の発行は王族と族長会議での承認を必要とします。
一応は譲渡できるか問い合わせてみますが、時間がかかるかもしれませんね。」
「申し訳ないですが、聞いてみていただけますかね。
用途はさっき言ったように、エルフ領で使える移動式の転移魔方陣が人類領でも使えるか実験してみるという単純な興味です。
譲渡ではなく貸し出しだということでもいいです。
ただ、貸出してもらえるほど俺たちを初めから信用してもらえないかもしれませんね。」
「やはり一度は王族と族長会議のメンバーのどなたかに会ってもらった方が良いと思いますね。
人類とエルフ族の間でお互いに信頼を得ることができると思います。」
「我々人類は魔族とは敵対していますが、あなた方エルフ族と友好を結んでいきたいと思います。
我々は敵対するつもりなどは全くありません。」
「この話を進めて行く上で、もう一つどうしても確認したいのですが、お聞きしてもよろしいでしょうか。」
「先ほどと同じように、俺たちが答えられる範囲であれば何も隠すつもりはありません。
きわどい質問は一度みんなで相談するか人類側に持ち帰って相談してからの回答になると思います。
俺たちはまたここに来たいので今回の訪問だけで後は何年も顔を見せないということはないとないと思いますよ。」
「わかりました。
私がお聞きしたいのはシュウ殿は人類を代表している、あるいは人類側の交渉権を持っていらっしゃいますか。
先ほどの自己紹介では第108独立旅団の一小隊長と言うことでした。人類の軍編成というものがどういったものかは我々は知りませんが、一小様隊長が人類を代表する権限を持つようには思えません。
我々が人類側と何か交渉したい場合、あなたに決定権があるのかそれとも人類側の窓口となるのか、あるいは人類側の交渉人をご紹介いただけるのか、如何でしょうか。」
「なるほど、俺とどの程度の交渉ができるかと言うことですね。」
「窓口としてはうってつけだと思うよ。お兄ちゃんは。
何せ第108独立旅団第3小隊はお兄ちゃんとお姉ちゃん、芦高さんの3人しかいないのに万の人類軍よりも強いよ。
人類軍最強の部隊だよ。
更に言うなら、お兄ちゃんとお姉ちゃんのコンビは芦高さんよりも圧倒的に強いよ。」
「でもね、ソニアちゃん、防御力は芦高さんの方が高いのよ。」
「えっ、そうなの? 」
「先日の第1084基地をめぐる戦いで芦高さんが炎の魔族一個師団に特攻して敵のど真ん中に居座って、ずっと周りの魔族をそのまま攻撃していたの。
私とシュウのベストカップルも、ここ大事だからメモっといてね、さすがに魔族のど真ん中に行って攻撃をし続けるのは無理ね。
闇魔族の師団だったら可能かもしれないけど。」
「闇魔族なら可能なんだ。
まぁ、そう言うことでお兄ちゃんとお姉ちゃんの話は必ず軍でないがしろにされることはないね。
後は魔法協会だけど白黒両魔法協会を第108独立師団が抑えているのでこちらも問題ないね。
重要な案件はお兄ちゃんたちが言ったことがすべて通ることはなく、軍と魔法協会で相談することになるとは思うけど。
そもそも人類側に他種族との交渉機関がないのよこれが。
この際だからお兄ちゃんとお姉ちゃんがエルフとの交渉役をすればいいんじゃね。
やる人決まっていないし、そもそもエルフ領に来た人類は私たち以外もう生きていないし。
白魔法協会はそれを支持するわよ。具体的な交渉はカメちゃんか、死神さんを連れてくればいいしね。
あっ、ここでは駄女神さんは役に立たないから。
イケメンに迫られると全部OKしちゃうから。
人類はエルフ領では素っ裸で前を葉っぱで隠すという提案にも、イケメンが交渉役だと「はい、喜んで。」とか言って嬉々として判を押すからね。」
「なんだか、あなた方、女神様のことが良く分からなくなってきましたが、まずはシュウ殿を人類側の交渉窓口と考えても良いということですね。
先ほども言いましたが、人類側との交渉窓口は私です。
心配しなくても葉っぱ一枚で裸踊りをお願いするような非常識な提案や相談はしませんし、させません。
また、緊急時以外は即決を求めるような事案を持ちこむつもりもありません。
よろしくお願いしますね。」
「こちらこそお願いします。
経験のない俺は自分では判断できることは少ないと思いますが、人類側に持ち帰って必ず誠意のある回答を準備するようにします。
こちらこそ、お願いします。」
「あっ、門の前でずいぶんと話し込んでしまいました。
こんなところで難しい話をするのは好ましくないので、まずは皆さん村にお入りください。」
「「「失礼しま~す。」」」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。