2話目 エルフ領に行く予習 前編
す~ぅっと、転移してきた先にはこの間お邪魔した、泉の神殿の転移魔法陣の上。
その前には仁王立ちしたチンチクリンが。
しかし、チンチクリンが仁王立ちしても全く迫力がない。
近所のガキんちょはビビるかもしれんが。
こういう時は美少女は不利だな。怒った顔がきれいすぎて怒った顔に見えないな。
結局、チンチクリンの時点で迫力なさすぎ。
「げっ、お母様。
ご機嫌いかかですか。お元気そうでなりよりです。
妾は元気にしておりました。
この度はご尊顔を拝見奉り、恐悦至極に存じ上げます。
つきましたは、あまりお邪魔致しましては大変申し訳ございませんので、そろそろお暇させていただきます。
それではおさらば。」
「いてててっ、おばちゃん引っ張んないでよ。」
「シュウ、何をぐずぐすしておるのじゃ、早く逃げねば、絶体零度のブリザードが吹き荒れるのじゃ。」
「俺を巻き込まないでよ。もういい婆ちゃんなんだから、自分の尻ぐらい自分で拭いて。」
「そんなこと言わずに一緒に逃げるのじゃ。
シュウの部屋のカギを開けてもらわないとゆっくり昼寝ができないじゃろ。」
「素直に謝った方がいいと思う。」
「そうか、許してくれるか。」
「ゆるさん。そこに正座。」
「ほれ、シュウ、お母様が正座しろとおっしゃておいでじゃ。
ほんに、いたずらが過ぎていつも叱られておるんじゃなぁ~、全くしょうがない奴じゃ。」
「シュウだけではなく、てめぇもだ吹雪。」
「だ・か・ら~ぁ、妾は正座はできませぬ。
代わりにシュウを人質に差し上げますのじゃ。」
「無理でもやるの。吹雪。シュウと一緒に土下座。」
「なんで俺もなんだぁ~っ、おめぇ~らの親子喧嘩に俺を巻き込むんじゃねぇ。」
「背中に背負った時点で、吹雪の罪はシュウの罪、仲良く一緒に罰を受けろ。」
吹き荒れるブリザード、降り積もる雪。
俺とおばちゃんは雪だるま。剣を背負った雪だるまとなったらしい。
自分じゃわからん。
「ちょっと、アクア様。シュウだけでも出してあげて。
悪さが過ぎた吹雪おばちゃんさんはそのままでいいから。
シュウが氷標本になっちゃう。死神さんの例の地下19階に連行されてしまうわ。」
「しょうがない。シュウはゆるしてやろう。ブリザードを止めるので誰かこの氷を溶かしてくれ。」
「「・・・・・・・、誰が溶かすって? 」」
「誰かが。」
「まさか、溶かすところまで考えていないの・・・・。
ここには炎属性魔法術士がいないのよ、
シュウ、大丈夫? 今助けてあげるからね。」
「アクアちゃん、だめじゃない最後までちゃんと考えてやらないと。
もう、何千年も生きてるのだから、少しは大人にならないと。
ずっとチンチクリンままだよ。
もっ、役立たずはあそこで正座して反省していなさい。メッ。」
「ソニアちゃん、ごめんなさい。ここで正座して反省しています。ショボ~ン。」
エリナが風魔法で雪だるまを抱えて、第1083基地に転移し、第34師団の炎属性魔法術士にお願いして、俺を雪だるまから救出するまで8分かかった。
あと2分遅かったら、黒魔法協会の地下19階行きだったらしいことは俺を熔かしてくれた第34師団の方からそっと耳打ちされた。
そのついでに「浮気はまずいよ。するなら、命を懸けないと。」と言われたのは、おそらく、俺が第34師団の巨乳美女の例の谷間をガン見したのがエリナにばれて氷漬けにされたものと勘違いされたのではないかとさらに後から気が付いた。
ううっ、また、変な噂が広がっちゃうよ~ぉ。どうしてくれるんだ、
「大ババァたちめ。この恨みはきっと晴らす。」俺の中で不気味に燃えるものがあったので、雪だるまになった後も寒く感じることはなかったのを補足しておこう。
そして、絶賛激おこ中のエリナがシュリさんを誘って、その日の夜に第1083基地の泉の転移魔法陣の側にある小さな泉に向かって、何やら怪しい呪いをかけていたのだがあまりに黒いオーラが濃くて詳細がよくわからなかったので、このぐらいの報告に留めて置く。
さらに、おばちゃんは絶賛激おこ中のエリナの暴風に飛ばされて、空気の薄いところ、何でも地上が丸く見えるところまで飛ばされたらしい。
しかし、おばちゃんは初めての光景を堪能してほくほく顔? で戻ってきた。
さすがは天下のおばちゃん、その程度の嫌がらせは夏に蚊に刺された程度の痛みも感じなかったらしい。
次の日、もう泉の神殿に行くのはこりごりなので、第1083基地の祠の後ろに隠してある例の特別な祠を使って、教会本山の礼拝堂の地下にある土の神殿にやって来た。
そこにはほくほく顔のノーム様がやはりに仁王立ちで待っていた。
だ・か・ら、チンチクリンズの仁王立ちは意味ナスだって。
「初めから儂のところに来ればよかったのじゃ。
チンチクリンのところに行くと碌なことがないことが分かったじゃろ。
全く、輪廻の会合に集い氏者どもの中心にいる人物を葬ってどうするつもりじゃ。
ほんに大精霊としての自覚がまるでなっていないのじゃ。
やつは全く使えないどころか足ばっかり引っ張って、困ったやつじゃな。
後で儂がきつ~く叱っておくので安心するのじゃ。
ほんに、無駄に年ばかり取りおって困ったやつじゃと2000年ぐらい前から思っておったのじゃ。」
"ぬぐぐぐ。悔しいが今日は何も言い返せん。
何か体が重いしな。呪われたような気がする。
しかし、チンチクリン×2に後れを取るとは、屈辱だぜ。
この屈辱を忘れずに次の機会では好成績を上げるぜ。"
「好成績って何の成績なんだ。背の高さか? 」
"それは俺がすでに勝ってる。そうじゃねぇよ。"
「じゃ、漏らした回数か? 」
"それもちげぇ~よ。前も言ったろ、あれは湿気が溜まった、結露だ。"
「じゃ、何の成績かはっきり言った方が誤解がないと思いますよ。
ちっょとまって、でもまさか、私とシュリさんの呪いが効きすぎて・・・・・・、脳細胞が闇に侵されて、〇ケ老人特有の、お昼飯食べたばっかりなのに昨日から何も食べていませんとか言う虚言とおんなじものだったりして。まずいわ。
おばちゃんさんとアクア様って、介護保険未加入でしたわね。
誰がこれからこのボ〇×2をお世話するのよ。
シュウ家じゃ面倒を見ませんからね。
お役所、いえ、白魔法協会に押し付けちゃえ。」
"そんな呪いごときで俺の頭はおかしくなんねぇぜ。体がちょっと重なった程度だ。"
「わかった、ダイエットの成績だろ。一週間で何g減ったとか。
チンチクリンのくせに何を体にため込んでいるのやら。」
"レディに体重のことをとやかく言うなんて、なんといういやらしい男なんだ。
みんなシュウに近づくな、変態だぞ。"
「変なものを体にため込んでいるチンチクリンに言われたくない。」
"何もため込んでいないぞ。しいて言うなら過剰な水分だな。"
「やっぱ体重だ。素直になりなよ。水太りだって。」
"こいつ、あのまま絶対零度にしてハンマーでたたき割っておけばよかった。"
「まぁ、頑張れ。
もう冬場だから汗で水分を飛ばすことはできないな。
ますます結露で水分を吸収するか、漏れるか・・・・・。難儀な体だな。」
"うぇ~ん、シュウがいじめた~ぁ。"
「まあ、やつのことはもういいじゃろ。
その辺の箱に除湿剤と一緒に入れとけば一安心じゃ。」
「あぁぁぁ、いたいたシュウとエリナ。
私が特別の祠を使えないことをいいことに自分たちだけ先に行っちゃって、置いてかれたぁ。プンプン。」
「ごめん。でもまだ全然話は進んでいないからね。チンチクリンの不毛な言い訳を聞かずに済んでソニアの方が羨ましいよ。全く。」
「まぁ、ソニアも来たし、そろそろ本題の風見鶏について・・・」
「あっ、あわてててお茶菓子買ってこなかった。
ちょっと行ってくるね。クッキーでい良い? 」
「私はケーキがたべたいなぁ。冬の新作があるんじゃないの。」
「そういえば、最近魔族探索ばっかりで、しばらく行っていなかったなぁケーキ屋さんに。
よし、ケーキにしよう。ちょっと行ってくるね。」
「「いってらっしゃ~い。」」
「おまえたち今日はここに何をしに来たんだ。
まじめに風見鶏の話を聞くつものはあるのか? 人類とエルフ族の将来につながるかもしれないのじゃぞ。」
「えっ、私はノーム様にご挨拶にきたの。ついでに、風見鶏とこれからの話もできればと思っているけど。
まずはお茶でしょ。お茶菓子でしょ。」
「うっ、うっ、そうはっきりと言われるとまずはお茶菓子だなと言う気分になって来たのじゃ。
人類とエルフ族の未来も大事だが、まずは目先の冬の新作スィーツじゃな。
ソニアちゃんが魔族の探索に行っていたからしばらくケーキを食べてないんじゃ。」
「ところで、なぜ魔族は風見鶏を闇の呪いをかけただけで放置していたのかな。
放置と言うかかなりの戦力を使って保護していた感じだった。
そんなに大事なら、別の場所で保管すればいいのにね。」
「魔族は風属性魔法に弱いのじゃ。
シュウたち人類はこのような風属性の力が宿った者は特に暴風などが吹かない限りはこの風見鶏から悪影響を感じることはないのだが、魔族はかなり嫌っているのじゃ。
本来風属性魔法が苦手な魔族が風見鶏を触っただけでもともと風見鶏に備わっている防御機能、例えば暴風と鎌鼬何かが発動してしまうようなのじゃ。
その規模が膨大で一個連隊くらいは暴風で一瞬で吹き飛ばされてしまうぐらい強力なのじゃ。
だから、動かしたくても動かせないのが本当のところじゃろ。」
「じゃ、魔族はなんで風見鶏を人類から遮蔽したかったんだろう。」
「私たちがエルフと手を組むことを嫌ったとかかなぁ。」
「それもあるのじゃが、どちらかと言うと、推測だがな、ソニアちゃんと風のアーティファクトがエルフ領に入るのを嫌ったんじゃないかと儂らは踏んでおる。」
「それはどういうことですか? 」
「まぁ、詳細な事情はこれからシュウたちがエルフ領にいって確認してもらうことになるのじゃが。ソニアちゃんが風の使徒として覚醒するのを恐れているじゃきっと。
これもなぜ恐れているか謎なのじゃ。
この件はソニアちゃんが覚醒した後にわかってくるんじゃないのかのう。
「わかりました。ここはエルフ領で最大の目的になりますかね。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。