24話目 美と慈愛の似非女神(怒特攻大魔神様)が信者の太鼓持ち(天然無意識口説き男)を付き従える図
エリナと怒特攻大魔神様との交信の後、俺たちは旅団の下に帰るための支度を始めた。
とにかく、風見鶏の件はここにいる者たち以外には知られてはいけない。
そのため、メイドさんに風見鶏の遮蔽について再度お願いした。
これを隠しきれれば一安心だ。
まぁ、魔族もいなさそうだし、慌てて帰る必要もないな。
ゆっくりと帰りましょう。
新たに解放した社になるか昨日に急遽建設したトーチカのキャンプ地に帰ることになるかわからないけど、もう怒特攻大魔神様がお待ちになっていることは確定なので慌てて帰る理由がなくなったな。
「エリナ昨日の疲れが残っているからゆっくり行こうよ。
何かいい天気でピクニックデートみたいで楽しいな。
まぁ、全速力で帰ってきた体を装うことは必要だと思うけど。
昨日のトーチカチャンプの500m手前から全力疾走すればわき目も振らずに急いで帰ってきたことを演出できるでしょ。」
「さすが私の旦那様です。完璧な作戦ですね。」
「でもなぁ、前にやってなかったっけか。」
「忘れた。気のせいだと思うわ。そんな完璧な作戦。そうそうできないわ。
そうねぇ。
じゃ、さらに遮蔽の魔法をかけていきましょうか。
さっき風神様に教えてもらったの。
それで移動してトーチカキャンプの500m手前で解除、ダッシュすれば完璧だわ。」
「それじゃ、エリナ、遮蔽の魔法を皆に掛けてくれるか。」
「了解。それっ。」
俺たちは雑談をしながらのんびり歩いて、昨日設営したトーチカチャンプの500m手前までやって来た。
丁度お昼前だった。
「さっ、走るぞ。エリナ遮蔽を切ってくれるかな。」
「さっ、良いわよ。
これで丸見え、走る・・・・・、あちゃぁぁぁぁ。」
いざ走ろうとしたら、向こうから物凄い形相の怒特攻大魔神様が大剣を振りかぶって走って来た。
そんな怒特攻大魔神顔はお見合いが趣味の淑女として如何なものかと言う前に、もう目の前に来ていた。
「朝帰りした上に、午後出社だとぁぁぁぁっ、いい度胸だ。」
「いえ、まだお昼前だと思います。遅くともまだ昼食の休憩時間だと思いますが。
俺の腹時計は結構正確ですよ。」
「そんな正確な時間はどうだっていいんだよ。
連絡もよこさずに勝手に朝帰りしたことが問題なんだ。
よりによって、若い男女が二人きりなんて、なんて不謹慎なんだ。俺でさえこれまで一度もねぇことを。
俺が淫乱の素をたたっ切ってやる。
シュウ、そこに正座して背中を向けろ。」
まっ、まっ、マジですか。何か目が血走っていますよ。怒特攻大魔神様。
一体どうしたんですか。
「また、だめだったのかもね。」ボソ
「えっ、このところ忙しくてそんなお〇合いする暇何んてなかったと思うけど。」ボソ
「あったわよ、一日交替でA部隊とB部隊が魔族の検索をしていたじゃない。
私たちが探索に言ったすきにきっと。やってたのよ。」ボソ
「えええっ、もしかして半日でお断りされたの。いくら何でも早すぎじゃねぇか。」ボソ
「あの目をみてよ。あの飢えたオオカミのような目で対面に座られたら、シュウだったらどう思のう。」ボソ
「ちびっちゃうかも。」ボソ
「でしょう。すごい美人さんなのに今のあの目がすべてを台無しにしているわ。それに加えて心の焦りからお肌がガサツになっているようだわ。
間違いないわ。ダメだったのよ。」ボソ
「じゃ、そんな男女が仲良くしていることを全否定したくなっている怒特攻大魔神さまに昨日の状況を連絡せず、無断外泊したおれたちを許してもらうにはどうすればいいんだ。」ボソ
「ほめる、ほめちぎるしかないわ。
男に褒められたら悪い気はしないはずだわ。
シュウが他の女をちやほやするのは断腸の思いだけど、あの獲物を狙うような眼を向ける怒特攻大魔神様をお鎮めするためにはがまんするしかないわ。
そのかわり今晩は抱きしめてキッスよ。絶対よ。わかったわね。」ボソ
「わかったよ。すごく良く理解した。
最後のところの話をするエリナの眼光を見て分かったよ。
怒特攻大魔神様とおんなじだった。
おれは今日は何事も逆らわずに生きていくことにするよ。
そうでないと明日の朝日を拝めないかもしれんからな。」ボソ
「シュウの言い分になんか納得できない部分があったような気がしたけど、抱擁とキッスのご褒美とホローに比較すれば些細なことだわきっと。
さぁ、シュウ、怒特攻大魔神様をお鎮めするのよ。愛の巫女の聖戦士殿。
後は任せたわ。」ボソ
「怒特攻大魔神様、もとい、特攻隊長様。今日もお美しい。
あなたのようなお美しい方に俺の邪気を払ってもらえるとはこのような幸せは生涯二度とございません。
さぁ、遠慮なくやってください。できれば笑顔でお願いします。
美しさが3倍増になり、邪気を持つすべての男共はあなたの前にひれ伏すでしょう。
あなたの美しさと愛の心で俺を縛る邪気を打ち払いあなたの下へ、いや美の女神の下に馳せ参じさせてください。」
「おおっ、いっ、いえ。そんなことはないわ。私が女神なんて、とんでもない。
私はただの行き遅れの、他人の愛にただただ嫉妬するだけの醜い心の女よ。
そんな美の女神だなんて。
そんなお上手なことを言っても無駄ですわ。」
「そんな、うそだ~ぁ、あなたが醜いだなんて。
そんなのうそだ~ぁ。俺は信じないぞ。
あなたの美しさは見かけだけではないはず。
その滲み出るような美のエキスは内側から漏れ出たもの。
あなたの心の美しさ、純粋さがにじみ出たもののはず。
それを俺に確認させてください。
さっ、そんな剣はあなたの美しさにふさわしくない。捨ててください。
あなたは剣ではなく愛の心で戦う女神。
俺の邪悪な心をそれで切ってください。
その微笑みで。」
「うふふふ、そうよね。私にはこんな剣や特攻服なんて似合わない。
私は美と慈愛の女神。皆に幸福を振りまく愛の女神なの。
漸く私の美しさと慈愛を受け止めてくれる信者を見つけたわ。
さぁ、行きましよう。昨日、解放された新しい社に。
そこは私の美と慈愛の教会。
シュウ君。そこで私を称えなさい。多くの男が私の慈愛の恩恵に気付くように。
シュウ君、私を崇めなさい。皆が私が美の女神であることを気付くように。」
「愛と慈愛の女神様。
さぁ、参りましよう。あなたの慈愛を広めるために。
さぁ、急ぎましょう。闇で美が汚される前に。」
美と慈愛の似非女神(怒特攻大魔神様)が前を歩き、信者の太鼓持ち(天然無意識口説き男)が後ろを付いて行き、人類の大事な教会を乗っ取りに行くというこの世の終わりかと思える光景がこうして出現したのであった。
取り残されたのは、ほっぺが目いっぱい膨れ上がったエリナであった。
「シュウ、私もそんなセリフで口説いて。
美の女神と称えて。
慈愛の女神と崇めて。
なんであんな年増を称えて、真の美と慈愛の女神の私を置いていくのよ。
もうっ、シュウ、待って~ぇぇぇぇぇぇ。」
「人はそれを自業自得というのじゃ。また、策士策に溺れるともいわれるのう。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。