23話目 どんだけ彷徨ってたの風神様、雷ちゃん
これって、風見鶏ですよね。
「えぇ~っと、もう触って大丈夫かな。」
「闇の呪いは解呪したわよ。だから大丈夫。」
俺はその風見鶏を持ってみた。
重たい。
んっ、鳥の飾りの逆側の先端がとがっている。
地面に突き立てて使うんだろうか。
「芦高さん、これ以外に社に関係ありそうなものをこの周辺で探してくれるかな。
あっ、見つけてらエリナに闇魔法が掛かっていないか確認してから触ってね。」
「わかったのだ。きゅぴぴ。」
「さて、でもこれって社なのかなぁ。」
「こんなところにあったのか。全然気づかなかったぜ。
魔族が闇の呪いで隠していたんだなきっと。
魔族ってとんでもねぇ奴らだぜ、人の物をかってにかくすとぁぁぁ。ぜってぇゆるさん。」
「メイドさん、これ知っているの? 」
「ご主人様、これは風見鶏、風の社と転移魔法陣を兼ねていますわ。
これで風の大精霊、つまり私たちの両親の神殿か少なくともエルフ族の別の社に行くことができるはずですわ。
妹の言う通り、闇の呪いのせいで風のアーティファクトである私たちにもここに風の社があるとはわかりませんでした。
見つけていただいてありがとうございます。
これでエルフ族の下に行くことができますね。
つまり、ご主人様は目標を一つクリアしたと言うことですわ。」
「ええええっ。これが風の転移魔法陣、風見鶏なの。
どうやって使うの。」
「それは・・・・、ここで言うのはちょっと迂闊かと。
できれば、大地の神殿か泉の神殿でお話した方が良いと思います。
そこであれば余計な者に聞かれる必要はありません。
また、そこであれば転移した後も残されることになるこの風見鶏も安心して保管しておいていただけます。
悪意のある者がこれを持ち去って、また、闇の呪いをかけたなら転移した後に戻ってこれなくなってしまうかもしれません。
私たちも人類の領域に転移してきたのはいいのですが、風見鶏がこのように闇で汚されてしまい、風見鶏の場所がわからなくなって数十年もエルフ領に行けずに人類の間を彷徨うことになってしまいました。」
「わかったよ。とりあえずこれを隠そう。
メイドさんいい隠し場所か他人に気付かれないような隠蔽する魔法はないの。」
「一番いいのは、例のペット魔族さんの空間に送るのがいいのですが。
あの空間にも魔族が大分増えてきました。
全員が信頼のおける魔族だったらいいのですが、確信が持てません。
やはり、風の魔法で遮蔽しましょう。
少なくても風属性魔法術士以外は何も感じないでしょう。
また、風魔法術士も何かあるまではわかっても、それが風見鶏とは気づかないでしょう。」
「じゃ、メイドさん、心配だから遮蔽しちゃって。」
「わかりました。遮蔽します。それっ。」
俺の前から風見鶏が消えた。
「おばちゃん、風見鶏がわかる? 」
「うーん、さすがに何かありそうなぐらいしか妾にはわからん。」
「エリナはどう? 」
「私もおばちゃんさんと同じだわ。もやっと、魔法が掛かった何かが感じ取れるだけだわ。」
「芦高さんは? 」
「僕にははっきりと風見鶏が見えるんだな。」
「芦高には魔法が効かないようじゃかだからさっきも闇の呪いが掛かった風見鶏を見つけられたのじゃろ。
まったく、芦高がいなかったらさらに数百年、或いは数千年双子の指輪たちがこの世界を彷徨ったかもしれんのう。」
「芦高さんも輪廻の会合に集いし者どもと言うことではないでしょうか。
それが闇の使徒に召喚されたのはそれこそ運命の会合と言うにふさわしいめぐり合わせですわね。」
「ちょっとまて。シュウ。
なんで風見鶏だと最初に気付いた俺に詳しいとを聞かずに、姉ちゃんの方に聞くんだ。
まずはエリナの次に愛している俺に聞くべきだろうが。
愛人よりもメイドの方が上なのか。
え~ぃ、はっきりしろぃ。」
「それをいまさら聞くの。
ほんとに聞きたい。
ほんとに理由を言ってもいいの。」
「もっ、もちろんいいぜ。
かっ、覚悟はできているぜ。
いつでも正妻になってやるぜ。
さっ、遠慮なく言ってみろ。」
「かび臭いやつよ、やめておきのじゃ。
お前とエリナ以外はシュウの答えがわかっておるぞっ。
あえて聞くまでもない。シュウから直接言われると後のショックが大きいぞ。」
「おばちゃんさん、私でもシュウの答えはちゃんとわかりますよ。
だてに正妻を名乗っているわけではありません。
いいですか皆さんちゃんと聞きなさい。シュウが雷ちゃんに説明を求めなかったのはですね。」
あっ、このフレーズが出たら要注意だ。とんでもないことを言いそうだな。
特に天然平目ちゃんのエリナは。
「わかるものなら言ってみぃ。
おれもシュウの愛人だ、いつでも正妻と修羅場を演じる覚悟がある、かも、ないかも。」
「それではなぜシュウが自称愛人で他の誰もがカビ臭いリングと思っている雷ちゃんに聞かずに、姉でメイドさんの風神さんに風見鶏のことを聞いたのか、それは実は・・・・」
「実はなんだ?」
「もう、どうでもいいから早く言うのじゃ」
「実は風神様の方が先に愛人になった2号さんで、雷ちゃんはその後に愛人になった3号さんだから。
2号さんの方を優先したからよ。
どうよ、シュウあっているでしょ。
ちょっと待って、それだと愛人が既に2人もいるということじゃない、
ちょっと、こればどういうことかしら、シュウ。
新婚1ヶ月にして既に愛人が二人もいるって。
あなた、ちゃんとここで正座してきっちり説明して頂戴。
愛人の二人もここで正座して言いなさい。
いつどこでシュウと知り合ったの、全く油断も隙も無い泥棒猫だわ。」
わぁぁぁぁぁ、だから言わんこっちゃない。
あのフレーズが出たら絶対こうなるんだよ。
まして、言ったのが天然平目ちゃんだから自分がものすごく矛盾していることを言っていることに全く気が付いていないよ。
指輪に正座しろってどういうこと?
それにメイドさんと雷ちゃんは天然平目ちゃんが買って来て、俺にプレゼントしてくれたんだよな。
金払ったのは俺だけど。
と言うことは。
「正妻が旦那に愛人をプレゼントしたということか。
そりゃぁ、すげぇぇぇな。」
「「「「・・・・・・・」」」」
「突然、何を修羅場に刃物を投げ込むようなことを言っておるのじゃ。
甲斐性ないやつが。
それではますます新婚さん結婚1ヵ月でもうすでに二人の愛人を囲っているのね愛人疑惑を深めることになるのじゃ。
あっ、そうか、甲斐性がなさすぎる旦那だから正妻が愛人をあてがってやったのか。
ほんに、甲斐性のない旦那を持つと正妻は苦労するのじゃな。」
「「「「・・・・・」」」」
「あっ、はい。元気ですよ。何か。」
んっ。疑惑の若奥様、どうかいたしましたか。
「ごめんなさい。すっかり忘れてました。」
「いえいえ、そんなお泊りキャンプなんて目論んでいないですはい。」
「まぁ、最近、2人っきりになれなくてかなり不満は貯めこんでいましたが、任務にかこつけてわざと失踪するなんてことは致しません。」
「まぁ、なんというか。忘れていたというか。」
「餅の論、十分に堪能させていただきました。」
「ひぇぇぇぇぇっ、ごめんなさい。」
「一応はこちらの目途が付いたのでぼちぼち戻りますね。」
「ひぇぇぇぇっ。ごめんなさい。すぐに戻ります。もちろん超特急です。光号です。」
「私にもわかりませんが、何となく口から出てしまいました。光って速いという噂ですからね。」
「はい。シュウにも伝えます。芦高さんにも伝えます。それでは後ほど。」
「エリナどうしたの、途中から土下座して。」
「鬼の特攻隊長が大魔神に変身してた。
連絡もよこさないで、一晩中何を乳繰り合ったんだって。
私は一晩じゃ足りないけどね。
1ヶ月ぐらいはシュウとべったり、いちゃいちゃし続ける自信があるけど。
まぁ、要は連絡もよこさないでなにしてんだぁ~、心配したぞ~ぉ、てことで早く帰ってこいとのことでした。」
「昨日の晩に引っかかっていた大事な事とはこれだな。
連絡するのを忘れてたよ。」
「まぁ、仕方ねぇんじゃないの。
半日で魔族3個師団を3人で殲滅したんだからよぉ。
疲れて、連絡どこじゃねぇよな普通。」
「とにかく急いで帰りましょう。大魔神が空を飛んでやってこないうちに。」
「風見鶏のことは誰にも知られるわけにはいかないから、遮蔽したまま芦高さんが持っていて。
そして、第1083基地に行ってノーム様かアクア様の神殿で今後のことを相談しようよ。
休暇を取って遊びに行くついでにね。
何としてでも休暇をもぎとってやるぅぅぅぅぅ。
昨日はマジで疲れたぞ。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。