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8話目 厳しい修行を始めたよ

「ようし。まずはみんな終わったみたいだな。

この型はこれから毎日やるから。寝返りをした時に、無意識に、突きの型がでるまでは最低続けよう。


では休憩。水は必ず飲むように。」


たまたまならいいが皆で寝ていて一斉にこの型で寝返りしたら、ネクロマンサーに操られたゾンビ兵士だな。


「休憩が終わったら、次の型をやるぞ。

まずは見てください。」


先生は先ほどの型を繰り返し、さらに一歩前に出ると同時に剣の突きをさらに鋭く突き出した。


「これが先ほどの型からさらに攻撃を奥に繰り出す方だ。

右足を素早く一歩進め、突きでした剣をその勢いで前に進める。」


「先生、突きよりも上段からの切り下げの方が威力が増しませんか? 」


「シュウ、良い質問だね。

剣の重量を生かすには上から下の方が威力が増すね。


でも、突いた方が構えから1の動作で攻撃できるが、上段からの切り下げは剣を時上段に振り上げ、切り下げる2の動作が必要になるよね。


接近戦において、敵よりも2倍動作を早くしないと、敵に先に突かれてしまうし、剣を振り上げた瞬間に敵に回避する動作の余裕を与えてしまうよね。


まずは突きの型をしっかり覚えよう。」


「理解しました。ありがとうごさいます。」


「それでは、構え、突き、一歩前進と同時に突の威力を高める。この動作を100回やってみよう。始め。」


俺たちは先生に言われた通りの動作を初めはゆっくりと、慣れたら素早く繰り返した。


その後は先生にチェックしてもらって、まずい点を修正し、さらにこの動作を繰り返すのであった。


「そろそろ、お昼だね。

午前の稽古はこれで終了。

昼からは次の遠征のための準備をします。

シュウたちはお昼はどうする。」


「お昼は宿坊で作ってもらったお弁当を持ってきました。」


「じゃ、食堂でそれを食べればいいね。

汁物はこちらで用意するよ。

クズミチは食堂の手伝いに行きなさい。」


「はい。


じゃ、後でな。飯を一緒に食べようぜ。」


「わかったよ。

先生、俺たちは昼の準備を手伝わなくてもいいの? 」


「その前に、これからの話をしなければいけないので。

そこに座って。


まず、館長を含め私たちは2日後に第6軍団のベースキャンプに物資を届けに行きます。


その護衛と途中の魔物の始末が我々の仕事です。」


「遠征の間は今のような朝訓練を行い、出発、昼からはキャンプ地を設定して魔物狩りに行きます。


クズミチのように未熟なものはベースチャンプに残り、訓練とキャンプの雑用を行います。


これを繰り返して、荷物を軍に届けて、往復8日間の遠征になります。

戻って4日間は交代で休暇と次の物資の調達や荷造り、普段できないようなみっちりとした稽古などを行います。」


「シュウは付いてくるとして、エリナはどうしますか。

二日後に出発しますので、一緒に行くとすると次にここに戻ってくるのは10日後です。」


「職校は来週からだから、ぎりぎり一緒に行く時間はありそうです。

一部間に合わない授業もありますが、軍を支える業務を経験する貴重な場なので、許可をもらった上で、同行したいと思います。

良いですか。」


「学業に支障がなく、むしろ役に立つのであれば是非同行してください。

遠征に参加するのであれば食料やテントなどはこちらで用意できますが、細々としたものは持ってきてください。


基本的に野宿する準備があればそれで充分です。」


「野宿の準備や職校への連絡があるでしょうから、今日は教会の宿坊に戻ってください。

シュウは今日は宿坊に戻るとして、遠征後の町での滞在先はどうしますか。

こちらで用意もできますが。」


「宿坊にお世話になろうかと思っています。

魔力の供給で昼のお弁当含めてすべてタダですし。

エリナからの連絡ももらいやすいかもしれないし。」


「わかりました。では、そうしなさい。

遠征の間は我々と寝食を共にするので、町でも一緒という必要はないでしょう。」


「先生、みんな、食事できたよう。」クズミチが嬉しそうに呼びに来た。


俺たちはクズミチに付いて、食堂に入る。

さすが道場の食堂は広く200席ぐらいはあった。

その半分ぐらいの席が埋まっており、数人のグループで楽しそうに話をしながら食事を取っていた。


俺たちは最後の方の様で、並ばずに給仕の人から汁を受け取ることができた。


開いている席に4人で座って、食事を始めた。

俺たちのことを知らない道場の人たちはちらちらこちらをうかがって、ひそひそ何か話をしている。


「このキーライ道場の所属は約200人。

そのうち武人は100人ぐらいです。


残りの方は道場の維持管理の事務方、軍に届ける物資の調達係、食事やクリーン担当の庶務係などになります。


遠征には物資の運搬も兼ねた武人80名と事務方と庶務係20名ほどが同行します。」


「大規模な遠征隊ですね。毎回ですか。」


「そうですね。第6軍団全体の輜重隊、後方支援隊としての機能ですから、むしろ少ない方かも知れません。


結構、魔物との戦闘もありますので。

キーライ道場は魔法術士や聖戦士ほどの実力はありませんが、比較的他の道場よりも武力が高いので、この武人で足りているのです。」


「そうですか。俺は入試の前に強い武人に囲まれて修行できるんですね。

ラッキーです。父に感謝します。」


「親は子供にとって何が一番良いかいつも考えているのでしよう。

私はまだ独身ですので、その心髄には達することはできませんが。」


その割にはうちの父は俺におばちゃんたちを押し付けたな。

本当は俺に必要だから預けたのか?

今のところお荷物以外の何物でもないがな。

今も他の荷物と一緒に木陰で昼寝しているし。


「あのー。先生質問があるのですが。」


「エリナさんどうしました。」


「遠征の途中で、魔物探索があるとのことですが、私とシュウは留守番組でしょうか。それとも探索に参加させてもらえますか。」


「館長に相談しますが、町に近いところでは留守番して武道の稽古が良いと思います。

結構探索は無駄足も多いので。


逆に、軍に近くなったら、魔物の発見頻度が上がりますので、探索隊というより討伐隊として機能してもらうのが良いかと。


はっきり言って、あなたとシュウのチームは我々武人全員合わせたより強いと思います。

オーガ付き魔族を二人で余裕で倒せるなんてすごい火力ですよ。」


「わかりました。私も課題の成績を上げるために魔物を倒したいと思っていましたので。」


「ちぇっ。俺だけ留守番か。」


「まだ魔物と戦うのは早すぎます。

シュウもエリナと一緒でなければ魔物には向かわせません。


これからいくらでも魔物と戦わなければならないのですから、まずは己の武力を上げることを考えなさい。


焦ってる者ほど生き残れませんよ。

先程の館長の言葉を思い出しなさい。

武人は生き抜けば勝ちなのです。」


「わかりました、先生。もっと修行します。

早く魔物と戦えるように。」


「がんばりなさい。」


このような話をしているうちに昼食を終えた。

食器を片付け、午前中に修行をした場所に戻ってきた。


「それではシュウたちは遠征の準備のために宿坊に戻りなさい。クズミチは遠征の手伝いです。


シュウたちは宿坊に帰ったら、教会の上級司祭様を訪ねなさい。疲労回復の魔法をシュウたちに使ってもらえるようにお願いしてあります。

今日は慣れない訓練で明日朝は確実に筋肉痛と疲労で動けなくなります。

明日も稽古をしたいでしょ?。 」


「疲労回復なら私でもできますが。今ここで。」


「エリナにお願いするとシュウの疲労をすべて取り除いてしまいますよね。それでは修行の意味がなくなるのです。


ぎりぎり動けるほどに疲労を回復するのが良いのです。

疲労が肉体を強く鍛え、疲労感が自分の肉体の限界を知ることになるのです。」


「上級司祭様にはいつも新人の疲労回復をお願いしているので、その辺りの加減を理解されています。

クズミチも半月ぐらい毎日通いましたよね。」


「はい。」


「わかりました。上級司祭様に疲労回復について学びたいと思います。

遠征中は私がシュウの疲労回復を担当するのですから。」


「仲が良いのですね。」


「エリナさん。俺も疲労回復お願い。」


「クズミチ。君はもう必要ないでしょ。

疲労回復が必要だとしたら遠征には連れていけませんよ。

今回が初めての遠征でしょ。どうしますか。」


「全く疲労回復は必要ないです。

遠征中は自分の面倒は自分で見ます。

皆の足は引っ張りません。」


「よろしい。」


「・・・ちぇっ。シュウはいいなぁ。エリナにお世話してもらえて・・・・」


俺とエリナは宿坊に帰ったきた。宿坊の受付で今日も泊まりたい旨を伝えた。


「早かったのね。今日の修行は終わり? 初日だもんね。

先ほどから上級司祭様がお待ちです。

お話と疲労回復をお願いするのでしょ? 」


「はい。」


「シュウ君とエリナさんだね。」


壮年の司祭様だ。きっと上級司祭様だ。


「上級司祭様ですか? 」


「そうですよ。」


「今日はお願いがあります。聞いていただけますか。」


「そのつもりでここで待っていました。お話をどうぞ。」


「俺はシュウです。始めまして。


実はこの町のキーライ道場で今日から修行を始めました。

俺は9月の聖戦士職校の入試を受けるつもりで、そのための準備です。


道場には宿坊から通いたいのですが、できれば宿賃を魔力溜め20基、お昼のお弁当代を魔力溜め3基の充填で賄いたいのですか。よろしいでしょうか。」


「その件は受付のシスターから聞いています。よろしいですよ。」


「私は見習い魔法術士のエリナです。始めまして。


私は課題が終わったら来週教会本山に帰るために、転移魔方陣を使用させてほしいのですが。もちろん必要な魔力溜めは自分で用意します。


あと、時々シュウと私でここと教会本山間で手紙のやり取りをしたいのですが、こちらも魔力溜めをシュウが用意しますので、小型の転移魔方陣の使用を許可していただきたいのです。」


「どちらの要件も転移魔方陣の使用を許可します。

使用前に私に行ってください。

あっ、シュウ君が教会本山に手紙を送るときはこの教会の手紙と一緒に送りますので、宿坊の受付に手紙を預けてください。

この場合はついでですので、魔力溜めは必要ないですよ。」


「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」


「それより、二人ともキーライ殿のところで初稽古をしたそうですね。

疲労を回復しないと明日動けなくなるので、疲労回復の魔法を使いますね。」


「司祭様、それについてもお願いがあります。


シュウと私は明後日からキーライ道場の遠征について行くつもりです。遠征中も稽古を繰り返す予定なのですが、初心者なのでしばらく疲労回復の魔法を使った方がよいと言われました。


しかし、私の疲労回復ではかえって修行の妨げになると言われました。

できれば今日と明日で武道の稽古用の疲労回復魔法のコツを教えていただけないでしょうか。」



「良いですよ。遠征途中で疲労で倒れたらついて行く意味がありませんからね。

それではシュウ君から疲労回復を行います。まずは使う魔力量などをエレナさん見ていてください。」


俺たちはキーライ道場の遠征まで、稽古や回復魔法の修行、旅の準備、エリナは職校に一部の授業の欠席の許可をもらうなどして過ごした。


次回はこの物語の世界観を説明する予定なので番外編となります。

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