表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/620

10話目 無心に剣を振って得たもの

遅れに遅れた探索の残りの行程を取り戻すため、俺たちは休憩も取らずに合流場所を目指した。


誰のせいだ。

結局、合流前にもマラソンじゃないか。


ちょっと息切れしてきたぞ。

普段十分に鍛えているはずなのに、ペースが速すぎるのか。


周りを見ると、俺しかいなかった。

ごめん。退屈でつい走ってみたかっただけだ。反省してま~す。


何かすっきりしたなぁ。


初めから探索にはお荷物だとわかっていたんだから、探索の手伝をするとは一切考えずに初めからおばちゃんをぶんぶん振って鍛えるとかすればよかった。


人生の一部を無駄に過ごした気分だ。

探索はもういいや。お荷物だし。

背中からおばちゃんを取り出し、とにかく振ろう。


ぶんぶん。

剣を振る音と風の音と相まって、その他の周りの音は聞こえなくなる。


ぶんぶん。

さらに振り続ける。

振り続けることで心の音、雑念も消え去る。


ぶんぶん。

ただただ、振る。


途中何か切羽詰まったような声が聞こえたような気がするが、雑念を消え去った心と頭には何も響かない。

それがどんな重要なことであっても。


「おい、シュウ。聴け、まずいぞ。ほんとにまずいぞ。

目を覚ませ。お~ぃっ、聞こえるか~ぁ。


駄目だ何とかの一つ覚えみたいに、婆ちゃんを振ることしか考えいないぞ。

いや、足りない頭からさらに何もなくなった状態だぜ。」


「本当に何も聞こえていないみたいですね。」

「妾は目が回って来たのじゃ。かなり気持ちが悪いのじゃ。

うっぷ。シュウもういい加減やめてくれ~ぇっ。」


「雷神、軽く吹雪様に電撃を。

ご主人様の頭に刺激を与えてみましょう。」


「それはかまわねぇが、ない脳みそに刺激を与えても何も変わらねぇと思うぞ。」

「ともかくやってみてほしいのじゃ。うっぷ。もう限界じゃ。」


「うっぷの後はどうなるか見てみたい気がするが、まぁ、武士の情けだ婆ちゃん覚悟しろよ。

今楽にしてやるからな。」


「ちょっと待つのじゃ。

雷神よ、楽にするというのはまさかこいつ共々人生最後にわたる川を渡らせるつもりなじゃなかろうな。

もう少しうっぶは我慢できそうじゃから、ちょっと一旦ストップするのじゃ。」


「この期に及んでごちゃごちゃうるせぇぞ。

覚悟しな。それっ。」


「待つのじじじじじじじじじじじじびびびびびびび~っ。痺れたのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


「シュウ。大丈夫? 雷神様の電撃を食らったようだけど。」

「だいじょうびびびびびび~っ。」

「きゅび、きゅぴ」「気か付いたってよ。」


「シュウ、もうみんな走って合流地点に行っちゃったわよ。どんなに話しかけてもおばちゃんさんを振り続けているんですもの。

危なくて近寄れないし。


とりあえず私と芦高さんがここに残って、龍宮守チームには先に合流地点に行ってもらって、事情を説明してもらっているわ。」


「ごごごごめめめめめんんんん。むむちちゅゅううにになりすぎて、何も聞こえなかったよ。


さぁ、合流地点に急ごう。エリナ、悪いけど皆にスピードアップの転写をお願い。」


「良いわよ、それっ。

うふふふ、無心に大剣を振り続ける旦那様は凄くかっこよくて、私もついついうっとり眺めていたわ。」


「シュウよ、妾を持って走るでない。

うっぷぷ、さらに悪化してしまったぞ。」


ごめんよ、今急いでいるので背中の鞘氏に戻す余裕がないんだ。

もうちょっとだから我慢してくれ。


「もうだめなのじゃ。うっふふふ。でるでるでる、うぇっ、・・・・・・・、


氷が出てしまったのじゃ。ちょっとすっきりしたのう。」


シュウたちが走った後にダイアモンドダストの帯が日の光を浴びて、虹の帯に変わっていった。

幻想的な虹の帯と共に漸くして俺たちは合流地点に到達した。


そこには・・・・・、闇のアーティファクトの大鎌を持った闇の使徒様(覚醒前)がいらっしゃった。


さらによく見ると地面にはいつくばって土下座しているお方が、あっ、越後屋さんだ。


その時、風の音を耳元で聞いた。

しゅっ。はら。


俺の耳元をたまたま飛んでいた蜂が、その羽がはらりと舞った。


「シ・ュ・ウ・ク~ン。お疲れ様。

手は疲れたいない。疲れていないわよね。

足はもちろん大丈夫よね~ぇ。


うううん。何も言わなくていいの。お姉さんすべてわかっているから。

すべてタイさんとカメさんに聞いたから。

だから、いいの、何も言わなくて。」


俺は闇の死神大魔王様の背中越しに後ずさる特攻隊長が見えた。


あの特攻隊長が後ずさるだと。

天変地異の前触れか。


どうしたんだ。

心地よい午後の日差しが、雲でもない薄汚れた何かで覆われていく。

これは闇、闇の粒子だ。


闇の粒子が俺から日の光を、そして生きる希望を奪っていく。

俺は逃げ出したい。

しかし、俺がここで逃げ出すとエリナが闇の粒子を吸って、暗黒面に引きずり込まれてしまうかもしれない。


ここは俺が踏ん張らねば、負けてたまるかこんな闇の使徒ごときに。

俺は人類の、いや地上にある全生命の希望となるんだ。

さぁ、闇の使徒に向けて俺の持つ勇気のすべてを掛けて、一歩前に進むんだ、

おれは男だ~ぁ、行くぞ。


「すいませんでした~ぁ。」

の叫びと共にジャンピング土下座を敢行したのであった。


「自分のやったことがわかっているようね。

わかっていてもやってしまったのね。

は~ぁ。仕方ないわね。」


「そうですよね。仕方ないですよね。」


「そうなのよ。仕方ないのよ。こうなることは。」シャキーンッ


「そそそれはっ。まさか・・・・・」


その時エリナが俺の背中に抱き付いた。


「待って、どうしてもやるのであれば、妻である私も一緒に。


旦那様。どこまでもついて行きます。

例え、あの見えない川を渡ることになっても。

どこまでも一緒に。」


「ほほ~ぉん。夫婦は一蓮托生というわけだな。

良いでしょ、望み通りに一緒に受けてもらうわ。


残念ね。あなた方とは最後まで一緒だと思っていたのに。こんな形で裏切られて、こんな形でお別れになるとは。


は~っ。人生って、ままならないものなのね。


最後に言わせて頂戴。

己のとった行動はその結果を己で受け止めること。

軍命を蔑ろにした罪は重いわよ。


さ・よ・な・ら。

人類の希望よ。


さ・よ・な・ら・

人類の英雄と呼ばれしものどもよ。


先にいって、川の向こう側で待っているがよい。

さらばだ。」


俺とエリナ、芦高さんは装備を背負って、スピードアップなしで第1083基地に全速力で帰投をさせていただきました、はい。

そして旅団のメンバーのために暖かい肉野菜スープもちろん用意させていただきました。


かなりしばらくして、日が完全に傾いたころに俺たち以外の旅団のメンバーが帰投してきた。


「おおっ、シュウたちお迎えご苦労さまです。

スープも用意をして待っていてくれましたか。気が利きますね。


探索というものは何の情報が知りたいかをちゃんと把握して、それに答えられるよに行わなければなりません。


今私たちはだんだん涼しくなる中で探索の演習を行ってきました。

探索の演習は立ち止まったり、隠れたりと非常に地味で体が冷えてしまうものです。


そこに暖かくて具の一杯入ったスープを作って待って居てくれるとはなんと気の利いたことでしょう。

常にそういう気概を持って、軍命に従ってほしいと思います。


本当はあなた方の明日からの休暇を取り消して、探索の演習を行ってもらうことを考えていましたが、このスープに免じて、休暇の取り消しはなしにしてあげます。


ただし、みなと同じとはいかないので、二日とも午前中は第32師団の新人教育係から職校の講義を受けるように命じます。

先方には講師を派遣してもらえるようにお願いしてみますね。」


「ほんとは探索演習をさせたかったんだけど、そうすると自分が中隊長としてそれに付いていなければならいからなぁ。


そうすると自分の休暇がつぶれるので、それを嫌がったんだな。


しかし、監視役を第32師団に押し付けるとはさすが死神中隊長だ。

特攻隊長じゃまねできない陰湿な知恵がまわることだ。うんうん。」


「「こりゃ、カメ~ぇ。てめぇも午前中は講義だ。いいな。」」


「やった~ぁ、どうせ卒試に向けて自習する予定だったんだ。

それが講師付になるとは僕凄くついてる人? 」

「「カメ~ぇ。」」


特攻隊長と死神さんの天敵になりつつある、無敵のカメ、いやもうガメラだな。

ところで、ガメラってだれ? 何なの?


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ