表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

141/620

3話目 カメさんが語る。人々の希望を。

旅団の金策については、そもそも金策が必要なのかは不明だが、守銭奴教最高司祭と闇の死神大魔王守銭奴教聖女の鏡様に任せることにしてB部隊は装備の補給をこそこそ済ますことにした。


もう。あの二人の悪魔せいで、第32師団の補給部隊の皆様には思いっきり胡散臭い目で見られてしまった。

彼らも師団の後方支援部隊なので、施設設置部隊の九段の苦労はよくのわかっているようだった。


それを旅団の資金稼いようにひっかきまわされるのは同じ師団のメンバーとしては面白いはずもない。

しかし、旅団からのお願いには、彼らにとっては最優先の命令だが、黙って従うほかはなく、渋々と言った体でこちらのお願いする装備品を用意してくれた。


うちの旅団はそのうちに悪魔の搾取軍団とでも噂されそうである。


もらった装備を持って、部屋に、部屋の神様に申し訳がなさすぎて心の汗が出そうな、男4段極狭本棚倉庫ベッドに戻って来た俺とカメさん。


「ここも今日一日我慢すれば明日は軍幹部用の外来宿泊施設に移れるね。

今晩、僕は寮に帰るよ。

熊さんも夜には飲みに帰るだろうから、今日はひとり? んっ、そう言えばボルガ君はどうするんだろう。」


「なんでも昨日はここのロビーにござを引いて、寝袋で寝たそうですよ。

はっきり言ってその方が男3段棚倉庫ベッドよりは遥かにましですね。

ペットのワンコより劣悪な宿舎や環境というのはいただけないですよね。」


「まぁ、これまでもここまでひどい生活環境は社解放後の1~2日ぐらいで、あとは軍団の幹部用宿舎の接収で、良い思いができるのだからね。

死神さんもちゃんと俺たち男隊員のことを考えていてくれると思うよ。」


「ほんとにそうだといいんですが。」


「シュウ君としては寝るとこよりも食事のことの方が気になるんじゃないの。」

「そうなんですよ。やっぱりキャンプ飯だけじゃ次の日の力にならないというか、プラスの俺だけの食事が欲しいというか。」


「はははっ、そうだね、君は。

それにエリナさんとタイさんの作るプラスは絶品だもんね。」


「今日はおそらくプラスが出てくると思いますが、明日は午後から任務なので、夕食のプラスは期待できませんよね。」


「わかんないけどね。

探索前の朝と午前中に何とかしてくれるんじゃないかと思うよ。

あの二人ならば。」


「そうなんですか。期待しちゃいますよ、俺。

これでキャンプ飯オンリーだったらきっとすねますよ。

すねて、ここにある例の俺とエリナしか発動できない転移魔方陣でタイさんとエリナと食材を持って、行っちゃいますよ。」


「うむむむむっ。それは困るな。次の探索ができなくなるな。

後で僕からもお願いしてみるよ二人に、プラスを作ってって。


エリナさんはシュウ君のお嫁さんだから嬉々として作ってくれるけど、タイさんはどうかな。

タイさんはいつもどうしてここまで旅団のみんなのために尽くしてくれようとするのだろうか。」


「料理をするのが好きだからじゃないんですか。」


「それも当然あるけど、毎日だよ。

好きだけでそんな献身的なことができるかな。」


「ますますありがた味が増しましたが、どういう思いから何でしょうね。」

「無償の愛でしょうか。母が子に示すような。」


「そうだったら、この俺はこのまま止まってはいられませんね。大きく成長しないと。そして、いつか外へ羽ばたいていかないと。」


「外へ羽ばたくところまではなってほしくないと思うよ。

いつものように、背中を見守って、シュウ君が戦い易いように場を整えてあげたいという気持ちじゃないのかなぁ。


まぁ、そう言う僕も同じなんだけどね。


僕は直接の戦闘には向かないけど、情報を扱うことには自信があるよ。

自信があるというより、それに特化するしかないというか。」


「確かに、Bチームからカメさんが抜けたら俺たち手探りというか、裸で敵に剣一本で特攻するに等しいですからね。」


「そんなことはないでしょ。

敵の情報はエリナさんの方が広く深く探索できるし、それをもとにタイさんが的確な指揮を執るし、問題はないと思うけどな。」


「それは少し間違った認識だと思いますよ。

エリナの情報処理能力は局地では類稀ですが、俺たちだけでここの戦闘地帯で戦っているわけじゃないですよね。


旅団の他のメンバー、第32師団のサポート、そして隣の第2軍団の最前線で戦っている人たちと常に連携を取って戦っていますよ。


その連携を保っているのはカメさんじゃないんですか。

その連携をもとに小隊を指揮しているのがタイさんじゃないんですか。」


「はははっ、その通りだね。ありがとう。

人類の生きた英雄にそういってもらえると誇らしいよ。自分の頑張りが。」


「英雄なんてとんでもない。俺はできることを・・・・。」


「できることだけをしていると。すべきことをしていると。


その力をもって、ただ単に人々のためだけに、そのために最前線で命を張れる君はやっぱり英雄だと思うよ。

英雄という呼び方が嫌なら、希望かな、いずれにせよ今のままで君は前に進んでほしい。


英雄だの希望だのと言われることが嫌なのは君と一緒に行動すればわかる。

でもね、あまりにそれを否定するのはそれに縋りつかざり負えない弱い人々の希望を打ち砕くことになりはしないかな。


人は弱い、僕も、タイさんも、乙姫さんも、君だって、エリナさんもみんな同じように弱い心をもって生きているんだと思う。


君が人々の希望として進むのならば、君が弱気にさいなまれた時には僕たちが君を支え、勇気をあげたいと思う。


弱い僕の支えじゃ不安かな。」


「そんなことはありません。

強い弱いじゃないと思いました。

最後まで同じ思いで前に一緒に進むことが大事なのではないかと思っています。」


「それでは一緒に進もうか、一歩一歩、半歩でも構わない、希望の明日を迎えるためにね。」


希望は、夢は大きくか。


しか~し、現実は俺たちの前には男4段極狭本棚倉庫ベッド様が鎮座していた。


これに希望は見いだせないな。

この壁を破ることが今日の俺の志だ。

さぁ、どうしてやろうか。この男4段極狭本棚倉庫ベッド。

あっ、俺はエリナの部屋の床様を友とすることを許可されたんだ。


なんだ、問題は解決していたんじゃないか。

さらば男4段極狭本棚倉庫ベッド、いらっしゃいませ床様。

床様には誠心誠意仕えさせていただきます。

けっして、土足て踏んだりなんて致しません。

使用後はモップで綺麗に拭き掃除をさせていただきます。


だから、ねっ、お願い俺を見捨てないでくれ。

けっして、俺を床様から追い出さないで、たのむよ。

床様に見捨てられては生きていけない。

お願いします。


「シュウ、こんなところに居たのね。

まさか今晩はこんな男4段極狭本棚倉庫ベッドで過ごすつもりなの。

アホなの、明日からまた魔族探索があるのに。


まったく、私の部屋に来るのが夫の義務でしょ。

さっ、枕ひとつでいらっしゃい。

まさかとは思うけど床で寝るなんて言わないわよね。


今日こそは私とベッドで、私を抱きしめながら、キッスをしながら、もちろんその後の大人の階段もどんとこい。


というわけで、今晩は頑張ろうね。

だ・ん・な・さ・ま。」


「ごめん、エリナ。今日は床様と一晩中語り合う約束なんだ。

だから、ベッド様と語り合うのはまた今度で、お願いいたしますね。」


「シュウの甲斐性なし、ばか~ぁっ。」


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ