19話目 枕だけ持って今すぐにいらっしゃい。妻からの命令です
漸く次の日。
「皆さん、早いですね。もう集まっていますね。
これより、第108独立旅団第3小隊所属のシュウ隊長とエリナ隊員に辞令を交付します。
2人とも前に出てきてね。
第108独立旅団第3小隊所属のシュウ隊長、右のものを剣士6級に昇格する。
第108独立旅団第3小隊所属のエリナ隊員、右のものを術士5級に昇格する。
昇格、おめでとう。これからもよろしくね。
ばったばったと魔族とリスト上位者を倒しましょう。」
闇の大魔王は俺たちにマジで死神のリスト狩りを手伝わせるつもりじゃないよな。
俺たちは死神の上を行く存在に逆らえるわけないからな。
まったく、知らなければよかったよ。
知らなければ、呑気にあくびしているソニアのようにしていられたのにな。
"エリナ、なんか人より多くの秘密と使命を抱えてしまったようだよ。
ごめん、巻き込んだようで。
俺と出会わなければ、もっと平凡な危険のない幸せな結婚生活が送れたかもしれないのにね。"
"ぷんぷん、弱怒。
旦那様はいつもそんな弱気なことを言うから雷神様とおばちゃんさんにいいように弄ばれるのですよ。
私の旦那様なのだから、もっと毅然としていてください。
旦那様は私の太陽なのです。
私を照らす。
それだけにとどまらず、人類の、魔族の、エルフ族の未来を照らす太陽になるのだと昨日の大精霊様たちのお話を聞いて思いました。
私は光の公女候補だそうですね。
でもね、私の持つちっぽけな光だけでは太陽のように輝く旦那様の代わりはできそうにありません。
あなたという私にとっての光があるから私は光輝き、光の公女としての役割を全うできるのだと思います。
今の私は光の公女となる資格は全然得ていませんが、これからあなたの光を受けながら、私も旦那様と一緒に成長して行きたいのです。
そして、あなたの光の恩恵を受けた私が、今度は人類、いえ、魔族にもまだ見ぬエルフ族にも私の持つ光を注げる日が来るのだと思います。
私は未だに魔族との共存という考えに、どこか賛成できないことがあるのは確かです。
でもあなたの優しい光を私も浴びるうちにきっと、諸手を上げて賛成できない今のわだかまりを持った心は浄化されてしまうような予感がしています。"
"エリナ、俺の大事なお嫁さん。これからも一緒に頑張って行こうね。
俺たち、旅団のみんな、第1と2軍団のみんな、人類、そして、魔族とエルフ族もすべて幸せになってほしいな。
何が成せるかはまだ分からないけど、生きているすべての者が幸せになれるように、少しでもその力になれるように頑張って行こうと思っているよ。
エリナ、昨日の大精霊様の話を聞いた上で、改めて聞かせてほしいことがあるんだ。"
"なんか今のシュウの言葉が怖いわ。
それは私を試すのではなく、私の覚悟を聞かせてほしいのかしら。
何度も言うわ。
私の夢は旦那様の夢を支えること。
旦那様の夢が万が一挫折しようとも、私の夢は変わることはないわ。
挫折した旦那様の夢ごと面倒を見ます。
それが私の覚悟。
シュウ、どう私の覚悟は。"
"ありがとう。俺も覚悟をもって、前に進むよ。
今日からは昨日までと同じではいられない。
大精霊様たちからあのような話を聞かされた上ではね。
当面は魔族から社を解放していくことになるけど、ただ解放するだけの昨日までから、解放した後に魔族やエルフの領域に続く道を見つけなけけばならないという使命が加わったよ。
その後は、魔族領域に行くときにはソニアと闇の死神魔王様も俺たちと一緒に連れて行かなければならない。
その理由を、大精霊に聞いた話を、いつ2人に告げればいいのか。
ソニアは大精霊と付き合いがあるのでまだいいが、覚醒していない闇の死神大魔王様にどう説明しようか。
いろいろ考えなければならないことが多すぎるよ。"
"それも私たちに課せられた試練と言うことかしら。"
"そうだね。やっぱり、まずはできるところから一つ一つだね。"
"だね。"
「昇格して、給料が上がって、心が舞い上がって、人の話を全く聞いていないそこのバカッブル。
いい加減戻って来い、気持ちだけバカンスから。
おっほん。
それでは続いて、旅団の作戦会議に移ります。
まずは、我らの領土の第1081、1082、1083基地の取り扱いです。
第1081と1082基地の運営は第1軍団に当面、依属します。
第1083基地は第2軍団に依属することになりました。
ここに第32師団が入ってきます。
その部隊が我々のこれからの活動の支援をしてくれます。
実際は以前と同様に1個連隊が常駐し、10日ほどで別の連隊に交代します。
第2軍団が昨日解放した社は第23基地と仮称することのことです。
これまでのベースキャンプは第21基地、最前線基地は、もう最前線じゃないけどね、
第22基地と仮称します。
第1083基地と第23基地からそれぞれ前方に探索を行い、魔族の社を発見した場合には旅団と第2軍団で協力して戦闘と社の解放を目指します。
ここまではいいかしら。」
難しい話ではないので、みんな理解できたのか、特に質問は出なかった。
「理解したようね。
次に旅団のこれからの作戦概要について報告します。
基本的に次の社の解放を目指します。
そのためにはここを解放したと同じようにまずは探索をします。
仮想エリアを10に分け、2エリアづつ探索します。
10エリアの探索の結果、社が見つからない場合はさらに先の地域を10のエリアナ分けて同様に探索を行います。
10エリアを1週間で探索します。
探索は基本午後に行い、2チーム編成で毎日交代します。土日は休みね。
うちの旅団はブラックではないことを第2軍団に見せつけ、転籍希望をたきつけ、来年の人事異動では人員の増強を目指しています。
探索部隊の編成ですが、この前と同じでいいかしら。
A部隊が第1小隊と第2小隊、それにおまけはチーム。リーダーは私です。
おまけはは第1小隊の指揮下で動いてください。
B部隊は第3小隊と龍宮チーム。
リーダーはタイさんでお願いね。
それでは準備を整えて、A部隊が今日の午後にエリア1と2を探索します。
B部隊は午後は連携訓練をお願いします。
講師は第321連隊の教育担当官を呼んであります。いじめないであげてね。
何か質問は・・・・
ないようね。
それでは解散します。各自、準備をしてね。
まだ、寝床がない人は乙姫最高司祭にお願いして作ってもらってくれる。
乙姫さん、お願いね。」
「わかりました。男共の3段本棚ベッド倉庫をとりあえず、4段にしておきます。」
「えっ、一人分多いんじゃないですか。」
「教会本山からここに仕事に来て、泊るところがないアホに貸して宿賃を吹っ掛けるんです。」
えっ、男4段極狭本棚ベッド倉庫+熊さんの地獄の1丁目いびき攻撃付き部屋に他人を泊めて、金まで取るの。
あくど過ぎる。
「それだったら、離れを作って、男4段極狭本棚ベッド倉庫を横に一列に並べたらどうかしら。
100人ぐらい泊れるようにすれば、面白いかもね。
その中に高リストランクの男が引っかかったら、狩りやすいしね。
それは裏の目的として、ここもいろいろ人の出入りが激しくなるから、外でテント野宿よりはましだから需要は望めるわね。
乙姫さん、とりあえず作ってみてくれないかなぁ。」
「わかりました。早速、取り掛かります。
ところで、この男たちを飼う構築物の建設ですが、旅団の業務としは違いますよね。
と言うことは、この構築物に発生する利権の内、私の取り分はどうなりますか。中隊長殿。」
「う~ん、一泊3000バートとして。
その内、旅団の取り分が半分の1500バート、乙姫さんの取り分は宿泊料の1/10、300バートでどうかしら。
その残りで、第32師団に施設維持と掃除、食事、まぁキャンプ飯だけどね、の対応を持ち掛けてみるわ。」
「施設維持をしなくても良くて、一人300バートの取り分ですか割りにいいですね。
今日の午後の訓練を施設増設に当てて、今日中に男飼い殺し構造物を建設してご覧に入れます。」
「うふふふ。頑張ってね。」
「まっかせなさ~ぃ。」
"魔族の社の解放じゃなく、ビジホの経営を始めちゃったよこの人たち。"
"しかもビジホに失礼な宿泊施設ね。
ペット以下の扱いになるわよ。この本棚での寝起きは。
もう、ビジホに土下座して。
私は個室を用意してもらったから、シュウはいつでも私の部屋で寝泊まりしてもいいのよ。
いえ、夫婦なんだから、枕だけ持って今すぐにいらっしゃい。
妻からの命令です。"
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。
次回から新章が始まります。