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7話目 離れません、放しません、絶対に

「当り前じゃないの。私の目の前でシュウをあれだけバカにされて。

それを許せというの。あなた方は。


私から皆に問うわ。

こんな人類をこの世界に残して、どうしたいの。


私にはそれぐらい腐っていると思うわ。

もちろん私も含めてね。」


「エリナは腐っていないと思うよ。」


「いえ、元々の元凶は私なのよ。


ビオラさんの巨乳攻撃に焦った私が変な計略を用いてシュウと強引に結婚式を挙げたから。

変な小細工を使わなかったら、こんなことにはならなかった。


私にとって大事な人を焦って独り占めしようとしなかったら、こんなことにはならなかった。


でも、時は戻らない。

人に一度芽生えた気持ちはもう打ち消すことはできない。


シュウに対する私の深愛も。

ビオラさんへの対抗意識も。

そして、人々に刻まれた私たち夫婦への蔑みも。


これまでいつもいつも、そして、今も私はシュウに守られてきた。


今度は私が盾になってシュウを守る番。

取り返しのつかない現実から、人のあざけりや蔑みから。


力不足の私にはそんな悪意から常にシュウを完璧に守ることはできない。

できなければ、できるようにするだけ。


人類からの隔絶。

それで十分。シュウを独占したいがための言い訳と言われても平気。


シュウがいれば。シュウが嫌でなければ。


そして、どうしても二人だけの孤独に耐えられなかったら、どうしてもこの世が許せなかったら、シュウの許しをもらって、この世界の時の流れを雷神様に託すわ。」


"エリナそこまでじゃ。

ここにいる全員が輪廻の会合に集いし者どもではないのだぞ。


その部外者にこの世界の秘密を明かすことは輪廻の会合や運命の会合に影響を及ぼすだけなく、それを聞いてしまったものの運命を狂わすのじゃ。


それは避けてほしいのじゃ。


まして、雷神の能力のことは同じアーティファクトの中でも最も秘匿しなければならない事項だぞ。


輪廻の会合に集いし者どもでも知って良いのは3人だけなのじゃ。

それも禁忌の能力として、知っておかなければならぬのじゃ。"


"私はもうこんな人類やこの世の中を壊したいと思うようになりました。

雷神様の能力を使えばこの世をリセットできるんでしょ。

だったら、今、使ってしまいたい。


シュウが生き難い世の中なんて、なくなってほしいし、なくなってもいい。"


"それでも俺は、今のエリナとこの世界で一緒に居たい。


俺たちは輪廻の会合に集いし者どもかもしれないからこの世を壊してもまたどこかで出会うかもしれない。


そんないつになるかわからない時の彼方までは待てない。


俺が欲しいのは君のしぐさ、君の笑顔、君の唇、君の俺を思う心、エリナの今のすべてだ。


それは捨てられない。


他は捨ててもいい。

仲間、家族、この聖戦士としての能力。

すべてなくなってもいい。


でも、君だけはどなことがあっても、今の君だけは失いたくない。


だから、この雷神様の極魔法は使わない。


例え、エリナにどんなにお願いされても使わせない。

使う前に絶対熔かしてやる。"


「ひぇ~、やめてくれ~ぇ。


今、マジだろ、シュウ、マジで熔かそうと思ったろ。


エリナ~ぁ、なぁ、世の中のリセットなんてやめようぜ。

なっ。大好きなシュウともお別れだぜ。


リセットということは輪廻の会合に集いし者どものとしての資格も剥奪されるはずだぜ。

そしたら、未来永劫、シュウとは絶対出会えない。

おそらく偶然の出会いももうあり得ない。


輪廻の会合に集いし者どもだからこそ、未来でもシュウとの出会いがほぼ約束されていると思うぞ。


いいのか、俺を使った瞬間、お前とシュウは永遠のお別れだ。

いやだろそんなの。


なっ、なっ、いやだろ、エリナ。

俺は嫌だぞ、皆と二度と会えないのは。」


"それは本当なのアクア様? "


"儂はノームじゃ。あんなちんちくりんと一緒にされるのは心外なのじゃ。


こりゃ、雷神。

今のエリナの発言分だけ時を巻き戻せ。早く。"


「無理。


そのわずかな時間の巻き戻しでさえ、全ての理を整理するのは無理。

やってもいいがこの世が終わるぞ。


いいのか、シュウ、エリナ。

二度と会えなくなっても。」


"ノーム様、雷神の能力は使いません。誰にも使わせません。


俺の大切なエリナとは絶対離れません。

大好きなエリナを絶対放しません。"


"シュウ、ありがとう。そして、ごめん。


私も決して旦那様から離れません、そして放しません、決して。"


"そうか、そうか。うらやましいことじゃ。


そんな、熱い熱い二人に儂からの贈り物を送ろうかのう。

また、ちんちくりんと間違われるのは本当に、マジで心外だでの。


今から特別な祠をそこの儂の転移魔方陣に送る。それを今の祠の横に置くのじゃ。


それは教会本山の礼拝堂の地下にある儂のいる部屋の転移魔方陣とを繋ぐための特別な転移魔法陣の発動媒体じゃ。


まぁ、ちょっと気分転換のつもりでこれから遊びに来い。

おいしいケーキも準備するでな。"


「お~い、ソニアちゃん、聞こえるか。」


"あっ、ノームちゃん。聞こえているよ。


今、大変なの。

お兄ちゃんとお姉ちゃんがどっか二人だけで行っちゃうとか、雷神様の能力を使うとかなんとか。


雷神様って誰? "


「雷神のことは知らない方がお前のためじゃ。

良い子は儂の言うことを聞くのじゃ。」


"は~い。ところで、ノームちゃん突然連絡してきてどうしたの? "


「今から儂の特別な祠をそこの転移魔方陣に送る。

誰にも気づかれずに、その祠を今ある祠の後ろに隠すのじゃ。」


"いいけど、それでどうなるの。"


「シュウとエリナだけが直接、教会本山の礼拝堂の儂の部屋に転移してこれるようになる。」


"それいいなぁ、私も使いたい。"


「うふふふっ、悪いがそれは無理じゃ。


今、これを使える資格を持っているのはシュウとエリナだけじゃな。

ソニアちゃんも、もっともっと修行をすれば使えるようになるかもな。」


"げ~ぇっ、190年も修行してきてまだ足りないの。"


「何を言うとるのじゃ、最近、ここ20年ぐらいは人生を楽しまなきゃ損だと抜かして、甘いものばかり食べているだけじゃの。


まだまだ、修行が必要じゃ。」


"ぶ~っ。わかったわよ、もっと頑張るよ。"


「いい子じゃ。それでは祠の件を頼んだぞ。


それともう一つ頼みなんじゃが、シュウとエリナがここに転移した後にソニアちゃんもこっそり、ここに来るのじゃ。


例のケーキ屋さんで新作の秋のマロンのスィーツを買ってきてくれ。

皆でお茶にしようかの。」


"わかったよ。


そうすれば、お兄ちゃんとお姉ちゃんもとりあえずはどこかに消えたりしないもんね。


私はここから通常の転移で行くからね。待っててね、みんな。"


「さて、まずは祠を。


シュウよ、皆の注意をお前に集めのじゃ。

そのスキにソニアちゃんはブツの設置を頼むぞ。

呪文はいらないから。


あと、設置する前に祠の形をちらっと確認するのだぞ、シュウ、エリナ。

さすればこの転移魔法陣でその形を思い浮かべればこちらに転移されてくるはずじゃ。


ここに戻るときも同じじゃ。

シュウ、それ、何かしろ。」


"突然、なんかしろと言われても。"


"私の旦那様なら大丈夫です。思いつかないなら、キッスしましょう。

熱い熱い抱擁付きで。ねっ、ねっ。そうしましょう。


もちろぽっべじゃないですよ。

く・ち・び・るに。さっ、さっ。"


「俺、エリナが大好きだ~ぁ。」

「私もよ、シュウ。」

ガバッと抱き着くふたり。


そして、キッスしようとしたが・・・・・、雰囲気だけ終わった。

だって、キッスしたら祠が確認できないじゃん。


まぁ、エリナの二つのおっきくなったふくらみは十分に堪能したから良しとしよう。

エリナちゃん、また、成長したねぇぇぇ。


突然、抱き合う二人にギョッとなって、ここにいるみんなの視線を独り占めに成功したぞ。


「祠、いっきま~ぁす。それ。」


ほんの僅か転移魔方陣が光った。そこには手のひらに乗るぐらいの小さな祠が乗っていた。

ちゃんと形は確認したぞ。


ソニアはこっそり、転移魔方陣に近づき、ブツを回収した。

そして、何気にその小さな祠を設置してあった祠の後ろにそっと隠した。


よし、ミッションコンプリート。


ソニア、サムズアップ。


よくやった。

と、思ったが、ソニアが目を見開いてこっちを指さし真っ赤になっている。


「なにを待たせているの、こうするのよ、この甲斐性なしが。」

俺の唇が、エリナの唇で完璧にふさがれてしまいました。


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