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6話目 許さない、許せない

ガス脳、俺の頭はすっからかん。

まじか。

否定はできないが。


「てめぇら。何言ってんだボケ。私の旦那様を馬鹿にすることは決して許さない。


お前ら知っているだろ。

このまま、魔族をのさばらしておいたらいずれ私たち人類の住むところがなくなるんだよ。

それを少しでも押し戻したのは誰だ。


そこハゲか。


シュウが真剣に社を解放しようとして言葉を紡いだことを馬鹿にしたお前か。


その時、お前は何をやっていた。


シュウが仲間を逃がすために一人で魔族一個師団の前に立ちふさがり、しかも相手は魔将の一人だぞ、戦っていたのをお前は知らないだろう。


お前はその時何をやっていた。


シュウが一人自分を犠牲に私を生き延びさせようとしたときに、お前は何をしていた。


言ってみろ。


のうのうと安全なところで人生の快楽をむさぼりやがって。


その後も俺たち最前線にいる魔法術士が、聖戦士が命を張っているときにお前たちは何していた。


門前町で芝居を見て、家でぬくぬくしながら記憶玉を見て馬鹿笑いしてたんじゃねぇのか。


シュウの命を吸い取りやがっって。


お前らは寄生虫だろ。


いや、虫の何て上等なもんじゃねぇ。


生ゴミだ。お前らは生ごみだ。腐りきった人類の生ゴミだ。


私が埋めて土に返してやろうか。」


「エリナ、もういいよ。ありがとう。

生ごみに怒ってもしょうがないよ。」


「ても、シュウ、私は悔しい。


旦那様が何度も死にそうな目にあって、この生ごみの安全を守っただけという、腐った事実が。


こんな生ごみのためにシュウの命を削ったということに私は我慢ならない。」


「エリナ、もういいよ。ほんとありがとう。


俺は間違っていたのかもしれない。人類を救おうとして、聖戦士になろうとしていたことが。


そのことが、結果として、俺の大事なエリナを傷つけたなんて。


許せない。おれは許さない。」


「シュウ、どうしようか。」


「戻ろう。

ここに俺たちは必要ないらしい。


必要としてくれる、いや、いても喜んでくれるところに。

人類からは二度と俺たちに接触できない場所に。」


「ちんちくりんの元に戻りましょ。」

「そうだね。芦高さんも連れて行こ。」

「家族だもんね。」


「やっと、真の家族が見えたよ。」

「その意味では。ここに捨ててあった生ごみに感謝だな。」


「今、この魔力溜を一杯にしたよ。さっ、帰ろ。」

「そうしましょう。そして。第1083基地の祠を破壊しましょう。

魔族がすぐにでも転移できるように。

二度と人類が泉の転移魔方陣に接触できないように。」


「さっ、もういいよ。転移しよう。」

「はい、旦那様。」


そして、人類への絶望という十字架と共に、俺たちは一時間もしないうちに第1083基地に戻ってきた。


「あれ、もうデートはおしまい? 」リンカ


「リンカさん、悪いけど死神さんと特攻隊長を呼んできてくれないかな。」


「どうしたの。」


「いいから、理由は聞かないで、そうしないと俺たちの怒りが、人類への怒りがすべて旅団に向くよ。


人類には絶望しても、旅団の皆には別と考えたいんだ。早くして。

お別れを言うよ。


いまから、祠を破壊する。

そして、魔族の炎を社にすぐに灯せるようにする。」


「ちょっと待ってよ。

ほんの30分、教会本山に行ってて何があったの。」リンカ


「旅団のみんなは教会本山や門前町でどうなっているか知っていたね。」


「えっ、それは。

知ってしまったのね。」


「俺はうぬぼれていた。自分のやったことに。それは間違いない。」


「でも、それは」


「こんな人類のために俺は魔族を何百も魔物を何千も殺してしまった。


こんな人類が生き残るよりも必死に自分たちの滅亡を回避しようとしている魔族の方が何倍も尊い。


もう、人類は破滅すべきかもね。

あっ、いいや。

特攻隊長をもう呼んでこなくてもかまわないよ。


今すぐ、祠を破壊する。

エリナ、サンダーキャノンを。」


「それ。

思いっきりやって。

二度祠を設置できないほど祭壇ごと破壊して。」


「リンカさん、最後の忠告だ。

離れて、外に出て行って。」


「シュウ、待て。

祠を破壊することはダメだ。というより、やめておけ。」


「特攻隊長」


「お前たちがここでこれまだやってきた意義や人々に対する思いやりと、一般の人がお前達に対する思いが全く一致していないのは分かったな。


戦う意義を理解していない一般人からの思いに反発してこの祠を破壊しては、先日までにこの社の争奪で戦っていた軍人や魔族、魔物に対して、特に死んでしまった者たちの戦った意味までを破壊してしまうことになりはしないか。」


「しかし、教会本山でシュウをバカにした人々はそれこそ、社をかけて戦った者たちの思いを全く無視して、己の快楽のみを追求しているとしか思えないわ。」


「そいつらが許せないのか。」


「私はそんな奴らのために命を懸けて、命の盾となって戦っているシュウを下らない理由でバカにするのが許せない。」


「シュウは何が許せない。」


「俺は、俺とエリナの結婚式を、形は確かに笑い話だったかもしれないが、俺とエリナの結婚をバカにされたみたいで。

エリナのこともバカにされているみたいで、それが許せない。」


「じゃ、破壊する場所は違うんじゃないか。」


「「・・・・」」


「まぁ聞け、聞くだけでいい。

ここにいる独立旅団、第1、2軍団の皆はお前たちの結婚式の経緯もすべて知っている。


結婚に対するやっかみはあっても、お前たちのことを悪く思っている奴はいないな。


もう一度言うと、若いお前たちが結婚したことに対するやっかみは大いにあるぞ。


何ならもう一回、もがもがもが」口を死神さん黒フードで押さえられた特攻隊長


「私も結婚に対するやっかみはあるけど、3回も言わないわ。」


「「「「「やっぱあるんだ。」」」」」


「やっかみはシュウたち個人に対するものではないわ。

ここで戦っている全員がそう。


ここにいる人たちはそれぞれに戦う意味を持って、魔族との戦いに臨んでいるわ。

その戦いの中であなたたちに守られ、勝利をもたらしてくれたことを皆は感謝しているわ。


教会本山でもいたんじゃないのかなぁ。そんな風に思って、教会本山にあなたたちがいることの危うさを心配してくれる人が。」


「「確かに、ちょっと引いていたけど。さりげなく。」」


「ねぇ、シュウ、エリナ。


あなたたちがここで戦う意味って、戦ってきた意味って何んでしょうか。理由でも目的でもいいのよ。


私の戦う目的ねぇ。私は戦う男たちをランク付けし、解剖することよ。

元特攻隊長は? 」


「強くていい男を探すこと。テントだったら襲いやすいし。

戦う意味って言うより、ここにいる理由かなぁ。」


騒ぎを聞きつけた第1軍団の男共がなぜか縮み上げっている。


「人類のためとか、軍で出世するためとかじゃないんですか。隊長たちは。」リンカ


「「軍で出世したら好きな相手を食べて良いなら頑張るわ。」ぞ」


「シュウ君が命がけで戦う目的って何なの?


エリナはいつも胸を張って堂々と言っているからいまさら言わなくていいわ。」リンカ


「俺は人類の生存領域を広げ、人々が幸せに暮らせる領域を増やすことを目的としていたけれど。


今はまず、エリナが笑って暮らせるようにすることが第一で、その次にみんなが笑って暮らせるような世界をつくることかな。


そのためには一度、魔族有利な状況を覆したく思っている。」


「そうか。じゃ、話を戻そうな。


なんでこの祠を破壊する必要があるんだ? シュウ。」やっかみ地獄をちょっと引きずっている特攻隊長


「エリナが俺のために怒っていたから。

祠を設置した結果に怒っていたから。

それだけで俺はすべてを破壊してもいい。


他人から見たら意味のないことかもしれないが、俺からしたらそれがすべてと言ってもいい。


兄弟からさえ見捨てられている俺のためにエリナは持っているすべてを捨ててでも俺のために怒り、俺と一緒にいてくれるという。


そのエリナが破壊してしまおうというものを破壊するのは俺にとっては意義のあることだ。」


「それはそうだな。


でもなぁ、さっきも言ったが、お前を認めて、心配してくれる人はここにはいっぱいいるぞ。


エリナには遠く及ばないかもしれないが、俺はやっかみながらもシュウとエリナのことが心配だぞ。

旅団の皆は特にそうだ。」


「そんな皆は社を魔族から解放したいと思って戦っているぞ。


腹が立ったら、祠を破壊するのはいい。でも、祭壇を破壊するのは止めてほしい。


俺たちの欲かもしれんが、祭壇まで破壊されたら、俺たちの先に戦いで死んでいった者たちに申し訳が立たん。


あとはな、せっかく設置した祠を破壊したらここにいる皆とは二度と同じ関係でいられなくなる。

表面上はそのままでもな。


俺たちとの関係までも壊してお前たちがどへ行こうとしているのかは知らないが、2人で生きていくのか。

俺たちの知らないところで。


まぁ、芦高はついていくだろうがな。


なんか寂しいな。


俺としては、ここにこのままいてほしいな。」


「私も、中隊長や後見役としてではなく、友達に去られるのは嫌だな。

できればとどまってほしいわ。」


「お兄ちゃん、私も。行くのなら私も連れてって。

でも、できればみんなでここに居たい。」


「「「「「「「私たちもそうだ。」」」」」」まとめて職校組


「シュウよ。良かったな。

こんなに心配して、引き留めてくれる人がいてな。」熊師匠


「エリナどうしようか? 」


「私は、許さない。あなた方がどう言おうと、シュウを盾にのうのうと生きている人が許せないわ。」


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