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10話目 光が闇を照らす朝

周りはかなり暗くなってきた。

少人数で秘かに行動するには丁度よいかもしれない。


俺たちは芦高さんの背中に着けた小さなランプを目印に進んだ。

それと風属性魔法術士たちが進む方向と周りの状況の確認をしてくれていた。


晴れていて、月明かりが出ていたのも幸いして約10kmの行軍を3時間で進むことができた。


ここはもう第2軍団の最前線だそうだ。


エリナが探索策魔法で最前線の様子を伺う。

「我々から見て前方に人類、第2軍団ですかね、だいたい3個師団ですね。

左手に魔族軍、これもだいたい2個師団ですね。

かなりの兵力があそこに集結しています。」


「エリナ、敵までの距離とどのくらいの範囲に分散しているかわかるか。」


「はい。敵は2個の塊に分かれています。

それぞれ1km四方の中に入っています。

2つの魔族軍の間はだいたい1kmは離れているようですね。」


「よし、芦高はエリナに雷属性魔法を転写してもらい、第1小隊+オマケはボルガチームと一緒に手前の敵師団を狩る。


我々は敵の500mまで接近し、芦高は持っている魔力の2/3を使って、雷属性フィールドを敵師団全体を覆うように発動。

発動のタイミングはシュウが同魔法の発動を合図とする。

発動後は一気に3km戻る。


第3小隊+龍宮チームも奥の魔族師団に1000mまで接近し、直ちに、シュウが魔力の1/3を使用して敵師団全体を覆うような範囲で雷属性フィールドを発動し、発動後はすぐに後退。

我々と合流しろ。


第2軍団の3個師団は我々の攻撃を合図に、漏れた魔族や何とか生き延びた魔族に対処してくれることになっている。


今回の作戦行動は敵の殲滅にあらず、奇襲という第2軍団のお手伝いなので、絶対に深追いはするな。

雷属性フィールドの展開後はすぐに戻れ。


風魔法術士は常に検知魔法を発動し、進行方向に敵がいないかを探れ。

残りの者は警戒と防衛準備、敵別動隊の殲滅だ。


それでは20分後に作戦を開始する。

それまでは休憩だ。以上。」


「一時的に別々の行動になるけど、がんばってくれよ。芦高さん。」

俺は芦高さんの足を軽くたたきながら諭すように言う。


「きゅぴぴ。ぴぴぴきゅぴぴひ。」

「ご主人様こそ、無理しないでね。今日はいまいち不調のようだし、心配だってよ。

まったく、大クモにまで心配かけやがって。なってないぞ。」


皆に活を入れてもらって、ようやく目が覚めた気分だよ。

基本と指示を忘れずに、目の前のことに集中するよ。


「いいぞ。ふっ切れたようだな。それでこそ俺のシュウだ。」

「あなたのではありません。奥様の旦那様です。身に着けていただいてるからと言って勘違いも甚だしい。」

「たまにはいいじゃねぇか。奥さん気分を味わってもよう。」

「「いいわけないでしょ。」」メイドさんとおばちゃん


生き死にを掛けた戦争前だってのに、相変わらずだなぁ、うちの憑依ズは。

まぁ、これで肩から緊張も取れたからいいか。

さぁ、やるぞ。


「では、エリナ。2人に雷魔法属とスピードアップ、烈風、アイスシールドを頼む。」

「了解です。それ、それ。」


「それでは作戦を開始する。まずはシュウたちが先行してくれ。指定の場所までは1500mだ。20分で到達してくれ。

我々は5分後に出発し、待機する。

それでは作戦を開始する。武運を。」


死神さんの合図で作戦は開始された。

俺たちはエリナの誘導で指定の位置を目指した。


ここも下草が腰のあたりまであり、低い木々がまばらな状況はこれまだ戦ってきた最前線と同じような環境であった。

俺たちは風魔法術士たちの誘導と月明かりだけを頼りに、目的の位置を目指して進んだ。


カメさんは敵の偵察部隊や別動隊の接近を警戒中。

この作戦では俺たちの後方に敵を回り込ませてはいけない。

魔法発動後に、さっと撤退する必要があるためだ。


タイさんは二人の風属性魔法術士からの情報と指示を照らし合わせて、作戦の進行度合いを確認中。


乙姫さんはすぐに防御魔法を発動できるように、我々全体の様子を見ているところだった。


おれは今後の戦闘についてのイメージを再度検証をしていた。


1000m先に1000m四方の雷属性フィールドを張り巡らせる、魔力は1/3でと。

魔力がまだ全快していなかったので、今度雷フィールドを発動すると残りの魔力は半分と。

さっきのように炎魔法で反撃された場合は魔力1/4を使ってアイスフィールドを展開してっと。これで魔力は残り1/4に。

敵師団殲滅規模の大魔法はあと1回が限度と。


「ここが指定の地点ね。

さっ、シュウ君お願いするわ。

雷属性フィールド発動。目標、奥側の魔族師団。」


俺は雷属性フィールドを発動し、事前にエリナから聞いていた敵の範囲に展開していく。

それに僅かに遅れて俺たちの後ろでも雷属性フィールドが発動したのをその放電からくる空を光で染めた様子から感じていた。


雷属性フィールドの拡大とともに放電により周りの明るさが増し、光の筋が横に走るとともにドーンッ、ドーンッという音があらこちらで響く。

雷が横に無数に走ったのだ。


雷に打たれた魔族の叫び声や悲鳴は聞こえない、一度発生した雷は金属を伝わり続けるときに無数に枝分かれする。

それとは別に放電由来の雷も新たに発生する。

そのたびにドーンッと言う地響きがするような音か発生するのだから、それ以外の音が聞こえるわけがない。


その上、俺たちはエリナの風属性魔法によりそのような音はできるだけ低く、うるさすぎてもはや遮断しきれないのだが、押さえられていることも雷以外の音が聞こえない理由となっていた。


俺の雷属性フィールドはもはや地獄そのものを演出しているかのように第2軍内では言われているようだ。

改めて自分の所業をいま見ているが、自分でやっといてなんだが、ちょっとブルとくるものがあった。


タイさんが身振りで、後方を指し、撤退を促す。

そうだ、光の舞、地獄の舞に見惚れている場合ではない。

早急に撤退するのが指示だった。


俺たちは、カメさんの誘導の下に後方に撤退を始めた。


雷属性フィールドにはもはや魔力を注入していないにもかかわらず、発生した雷が金属を求めてうねり歩き、一向に光の舞が終息する気配はなかった。

その永遠とも思われる爆音と雷の光の舞、地獄の舞から逃れるように、俺たちは撤退を継続した。


そんな光と音の地獄の舞も徐々に終焉が近づき、芦高さんが発動したエリアの方が先に静かな暗い空間へと戻って行った。

その場所には雷で焼けた木々と大きな無数の穴、魔物と魔族の遺品である魔石だけが残されていた。


俺の方はまだ光っていたので、その光の下に撤退を急いだ。

約4kmを30分かけて駆け足で後退してきた。

俺とエリナ、カメさんはスピードアップがあるので比較的楽に移動できたが、その風魔法の恩恵に預かれない、タイさんと乙姫さんは自力で走らなければならず、目標の集合場所に着いた頃には二人ともへとへとになつていいた。


集合場所には、第1小隊とおまけはチーム、芦高さんが集まって、休憩をとっていた。


「みんな無事か。」死神中隊長

「こちらは全員無事です、はーぁっ、はーぁっ。

そちらはどうですか。はーぁっ、はーぁっ。」

「こちらも問題ない。作戦も成功だ。」

「まずは休憩してくれ。見張り番はおまけはチームに頼んでいる。」


さすがに徹夜のお仕事の最後の業務が4kmのマラソンで息切れしているタイさん。

「疲労回復をするわね。」

優しい魔法をかける乙姫さん。

後で請求書が来るんではないかと思って、俺なら断っちゃいそう。

エリナがいますからって。


「シュウは疲れていない? 」顔を覗いて、優しく話しかけるエリナ。

「俺は大丈夫だよ。エリナはどう? 」

「若いから徹夜の一晩や二晩、疲労回復を掛ければ問題なし。」

びくっとした効果音があそこで相談しているアラサーコンビから聞こえてくるような気がした。


「きゅぴぴ、きゅび。」

「ご主人様と奥様が無事でよかったって、喜んでいるよ」


芦高さんも何ともない?

「きゆぴぴぴ。ぴゅきき。」

「何ともないよ。お仕事も頑張ったし。」


偉いぞ、芦高さん。

「ぴぴぴきゅび。ぴびひきゅきゅきゅ。」

「今回の戦闘で生き延びた魔族は回収するのかって聞いているぞ。」


今回は第2軍団が探して止めを刺すだろうから駄目かもね。

ほんとはできるなら命を無駄にしたくないけど。

俺たちの戦闘後の魔族回収は極秘だからな。


悔しいが、この段階で軍にばれてしまうと二度と戦場で魔族を回収できないように監視が付くだろうし、せっかく好条件で得た例の命令書も破棄されてしまうかもしれない。


そうなると俺たちの極秘活動がそこで止まってしまう。

それは避けなければならないので、今回は悔しいけど我慢しようか。


「きゅぴぴ、ぴぴぴぴきゅぴぴ、ぴぴ。」

「わかったよ。魔族も魔物も人も傷ついたものが居たら何も考えずとも救いの手を延べられる世の中になると良いね。だって。


芦高泣かせる話だな~ぁ。偉いぞ。魔物のくせに、よくぞそこまで考えられるようになって。

俺はお前を誇りに思うぞって、きっとシュウは言うに違いない。」


その通りだけどうるさいさんになんかイラっと来た。

「じょ、じょ、冗談だよ。シュウがそんな細かいところに気が付くはずがないか。」


今のはかなり、イラっと来た、溶鉱炉があったら指にはめてあるやつを思いっきり叩き付けたくなって来るた。

「どっひゃ~っ。俺を熔かそうというのか。

シュウ、マジごめん。よけいなことは二度と言わないので許してくださいな。ねっ、ねっ。」


先は長いな。人が魔族を、魔族が人を助ける世の中か。


そして。

朝だ。闇が光にとって代わられてきた。

朝焼けで世界が明るくなるように、人と魔族の関係にも光が射す日が来てほしいと願うのであった。


活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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