6話目 探索2日目 こんなに大きく育っちゃったら苦しいです
次の日。
今日も探索だ。
朝、午前と午後の探索チームを入れ替えてくれないかと、死神中隊長に提案してみたが理由を聞かれてしまった。
まぁ、当然だなぁ。
隣にあのお方さえいなければ。本当のことを言えたのに。あのお方さえいなければね。
いたから言えなかったけど。
その特攻隊長は優しく、ソニア様が朝ゆっくり寝ていられるように交代するのかとお聞きになってきた。
しか~し、まさかあなたとリンダさんのなぜか料理に対してはガサツな火力になってしまうので、タイさんとエリナを午前中にして、夕方のメインのおかずを一品追加したいなんて。
言えね~ぇ、絶対に言えね~ぇよう。
だいたいこれだけの説明じゃ何のことかわからんし。
言ったら磔、火あぶり一直線だ。
ガサツと女子としてはちょっとねと言うような類の発言はあのお方の前では禁句であることを俺はこの身に刷り込まれていた。
俺は瞬時にこの説得は無理と悟って、午後ちょっと昼寝がしたいからですとしたくもない昼寝を理由にしてしまった。
当然、却下。
たるんでいるな、「解剖するぞ」と例の鎌を首にあてられてしまった。
ちょっ、ちょっと血がにじんだんですけど。
その血をすかさず採取しようとするとはさすがだ、ここに来ても研究のことは忘れないのね。
と、俺はアラサーコンビの厚い壁、絶壁に阻まれて退散してきたわけだ。
しかし、俺を責めるものはいなかった。
いたら、お前が行って説得して来いと絶対に絶叫してたね。
ということで、昨日と同じメンバーで探索することになったわけだ。
俺たち午後の探索隊は、午前中は第21師団の新人教育係より職校の講義と軽く訓練を受けた。
その後に、幹部用の宿舎に引っ越しをした。荷物があまりのないのですぐ終わったけど。
途中、こちらを睨んでいるおじさんたちが多数。
ごめんなさい。
そんなに睨まないで。
俺たちも死神中隊長の指示で仕方なく、ほんとしぶしぶの引っ越しです。
でも、俺たちの使っていた宿舎もかなり上等な部類だと思いますよ。
ねっ、ねっ。納得してくださいよ
そして新しい宿舎で昼食を済まして、午前中の探索隊が帰ってくるのを待った。
疲れた様子で午前組が返ってきた。
予想通りというか、やっぱり探索の収穫はなかったのことだ。
「さぁ、行きましようか。今日は仮想エリア4からね。元気を出していきましょう。」
「「「「ぉ~ぅ。」」」」
タイさんの空元気が最前線にむなしくこだました。
ここはシュリさんとリンカさんに期待しよう。何とかしてくれるかもしれない。
あまり火力の細かい制御のいらない豚の丸焼きとか。無理か。
重たい空気を背負って、俺たちは出発した。
俺たちの士気を上げていたのが、エリナとタイさんのキャンプ飯だけじゃ味気ないからちょっと付け足しの一品をどうぞだったとは。
俺はキャンプ飯だけじゃ味気ないからちょっと付け足しの一品をどうぞの重みを改めて感じていた。
何となく出発時に包んでいた重たい空気はそのまま去らず、仮想エリア4の一番先端まで来てしまった。
相変わらず、目的としている魔族の部隊と魔族の社は見つからなかったのが救いだ。
この何となく重たい雰囲気で戦闘に入ってしまったら、確実に初手は魔族に取られてしまうだろう。
やっぱり俺はトラブル体質ではなかったんだ。
天然のトラブル体質なら仲間のこんな雰囲気の時に確実に魔族が出てくるもんな。
よかったよ、ほんとに。
そして。
「ここで、休憩にしましよう。
休憩方法は昨日と同じで。
ちゃんと水と軽食は取るようにしてね。」タイさん
俺とエリナは下草を短剣で振り払い、座る場所を確保して、休憩に入った。
「きゅび、ぴぴぴきゅび。」
「オークを数体見つけたって。捕まえに行っていいかって聞いたいるぞ」通訳さん
うーん、遠くなの?
「きゅぴぴ。」
「ここから300mぐらい先の丘の向こう側だって。」
行っていいけど、ぐるぐる巻きで持って帰ってきてね。
あと、それ以上の魔物や魔族が居たらすぐに帰って来てね。
「きゅぴ。」
「了解だって。」
芦高さんは俺以外に気付かれることなくこの休憩地を後にし、どこかに消えて行った。
何か前にもあったなぁ。こんな状況が。結局、それが・・・・・。
「芦高が魔族の部隊を見つけたってさ。今急いで戻ってくるって。」
場所と規模はわかるか聞いて、通訳さん
「わかった。」
「聞く前に帰ってきちゃったぞ。」
そこにはぐるぐる巻きを2個背中に括り付けた芦高さんが居た。
「きゅぴぴぴ、きゅきゅぴぴ。ぴぴぴきゅぴ。」
「ここから2km先に魔族と魔物が合わせて100以上いたって。それ以上先は闇魔法フィールドが展開してあり、全体でどの程度かわからなかったって。」
じゃぁ、闇魔法フィールドの大きさはわかるかなぁ。だいたいでいいけど。
「きききゅぴぴ、きゅぴぴ、きききゅぴぴひ。」
「あまり遠くの方はわからなかったけど前回と同じくらいの範囲に広がっていたと思うって」
ということは魔族1個師団規模か。
また、引いちまったか。
なんで俺だけ。
「なんか芦高さんが向こうを足だ指しているけど、どうしたのかしら。」エリナ
「また、魔族の師団でも見つけたんでしょ。きっと。俺と一緒だし。」
なんか不貞腐れる俺。結局、トラブル体質だったか。ちぇっ。
その時、エリナはなぜか両腕を俺の首の後ろに手をまわし、ぎゅっと締め付けてきた。
エリナ隊員、二つの膨らみに俺の顔が埋まって、息が苦しいんですけど。
あれ、エリナのってこんなに大きかったっけ。
「うふふふっ、毎日、牛乳を飲んで育てているからね。旦那様のためにね。
旦那様、例えあなたがいつも魔族軍を引っ張って来ても、大丈夫。
私と一緒なら。あと芦高さんもいるわ。
だから、冷静にここはまず無事に生き残ることを考えましょうね。
そして、無事に生き抜いたら、またこうやって抱きしめてあげるね。
その時はいくらでも拗ねて良いわよ。機嫌が直るまでこうしているからね。
今は前を向いて。旦那様。」
そうだ、俺はエリナと一緒に生きていくんだった。
ここで、エリナと大事な仲間を危険から遠ざけるのが第一にすべきことだ。不貞腐れている場合できない。
「エリナもういいよ。わかったよ。終わったら、また、頼むかも。」
「いつでもどうぞ。もっと頑張って大きくしていくからね。」
マジで、窒息します。ビオラさんの時は死にかけました。
「エリナ、芦高さんが何か見つけたようだよ。ぐるぐる巻きを背中に乗せているので、オーク狩りに行ってきた途中でで何か見つけたと思うんだ。
芦高さんの指す方向を探索してみて。」
「わかったわ。
あっ、魔族と魔物の中隊を発見。うへぇ~っ。なんか後ろに黒い霧が、なんか大きそう。」
その時には休憩から離れて戻ってこない俺たちを心配した龍宮チームが俺たちの周りに集まってきていて、俺たちの探索の様子を見守っていた。
俺の拗ねたところは見られてないよな。大丈夫だよねきっと。
「ここからの距離はどう。」
「ここからは2~3kmぐらいかな。でも大きいわよ。1個師団はあるかもね。」
「動いている?」
「見えている前衛部隊は動いているようだけど、まぁ、この規模なら偵察だわね。
その後ろの黒霧は規模が大きくて動きまでは見えないわね。」
「エリナさん、師団規模の魔族が仮想エリア4の先2~3kmに駐留しているということでいいのかしら。」タイさん指揮官
「その通りです。」
「僕も偵察部隊と思われる中隊規模を2個見つけたよ。
こちらに来る様子がないので、今のところこちらには気付いていないと思うな。」カメさん
「カメさんは中隊長に報告して、今後の指示を仰いでくれる。
エリナは引き続き、相手の偵察。
乙姫さんは、いつでも土砂防御壁を作れるように準備して、場所はここから50m先、長さ100m、高さ2mのつもりでいてね。
シュウと芦高さんは、まずは休憩していていいわよ。ただし、即、臨戦態勢に戻れるようにね。」
「「「「了解です。」」」」 「きゅび。」
活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。
お話に興味がある方はお読みくださいね。