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5話目 探索1日目 火力に問題あり

「さぁっ、行きましょうか。」タイさん

ここの社は解放したばかりで、社の周りしか安全と思われる場所はなかった。

そのため、初めからエリナが全方向性検知魔法を、カメさんが指向性探索魔法を発動することにしていた。


今回の作戦行動の目的は敵探索なので風魔法を持つ二人が任務の中心を担うことになっている。


タイさんはこの午後の探索隊の指揮官。

残りの乙姫さん、俺、芦高さんはとりあえず目視で敵を発見することに。


その他に乙姫さんは敵の急襲に備えて、土魔法による防御壁をいつでも発動できるように準備していた。


仮想エリア5は第1081基地と第1082基地を直線で結び、魔族側に延長した線上を中心に形成されている。

確かに一番魔族の部隊がいる可能性が高いエリアだと思う。


俺たちはだいたい100mを進む毎に足を止め、風魔法2人の検知もしくは探索の結果を待った。


相変わらずこの辺の戦闘地帯は下草が腰のあたりまで生い茂り、ところどころに低い木が生えているような、比較的見通しの良い場所である。


目視監視の俺と芦高さんは手をかざして遠くを見るより

も、魔族や魔物の通った後がないか痕跡探しを行っていた。


乙姫さんは痕跡探しのため下を向いてしまうと、敵に急襲されたときに防御魔法を発動するのが一歩遅れてしまうため、手をかざして遠くを見る目視監視を行っている。


芦高さんは俺との痕跡探しとともに、魔物特有の探索能力を有しているのでそれを使っているらしかった。

この間も敵に一番早く気付いたのは芦高さんだったし。


2時間で基地から直線で5kmほど探索を行ったが魔族の部隊や社の痕跡は何も発見できなかった。


「とりあえず、今日はここまでにしましょうか。


ここで20分休憩にします。

初めに龍宮チームが警戒に当たり、10分後に第3小隊が交代で警戒に当たってください。


おやつと水は必ず取ること。

それでは休憩にしましょう。」タイさん


エリナと俺は適当な場所の下草を短剣で払って、座る場所を作った。

そこに腰を下ろして、背中の荷物入れから水筒とビスケットを取り出し、食べ始めた。


休憩中に芦高さんにこそっと魔族や魔物の集団を感じられないか確認したところ、わずかに魔物を数体感じられただけで目的とする魔族の部隊は見つけられなかったとのことだ。


10分後、見張り番を交代し、俺とエリナ、芦高さんは警戒に当たった。

見張り番では俺はあまり役に立ってないけどね。


エリナや芦高さんが何か発見したら、龍宮チームに危険を叫んで知らせるぐらいしかできないな。


さらに10分が経過し、休憩が終了した。

次の指示をもらうために皆はタイさんの周りに集まった。


「それでは、ここに印をつけて、帰りましょうか。

半日だとここまでが限界ね。


帰りは隣の仮想エリア6を捜索しながら帰ります。

横に、第2軍団の最前線がある方向とは逆のこっちの方だけど、2km移動してから第1082基地を目指してまっすぐ帰ります。


帰り道だと思って油断しないでください。

さっき、捜索したエリアとは別のまだ未探索のエリアになりますからね。

敵が居てもおかしくありませんよ。


それじゃっ、移動を開始します。」


俺たちは荷物を持って、来た時と同じように警戒しながら、移動を開始した。


移動を開始しして30分、折り返しの部分に到達した。


「ここにも印を付けてと。あとは第1082基地に向けて出発するだけね。

休憩が必要な人はいますか。

無理はしないでくださいね。」


皆、首を横に振った。

満足げに頷くタイ指揮官。

「それでは出発しましよう。」


仮想エリア6の探索も順調に進んだ。

結局、何の兆候も発見できずに第1082基地に帰って来た。

帰りは横に2km移動した分だけ遅くなり、3時間近くかかってしまった。


基地にたどり着いた時には既にあたりは薄暗くなり、エリナの笑顔が漸く判別できる程度になっていた。


基地は第21師団の夕食のキャンプ飯を作る匂いとそれを待つ若い軍人の他愛もない話声で、ここが魔族との最前線ということも忘れてしまいそうな明るさがあった。


中隊長は解放したばかりの社の入り口の前で俺たちを待っていた。

暗くなるまで戻らなかったので、心配していたのかもしれない。


あまりにも何もなかったので、こちらから風魔法で逐次報告することもしなかったし、緊急時以外は基地側から偵察部隊に連絡を取ることは原則的に行わないことになっている。


それは作戦行動中の部隊の正確な位置がわからないことと、それよりも万が一、敵との交戦中に余計な通信を送り、通信を受け取る風魔法術士の混乱するのを避けるためでもある。


俺たちは全員で死神中隊長の元に行き、今日の報告を行った。


「仮想エリア5と6を探索しましたが、魔族及び魔族支配下の社の発見はできませんでした。

同時に魔族部隊の行軍等の痕跡も探しましたが、そのような痕跡も見当たりませんでした。」タイさん


「ご苦労だった。

午前中の我々の仮想エリア1及び2の探索でも同様に有益な発見はなかった。


明日は午前中組が仮想エリア10と9を、お前たちが仮想エリア4と3の探索を頼む。

今日はこれで解散して、夕食後はゆっくりしてくれ。」


「わかりました。失礼します。」


俺とエリナは装備品の点検を行い、行軍中で食べてしまった携帯食のビスケットを第21師団の物資補給所に取りに行って補充した。


明日の装備を整えてから、装備をそれぞれ自分の部屋に置いてきた。

明日は新しい幹部用の宿舎に移るらしいが。


エリナにクリーンをかけてもらい、2人で社に礼拝に行った。

祠のある部屋には転移魔法陣があり、今も忙しく物や人を転移したり、転移して来たりしていた。

そのため礼拝は転移作業の邪魔にならないように隣の部屋で行うように通達が出されていた。


礼拝が終わるといよいよ夕食だ。今日は偵察に行っていたのでキャンプ飯でもおいしく感じるだろうな。


キャンプ飯の配膳の列に並ぼうとしたときに、龍宮チームと卒業したいチーム+ボルガチーム、もう面倒臭いので"おまけはボルガ"チームでいいか、がやってきて俺たちの後ろに並んだ。


「お疲れさんです。皆さん。」

「「「「お疲れです。」」」」


「今日は偵察の成果がなかったけど、魔族師団との戦闘を考えるとちょっと怖いな。

何もなかったことに今日は感謝するぜ。まだ、魔族との本格的な戦闘を経験していないからな。」久々のリンダちゃん


「そういえば、おまけはボルガチームは課題で一度戦闘をしたきりでしたね。」

「その"おまけはボルガ"チームというのは何なんだ。」


「いや~ぁ、卒業したいチームなんてよりも呼びやすいと思いましいね。勝手に呼んでみました。」

「それいいかもな。俺も卒業したいチームなんてチーム名は嫌だったんだよな。響きが情けなくてな。」

「僕は別のチーム名の方がいいと思います。おまけなんて言われるのはちょっと。」


「でも、死神さんたちから見たらおまけ扱いなんでしょ。

頑張んなさいよ。正式メンバーとなることを期待されていると思うわよ。


それにしても、

おまけ、良い響きだわぁ。

おまけ。守銭奴教の教徒は一日3回は唱えないとね。


あとね、

まけてね。すごく良い響きだわぁ。

まけてね。守銭奴教の教徒は買い物に言ったらまずこれを唱えなきゃね。


まけてね、おまけは? 至言。至言だわ。

朝起きて3回、寝る前に5回は唱えないと。

うへへへへへぇ。」


何かエリナへのコンサル以来、押さえていたものが取れてしまったような。

守銭奴様、大丈夫ですか。

まけてもらう前に、怖くて何も売ってもらえないと思いますよ。


「エリナさん。今日はプラスある? 」リンカさん

「ごめんなさいね。材料は買ってあったんだけどね。任務から帰るのが遅くなったから作る暇がなくて。」


「ああっ、いいのよ。いつも作ってもらって悪いと思っていたんだからね。

明日はおまけはボルガチームで作ろうか? ねぇ、シュリ。

シュリもボルガ君に手料理を食べてほしいわよね。」


「・・・・・そうなんだけど、火力に問題があって・・・・ムリ。」

「えっ、火力って、リンダさんと特攻隊長だよね。タイさんは俺たちと探索だし。」


「・・・・・私にムリな理由を言えとおっしゃるの・・・・・・」


「いえ、わかりました。もうわかりました。

もう何も言いません。

死神中隊長に午前と午後の探索メンバーをそっくり入れ替えるように進言いたします。


第3小隊長として。みんなの胃袋を保護する必要を感じました。」


「よりによって、肝心な火力コンビがあれではね。唯一使えるのがタイさんだけなんて。うちの旅団、人材不足じゃないかしら。」


「あっ、でももう守銭奴教徒はもういらないから。恥ずかしくて門前町に買うものに行けなくなりそうだから。」

「私は守銭奴教徒ではないわよ。ただ、乙姫さんを尊敬しているだけよ。」エリナ


「「こいつも守銭奴教徒だったか」」うるさいさんとおばちゃん


他愛ない夕飯前のおしゃべりで、お前らいくつ爆弾仕込んでんだぁ。

俺は特攻隊長とリンダさんの消し炭を食べていないにもかかわらず、胃が痛いんですが。

活動報告に次回のタイトルと次回のお話のちょっとずれた紹介を記載しています。

お話に興味がある方はお読みくださいね。


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