2話 女サイド 〜始まりの日〜
私の名前はライリー。
みんな、私のことを魔人だと思っている。
自分でも「あれ、私って魔人だったっけ?今の人間だったら絶対死んでる。」なんて思う出来事とかがあるから、別に気にしていない。
本当に気にしていない。
たとえ、遠くで「アレって魔人?」なんて言われていても、魔法で拘束して洗脳なんてしないし、上級の魔法が飛んで行く事も無い。凄い関節技を決めていることも無い。意識的にはしてない。
いつの間にか、目の前で地面に頭を擦りながら謝られることはあるけど。
そんなことが、多々あるから最近は森の中に住むようにしている。
その森は地獄の森と呼ばれている。
上級の魔法を同時に3個使えるという、世界に10人もいないレベルに達している私ですら、2日に1回は死にかけるほどの森だからだ。
何と言ってもこの森は、魔物が厄介すぎる。脳が無いのに、いや無いから厄介なのか、魔法を撃ちまくる。しかも魔力が無くなるそぶりを一切見せない。極めつけは、その魔法一つ一つが中級以上の攻撃力を持っている。
魔法を相殺する為には、同じレベルの魔法を使う必要がある。その結果、魔法を当てて、逃げるの繰り返しが生きるための方法になる。
たまに街に戻ると、生きていたことに驚かれる…、訳が無い。
「地元だからね」的な感じになる。せめて、少しくらい気にかけてほしい。
騎士団の団長とかは、私に対して尋常じゃない敬意を払っている。私が無理やり(物理的に)説得したから、友達のような会話が出来るようになったため、偶にこんな事を言われる。
「そんな森に住んでたら、魔力上がりそうですね。」
「じゃあ、一緒に行くか!」
「騎士団は街を守る象徴なので遠慮します!」
…実は、魔力は全く上がらない。何故なら魔力の最大値を上げる為には、全て使い切る必要があるからだ。
地獄の森で魔力を切らしたら、普通に死ぬ。常に、魔力で周りの監視。
絶対に魔力を切らしてはいけない。=魔力が上がらない。
ヤバッ、まさか地獄の森に住むメリットがない⁉︎
今、気づいちゃった。
メリットっていったら、単に経験を積むしか無い。でも200年以上生きてる私にはそんなの必要ない。(魔法で若返りを使えば、20代をキープ出来る。)
その森には、レベル的にいうと、下位、中位、上位、特上位、最上位と全てのレベルの魔物が揃っている。
普通の動物はもちろんいない。
私がいつも食べるのは中位の魔物だ。何故なら、味と栄養価の関係からだ。
下位はとてつもなく不味いが栄養価が高い。そして上に上がって行くにつれて、美味しい代わりに栄養価が無い。
私は中位までなら余裕で勝てる。
上位はちょうどいい感じ。油断しなければ勝てる。
特上位はギリギリ勝てるか、ギリギリ逃げるか。
それ以降は無理。ダメージがはいっている感じがしない。
つまり中位がいい。というか、生きていくのにちょうど良い。
そんなある日、私は幻のキノコ『タベホウダイ』を見つけた。
そのキノコには、食べると特別な称号と共にとてつもない能力を得ることができる。
称号は食べ放題。能力はなんでも食べることができるというもの。そして、噂によると、その食べたものを魔力に変えられるらしい。
そんな夢のようなキノコにはもちろん、メリットだけでは無い。
食べて後にはメリットしかない。食べるときに、物凄い試練がいる。
なんと、今まべてきた中で一番臭いものの1億倍の臭さを発し、かつ不味さも今まで食べてきたものの中で一番不味いものの1億倍になるというもの。
しかも他人の力を使ったり、無理やり食べさせても効果が出ないのは知られている。
鮮度も重要で抜いたり、切ったりした後は1分以内に食べる必要もある。
ちなみに世界で初めて食べた人は、神話になっていて、よくその絵本も売ってある。(その際にどのような称号を得たかを言っている。)
つまりみんなそのキノコがどんな色をしているかを知っている。物凄く毒々しい感じになっているのは有名。
初めて見たときも、すぐにわかった。
食べてみたいとも思ったが、それ以上に臭さで倒れかけた。ここで食べる前に気を失ったら、この森では死ぬと思ったからやめた。
その日から数日後、何か不思議な感覚を掴んだ。
とてつもなく、凄い魔法が使われたような感じがしたものの、強者の気配は感じなかった。
気になった為、そのあたりに行ってみることにした。取り敢えず急いで行きたいから飛んで行くか。魔法を制御するより突っ込んだ方が魔力の節約になるし。
するとそこには、赤ちゃんがいた。
それ以上に……。
「タベホウダイ無くなってるじゃん‼︎」
確かに赤ん坊だと今まで食べて来たものは無いし、食べれるかも?
いや、赤ん坊が自分から食べる訳ない。
じゃあなんで『タベホウダイ』なくなってるの?
というか、『タベホウダイ』が無くなったせいで今まで臭いで寄ってこなかった魔物が集まりだした。
とりあえず、連れて帰るか。
空を飛んでる最中に疑問が湧いた。
この子って、捨て子かな?
生きていける術くらい教えてあげたいけど、名前とかはあるのか?
その子の服の端に名前が書いてあった。
「アメリア、か。」
ここからアメリアとライリーの家族としての、そして師弟としてのの時間が始まる。
結構、ハイペースな話になってしまった。