人魚の涙は甘いのか?
人魚の涙は甘いのか?
「ねぇ? 人魚の肉を食べると不老不死になるって言うけど、美味しいのかな?」
公園のブランコに座っている彼女はそんなことを聞いてくる。
「そんな事は知らないし、そもそも人魚なんて存在しない」
俺がそう答えると、彼女はプクッと膨れてブランコを揺らした。揺れるブランコと同じように彼女のポニーテールも同じように揺れる。
「それよりも、君は誰? 女の子が一人でいたら危ないよ」
俺の言葉に応える事もなく彼女はブランコを漕ぐ、そんな彼女が揺れる度に夕日が見え隠れして鬱陶しい。
「細かい事はどうでもいいじゃない、それより貴方はここで何をしているの?」
「君は質問ばっかりだね、俺の質問には答えないのに」
そこで俺はふと思った。
俺は何をしていたのだろうか、そもそも何で公園にいるのだろうか
俺は何者なのだろうか、名前すら思い出せない
「貴方は何で泣いているの?」
質問しかしてこない彼女の声で自分が泣いている事に気がつく、感情の起伏など無いのに自然と涙があふれている。
戸惑っている俺に彼女はブランコを止め、こちらに近づいてきた。
ぺろ
彼女は驚いた事に俺の涙を舐めた。
そんな彼女の奇行に驚いて、一歩たじろぐ
「うん、やっぱり人の涙は塩辛いや」
彼女は悲しそうに言った。
彼女の当然の行動に驚き動けない俺を置いて、彼女は公園の出口に歩き出した。
「人の涙は塩辛いじゃない? だったら塩辛い海にいる人魚の涙は甘いと思うのよ
さ、行きましょう?」
そう、公園の出口で振り返った彼女に言われ、俺は自然とついて行く。
何故か体が覚えている。
何回も、何年も、こうして彼女について行った事を記憶に無くても体が覚えているのである。
どうも、最近お酒が手放せない宮沢しゅうです
続きなども考えているのですが、・・・ご要望があれば長編にすることも考えます。
プロローグ的な物と考えて読んでいただけたら幸いです。
他の短編もよろしければお読みください。
感想、評価、ブックマーク待ってます。全てが作者のやる気に繋がります。