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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
40/41

side 1-3

「面白い…。」

言われたままの台詞を繰り返した。

心の中が面白いって事?それとも考えが面白いの?いやいや。変とか可笑しいとか言う意味?

頬が三度熱くなるのを感じる。

「ああ。変な意味じゃないよ?」

フォローする様にルネは笑いかけるけど、面白いって言われて今の状況なら変な意味しか捉えられない。

「真琴はね、分からないんだよ。」

「え…?」

「へー。ルネにも読めない奴なんているんか。」

少し驚いた声でカズマも私を見た。

「だけどさっきカズマと私はダダ漏れだって…。」

「この数日の情報は確かにダダ漏れなんだけど、過去が一切見えないんだ。クリア過ぎる。」

「過去?」

「相手の心の中や考えも見えるけど、僕の場合は集中すれば過去も読み取れるんだ。」


オイオイ。

たださえ反則級なエレメントなのに、過去まで見抜かれたらもう犯罪級だろう。


「ごめんね。ちょっとだけ覗かせてね。」

そう言ってルネは一点、私の方を見つめ始めた。

きっとアレだよね?今、私の事を見てるんだよね?

深い意味は無いんだけど緊張するなぁ…。

「そっか。この間のハリケーンの時に真琴はドロップしたんだね。そしてフェルタに会ったけど…そうか。レーザン国の式典か。女王陛下のお気に入りだから呼ばれたんだね。」

1人うんうん言いながらルネは瞳を閉じると

「うん。やっぱりハリケーン以前が分からない。僕が分かるのは木に引っかかってる所からだ。」



間違いない。

イルマの納屋近くの木に引っかかってるのを発見されたのが、この世界での始まり。

じゃあ元の世界の事や列車事故の事は分からないんだ。


「だから面白いんだよ。」

声のトーンからしてルネは嬉しそうに続けた。

「このエレメントを持ってから人の腹の中ばかり見えて嫌気がさしてくるんだよ。だけど真琴はそんな事がほぼない。単純に面白い。良い。」

やっぱりドロップしたからかなぁ。と首を傾げているけど、話からしてその線が強いだろうと私も思う。


だけど…。


「私、ドロップしたんだけど…さぁ…。」

怖くないのかな?

この世界では危険因子なんだよね?私は。

「ん?真琴の事が怖くないかって?」

そうルネ聞いてきたが、私の心を読んだのか表情で汲み取られたかは分からない。

ああ。ルネって目が大きいだけじゃないんだな。凄く澄んで綺麗なんだなぁ。

「怖くないよ。だって真琴は僕に何かした?」

質問に答える様に私は首を横に振った。

「ドロップした人物が危険だなんて過去の一例でしょう?もしかしたら今は違うかも知れないし、もし今危害を加えられたら『怖い』と思うんだろうけど…違うでしょ?」

私がゆっくりと頷くと嬉しそうなルネが笑っている。



「僕は憶測で物を言うのが嫌いなんだよ。それだけ。」



恐らくルネからの言葉は何気ない一言だったかも知れない。

けれど急に私の心の奥にあった『何か』がストンと憑き物が落ちた様に感じた。

そんな嬉しい気持ちを隠す様に、出された紅茶をゆっくりと飲み干した。






「そろそろ行くか?」

互いにカップが空になったのを確認してからカズマが声にした。

「ああ。カズマ達はトゥーマだよね。まだまだ道中長いから気をつけてね。」

「ルネもな。東だろ?どの辺だ?」

「ヤーパンの近くに構える予定。次のお客はヤーパンの人なんだけど、あそこは色々と条例が他国に比べて細かいし厳しいからね。早めに行っておいても良いかなって。」

「ヤーパンか。極東だな。」

イマイチ場所が分からないけど、カズマの話からみて相当遠いんだろうな。

私も今日初めて会ったんだけど、寂しく感じてしまった。

カズマが言うほど変わった人じゃ無いし(エレメントは変わってるけど)フェルタよりも常識人だし(アレを超える人物はそうそう居ないけど)人付き合いが下手と聞いてたけど、私とも普通に会話が成立しているからな。結果、構えていたのが可笑しいくらいに素敵な人だったし。


「酷いなぁ。カズマはそんな風に言ってたのか?」


急にルネが横目でカズマを見た。

「………んだよ。急に。」

「バレる嘘は良くないなぁ、カズマ。僕はみんなの中でも普通な方だ。」

「何言ってんだよ。飯の時に何でも醤油かけるじゃんか!」

「この歳で未だに反抗期を迎える某国の第2王子よりかはマシだと思うけど。」

うっ…とカズマが言葉を失ったのを見て、軍配はルネに上がった。

「カズマってただの反抗期だったんだね。」

「反抗期じゃねぇ!んな目で見るな!真琴!」

「いや、普通そんな目で見るでしょう。」

「馬鹿っ…ってかルネ!お前真琴の中を見たな?」

当たりと言わんばかりの笑顔でルネは私達を見た。

「一瞬ね。真琴からふわっと溢れてきたから見ちゃった。ごめんね。」

やっぱり胸の内を読まれてしまうのは慣れないし、どうしても恥ずかしさが勝ってしまうな。

兎に角!話題を変えよう。

「あっと…ええと、ルネさんは…何時には此処を離れるんですか?」

「店を畳むから今日は早くに休んで…明日かな?」

店を畳む。もう既に店内何も無いんだけど、まだ片付ける所があるのかな?

「違う違う。読んで字の如く畳むの。店を圧縮して持ち運ぶの。」

「畳む…圧縮…?」

何がなんだか分からないけど、とりあえずこの店はコンパクトになるらしい。

「ルネの変わってる1つがコレだよ。生まれつき持つ基本元素のエレメントを持たず、ハイレベルなエレメントを2つ持った特異体質なんだよ。」

ああ。クラウンから聞いたな。火とか水とかのヤツね。まぁ…私から見てみれば、エレメント自体がもう特異体質じゃね?って話だしなぁ。

「重力は習得に時間が掛かるし、心読なんてタイプによっては習得すら出来ない能力だ。」

ふーん。

カズマの説明は良く分からないけど、この世界じゃあ稀って事なんだね。

それで変わってるかどうか判断出来ないけ…どさ…。

さっきからルネはクスクス笑い始めてるけど、コレってもしかして…

「ルネさん!また私の中を見てんでしょう!?」

「あ、分かっちゃった?」

まるで悪気が無いかの様に私に笑いかけた。

「もう!見ないって言ったのに!」

「だから言ったじゃないか。真琴は面白いってさ。なんだろ、からかいたくなるんだよね〜。」

「本気で恥ずかしいんだってば!」


静かな空間が笑いと笑顔で渦巻いてるのが分かる。

この世界でも「楽しい」と思えたのは久しぶりの感覚だった。

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