表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールズエンド  作者: 轉 優夏
4/41

1-4

ゆっくりと紅茶の湯気が天へと昇る様を見る。

再び手元に視線を落とすとシンプルなティーカップに紅茶。そしてシガータイプのビスケットが数枚置かれた皿が並んでいた。

パンと水からビスケットと温かい紅茶。

とりあえずお互いに害は無いと判断されたからだろう。心の底でひっそり安堵した。


「名前は川北真琴。年齢は…この『ヘイセイ』とは其方の年号でしょうね。年齢は20歳。」

そう一つ一つ確認をしながらクラウンはペンを走らせている。

「性別は女性。」

「しかし男前だよね〜。ビジュアル。」

クラウンの隣に座る少尉と呼ばれる人物が私を見てポロっと呟く。

「少尉。女性の前で失礼ですよ。」

「だってさ、ずっと男の子だと思ってたもん。クラウンは気付いてた?」

「気付いてましたよ。当然です。少尉と一緒にしないで下さい。」

フンッと少尉は鼻を膨らませる。


実は自分の顔については生来のコンプレックで、余り好きでは無い。

自分の名前も手伝ってか優しい言い方をすればボーイッシュな風貌は昔からで、頑張って髪を伸ばしたりスカートを履いたりしてみたけど笑われる対象に結果なった過去がある。

まさか…この世界でまで指摘されるとはな。


「ちゃんと御覧なさい。骨格は完全に女性です。顔は確かに男性っぽさはありますが、でも頬と唇の作りは完全に女性ですよ。とても綺麗です。」

「……………それって褒めてるの?」

思わず口を挟んでしまう。

「褒めてますよ。最上級の褒め言葉です。」

しれっと私を見てクラウンは手を止めて此方を見た。

「改めて自己紹介しましょうか。」

じっと視線が合い、思わず自分の背筋を正してみる。

「自分はセントラルに在籍するクラウンと申します。」

「セントラル?」

「この世界の中枢ですね。政治的な面での活動が主ですが、他にも人口管理や今回の様な事故や事件の処理も行なっています。」

国会みたいなものかな?それに役場と警察もコミコミなイメージを湧かせる。

「何でも屋の最後の砦版。と言った所でしょうか。」

「最後?」

「この世界には様々な人種と国が存在します。本来は各国内で処理して戴くのですが…真琴はドロップ者なので私達が出向きました。」

そうだ。

「あの。その『ドロップ』って何ですか?」

「ドロップとは、異世界からやって来た物や人を指します。」


そうか。

やはり此処は元々の場所では無いのだ。

まぁ…目の前に居る2人はどう見ても日本の人には見えないから、覚悟はしていたけどね…。


「昔は年に1人はドロップした人物が居たそうですが…最近では例が少なくて。」

「最後にあったのは15年前だね。僕もドロップしたばっかりの人を見るのは初めてだ。」

「したばっかりって事は、何人か異世界から人と面識があるんですね。」

少尉と呼ばれる人物に投げかけると「うんうん」と頷きながら笑う。

「15年前の人はちょっと知り合いで、更に20年前にも男がドロップしてるんだけど、色々あってセントラルに居るよ。」

「……………そうですか。」

「少尉、セントラルにもドロップ者が居るのですか?」

「うん。大佐のジジイは実はドロップ者だよ。公にはしてないけど。」

「初耳です。………でもジジイは無いでしょう。」

自分以外にも同じ境遇を持つ人物が居たのか。

でも話を聞く限り、それぞれ此方の世界でも上手く暮らしている様子だ。

「少尉もいい加減、名乗ったら如何ですか?」

そうだね〜と少尉と呼ばれる人が答えると

「僕はフェルタ。少尉って呼ばれてるけど、大した事は無いから宜しく!」

「本当は大した事をして欲しいんですけどね。」

小声でクラウンがツッコミを入れる。

やっぱり彼がフェルタ様とやらなんだ。

しかし…。


「お2人、仲が良いんですね。」


「それは違います。」

バッサリと切り捨てたクラウンに対して

「え〜僕はクラウン大好きなのに。」

「誤解を招く発言は控えて下さい。」

「クラウンは1つの事を伝えれば10で返すからね。理解力も行動力もあるし…。」

「少尉、それは好きの意味を履き違えてます。」

この痴話喧嘩?じゃれ合い?もう何回見てきただろうか…。


「それが仲が良いって証拠だと思いますよ?」


「だよね」と笑うフェルタと、頭に手をやり深くため息を吐くクラウンが対照的だった。

ペンをそっと置き、クラウンは軽く咳払いをすると


「お互い未知の存在だ。特に真琴は独り身でドロップしている。不安でしょう。可能な限り質問は答えるし真琴の希望を聞きたいのだが…。」

「そうですね。」

確かに聞きた事だらけだ。

ざっくり異世界で今話をしているのはセントラルなる役人2人で、今から色々教えてくれてる。そこまでは理解した。


「さっきのエレメントって何ですか?それが無いと不味いのですか?」

「そうですね。その説明からしましょうか。」

そうクラウンはモノクルを直しながら私を見た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ