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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
31/41

1-30

控えめに扉を開ける音で私は再び気が付いた。

どうやら二度寝してしまった様だ。ゆっくりと体を起こして音がした方に向けた。


「お。漸く起きたか、真琴。」

「……………ようやく?」

「バッタリ倒れてから1日半っくらいか?寝てたんだぜ。お前。」

「え…?」

そんなに寝ていたの?

少しだけしか夢を見なかったから全然気にもしてなかった。

邪魔すっぞー。とカズマはどんどん部屋に入ってきて、私のベッド横にあった椅子に腰を下ろした。

「あ。お前、状況がイマイチ把握出来ませんって顔してんな。」

当たり前だ。

少しだけ目を閉じるつもりが1日半も経過してるんだもん。分からなくて当たり前だ。

大人しく私は頷いた。

「マジで大変だったんだからな〜。」

呆れた表情で過ぎた1日半の内容はこうだった。



ドラゴン飛行中。

フェルタとの会話も終わらせる少し前に、私は雪崩れ込む様に横たわったそうだ。

スゥスゥ聞こえてくるから眠かったんだろうと一旦は寝かせてくれたらしい。

しかしエレメントの能力はそうはいかなかった。

元々私が呼び出したドラゴンだから、私の睡眠により無意識状態になったので召喚の能力が無効になり始めてしまったらしい。

かなり激しく揺さぶったりしたらしいけど、全然起きやしない。

次第にドラゴンも低空飛行をし始めて、最後には私とカズマを降ろした瞬間に消滅したそうだ。

降ろされた場所からルッツ迄はザックリ15キロ。

アクセスは知っての通り試運転前の列車のみ。幸いな事に山は超えて平坦な道だったので、私をおぶさってルッツに辿り着いたそうだ。



「お前、見た目ちっさいけど重いんだな。」

「………………悪かったわね。」

それでも日本人女性の平均体重なんですけど!

この世界の女性はきっと見た目よりうんと軽いんだ。うん。絶対そうだ。



ルッツに着いたのは真夜中。

とりあえず直ぐに入れそうな宿が此処にいる宿屋だったらしい。

深い時間帯だったのにもかかわらず、主人は部屋を用意してくれたそうだ。

この日はこれで別々に就寝。

しかし翌日になっても私は起きて来ない。

なので私を置いたままカズマはセントラル支部に向かい、車の手配をしてくれたらしい。

あとフェルタの知人とやらの人の事も。場所を探して既に接触もしたらしいし、おまけに夕飯もご馳走になったらしい。図々しいな。



「フェルタの知人って人、どんな人だった?」

「スゲーセンス良い人でさ!俺も何か能力身につけたら任せたいくらい!」

「センス?任せる?」

「ああ。お前はエレメントの事は良く分かんねぇか。後から習得出来る能力もあってな、習得したらそのタトゥーを入れるのが決まりなんだよ。」

ふうん。なんだか面倒なシステムだなぁ。

「そんなタトゥーを入れる仕事をしているのがチャックなんだよ。」

「あー。そう言う事ね。」

だからエレメント師って事か。

「それでセンスは関係あるの?」

「当ったり前だろ?体に示すんだから、綺麗だとか格好が良いとかあんだろ?」

それでセンスが必要なんだな。なるほどね。

そして名前はチャックと言うのまで分かった。それからして日本人では無く海外の人みたいだ。

でも私と状況は変わらないはず。1度は会って見たいかも。

「でさ、今日は今の時間まで何していたの?」

「ん〜?車の状態確認と散歩。たまにはコンチ意外の街も良いな。」

スッと立ち上がってカズマは部屋のカーテンを片っ端から開け始めた。

徐々に部屋が光に照らされてゆく。

窓の外からは同じような赤い屋根と白壁の小さな家が沢山立ち並んでいた。

「真琴。とりあえず支度してさ、チャックの所に行かないか?」

それもそうだ。

いつまでもベッドにいる訳にもいかない。

しかし風呂にも入っていないし、お腹も空いた。

「そういやカズマ、冷蔵庫のサンドイッチは?」

「え?俺食っちまったよ?昨日作ってもらったヤツだから早く食べ…って良く知ってんな。」

「じゃあ、あれから日付けをまたいで寝てたんだ…。」

「何、1回起きてたんか?」

「うん。テーブルのメモを見たから。それから…二度寝っていうのかな?これ。」

「随分ロングランな二度寝だな。」

凄い呆れた顔で私を見ていたけど、支度をするのでカズマには一旦退場して貰い、私は急いで支度を始めた。

シャワーを浴びて着替えを済ませる。

そろそろ自分の服を洗濯したいな。ルッツの何処かで洗剤でも調達するか。

髪をとかしてイマルに貰ったバレッタをつけた。

イマル、元気かな。

一緒に畑仕事をした事が遠い過去に思えるけど、ほんの数日前なんだよね。

本当、遠くまで来たんだな。私。



「おまたせ。カズマ。」

「おう。じゃあ行くか。」

答えに頷き、カズマの後をついて行く。

部屋の中同様にシンプルな木目調の廊下を歩き、階段を降りると、小さなフロアに辿り着いた。

「ああ、お客様!お目覚めになりましたか‼︎」

頬が丸くツヤツヤしたおじさんが涙目で私の前へとやって来た。

……………誰だ?

「ああ、取り乱しまして失礼致しました。」

「真琴、此方は此処の御主人だ。御主人、妹がお騒がせ致しました。」

「妹?」

さっと私の耳元で「そーいう設定で宿に入ったんだよ。護衛とか言ったら勘ぐられるだろ?」と手短に説明された。

そう。自分では自覚はないけれど、私はこの世界にとっての危険因子なのだ。

しかし。御主人は涙目になるほど心配してくれたのかな?

もしかして私って此処来た時って相当ヤバそうに見えたのかなぁ?こう、瀕死的な感じで。

「あっ…あの、私からもお礼申し上げます。ご迷惑をおかけしました。」

「いいんだよ、いいんだよ。私は眠り病になってしまったんじゃないかと思ってね、心配していたんだよ。」


眠り病?


はいキタ。訳分からないキーワード、再び。

私みたいに寝たままになっちゃう病気とかかな?

とりあえず微妙な笑顔で御主人に笑いかけるしか出来なかった。

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