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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
26/41

1-26

『車両は話の通りに隣町のルッツに支部があるので、そこで借りてね。

カズマのジャケットのポケットにセントラルのパスカードを入れといたからソレ見せれば大丈夫な様に話はしてあるから。

ちなみにそのカードは提出すれば大体の宿泊先や食事処を無償で使えます。勿論セントラル払い。要返却だから無くなさないで道中に役立てて。』


『あと真琴へ。

ルッツには僕の知り合いが居ます。以前話した15年前にドロップをした人物です。

もし時間があれば会ってみては?何かのヒントになるかもしれないし。話は通しておきます。エレメント師で特徴ある人だから、すぐに見つけられると思うよ。』





「だ、そうだ。」

カズマが持つ携帯端末機にそんな文面が並んでいた。


とても賑やかなコンチの大衆居酒屋に私達は少し早めの夕食をとる事にした。


セントラル離陸後、カズマがライターを探してる最中に文面にもある「パスカード」なる物を見つけた。

そんなベストタイミングで彼が持つ携帯端末機が鳴り響いたのだ。

そう。このフェルタからのメッセージだったのだ。

とりあえず近場で空いてた宿にカードで入り、斜向かいにあったこの大衆居酒屋に来た流れである。

とりあえずは道中のお金に困る事はなさそうだ。

「アイツも俺と一緒に居る時に言えばいいのに。」

カードをまじまじと見ながらカズマは眉をひそめた。

確かに。でもフェルタらしいやり方かな。

「言うつもりだったけど、急遽予定変更になったからメールになったんじゃない?」

「メール?」

「この文面の事よ。私の世界ではそう呼んでたわ。」

ふーん。と私の顔を横目で見て、再びカズマの視線はカードへと戻って行った。

「アイツ何時入れたんだろ?」

「あれじゃない?お金を没収された時。」

2人が急接近したのって、私が知る限りあの瞬間しか無かった様に思える。

「ま。コレを宿屋に見せたらアッサリ部屋を用意してくれたし、本当に使えるみたいだから路頭には迷わず済んだな。」

サッとカードをジャケットの内側にしまい、ぐっとカズマは大きく背伸びをした。

「問題はルッツ迄の道のり。か。」

先程の話だと、車でも約半日は掛かるって言ってたっけ。歩くなんてなったら更に掛かる。

本来なら交通機関もあるんだろうけど、ハリケーンの被害が影響して通常よりも話が難しくなってるに違いない。

「カズマ。何時もだとルッツってどう行くの?」

「ああ。公共機関を使うなら列車だ。車でも行けるが山越えがいくつもあるからルート的に遠回りになるから時間が掛かる。」

車で行こうとすると半日って意味はコレか。

「列車でも確かそろそろ線路の修理が終わるんだろうけど、待ってる人間は多いからな。間違いなく混み合うな。」

「混んでても列車で行くしな無いと思うな。」

「ま。そうなんだけどな。」

おまたせしましたー。と元気一杯な声のウエイトレスさんが器用に幾つかの料理を運んできてくれた。

色鮮やかな大皿料理達から食欲を誘う良い匂いがした。

「…美味しそう…!」

「真琴の好き嫌いが分からねぇから適当に頼んだぜ。適当に食べな。」

「私は好き嫌い無いから大丈夫。じゃあ、いただきまーす!」

早速、トマトと肉の煮込みみたいな料理にスプーンを入れて取り分けた。一口食べてみるとトマトと香辛料の爽やかな美味しさが広がった。

「ん〜‼︎美味し〜‼︎」

「大皿料理だから見た目はイマイチだけど、それさえ無視しちまえばコンチの中じゃ此処の飯が1番旨いぜ。」

自分でも良く分からない力を散々使ったせいか、体はクタクタだしお腹もペコペコ。

肉や野菜の素材が染み渡る様な美味しさだ。

「カズマのも取ろっか?」

「おう。適当に見繕ってくれ。そうは言っても早目にフェルタへのメッセージ返してやらねぇと。」

そう端末機に向かって指を細かく動かす。

私はカズマ用に小皿にそれぞれの料理をバランス良く取り分けて行く。

本当、パスカードのお陰で美味しいごはんにありつけて良かった。


料理。料理が無料なら…。


「ねぇカズマ。食事と宿が平気なら、交通機関もセントラル払いにならないのかなぁ?」

「セントラル払い?」

動かしていた手を止めてカズマは此方を見た。

「そのパスカード。宿に泊まったり食事が出来る位だもん。交通費も負担してくれそうな気がする。」

「それもそうだな。一応フェルタに聞いてみるか。」

そう言いながら再びササッと端末機の画面を素早く叩いた。

もしパスカードがダメならドラゴン達には悪いけど、鱗を売却して列車代金遠に充てれば良い。まだ数枚残っているから多少の足しにはなると思う。

「送信終わり!とりあえず食おうぜ。考えるのは食ってからだ。」

端末機を懐にしまいながら私が取り分けたお皿に手を伸ばした。

「考えるも何も、列車が動いてたらもうソレ一択でしよ?」

「金はどーすんだよ。」

私はスカートのポケット部分を叩いて見せた。

此処にはドラゴンの鱗が数枚入っている事はカズマも知ってる。

「良いのか?」

「あの子達には悪いけど、しのごの言ってらんないでしょ?私も早々にメディカルチェック終わらせて自由になりたいし、カズマだって…私の存在は正直迷惑でしょ?」

面と向かってカズマの方を見た。




『エレメントを持たない者は危険因子でしか無い。』




クラウンが発した言葉が実はいつまでも心の奥で引っかかっている。

表面上では今みたいに普通に過ごしてくれてるけど、本心は迷惑だと思ってる筈だ。

これからどうなるかなんて正直分からない。

分からないけど、自分は人畜無害な証明も早くしたいのが本音だ。

「俺は…真琴がドロップしたって気がしねぇんだよな。」

予想を上回る言葉をカズマは発した。

「そっ…そう?」

なんと間抜けな返答だろうか。

「確かにタトゥーシールの能力はドン引きだけどな。それ以外は普通過ぎる。」

「普通。」

「まぁエレメント無いからあぶねーとか言われて引け目を感じてんだろうけど、黙ってれば此処に居る奴等だけじゃ無い。この世の殆どは気付かないだろうし。」

料理の湯気越しのカズマを見た。彼は何事も無い感じでスプーンを進めている。

そう見えるのは私の願望かもしれない。

「今更悩んだって仕方がないんだから、とりあえず食え。」

パッと目の前に差し出されたのは骨付き肉で、ハーブの香りが私の鼻を誘った。

カズマなりの励ましなのかな?そのまま骨付き肉を受けとり

「あ…ありがとう。」

「おう。」

「カズマって、優しいんだね。口悪いけど。」

「最後のは余計だし。」

屈託の無いカズマの笑顔は、不思議と私の不安を取り除いてくれた。

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