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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
25/41

1-25

ブーッ、ブーッと低い音が響く。何だか懐かしい音。

そうだ。携帯電話のバイブ音だ。

私もスマホがあったけど、入れてた通勤バックは私とは別に何処かに飛ばされてしまったままだもんな。

大事なデータとかあるから、ハリケーンの衝撃で飛んでなきゃ良いんだけど…数日経過してるから運良く発見しても、もう充電無いんだろうなぁ。


「ふぁい。」

口にスコーンを頬張ったままフェルタは小型の端末機に耳を当てる。やっぱりスマホに似た物なんだな。

「ふん。ほうひた?ふはふん。」

「喋るか食うかどっちかしないとクラウンが可愛そうだろ?」

と言うか、良くカズマはこれだけで理解したな。

感心の眼差しで男性2人組を交互に見た。

とりあえずクラウンからの連絡らしい。

そういや一旦別れてから結構時間は経った筈だ。もしかしたら何時帰るのか確認の連絡かな?

「え。離陸時間が変わった?」

離陸時間?

ああ。明日の話かな。飛行機みたいなので移動すんのかな?

そのままフェルタの話だけで様子を伺ってみる。

「じゃあ今から戻る。うん。まぁ、カタパルト辺りから飛び乗りゃ何とか間に合うでしょ。」

飛び乗る?飛行機に?

何となく映画に良くあるアクションシーンを想像してフェルタに重ねる。

うん。彼なら出来そう。

「ほい。ほいほい。りょーかーい。」

通話を終えてフェルタは端末機をジャケットの内側に片付けると、大量の紙袋を持ち上げた。

「おい、あの感じだと移動か?」

「うん。本来の予定時刻は夜だったんだけど、急に航空事情が変わったからこれから10分後には離陸するって。」

「10分また急だな。間に合うか?」

「走れば間に合うでしょ。停泊地から無茶苦茶離れている訳じゃあ無いし。」

……………話が見えない。

停泊地?飛行機とかで来てないよね?

だって今朝の騒ぎの時にそびえ立つセントラルは頑張れば歩いていける距離にあったのに。

そんな頭の回転が追いつかない私をよそに、男性2人は会話をしながら公園外へと向かっている。

「でもさ、明日には用意するって話だった貸出の車両はどうすんだ?」

「あ。そうだねー。あれ?ラウムのジジイも出先だよなぁ。どうすんだろ?」

「セントラルのジジイ話はいいからさ、どうすんだ?あと真琴!行くぞ‼︎」

急に呼ばれたので、勢いで立ち上がって彼等の後を追った。

相変わらず2人の話してる内容が掴めないけど、どうやら私達の貸出車両の話に切り替わってる様だ。

「じゃあさ、隣町に支部があるじゃん?そこで車両借りちゃうか。あそこは治安バッチリで暇な場所だから車で行く程用事は無いから殆ど使って無いみたいだし。」

「隣って…お前、デジッツの土地をナメんなよ⁉︎車使っても余裕で半日掛かりだわ‼︎」

「仕方がないから報酬1日分、追加しとくね。」

「それで済む話かっ!」

「あのっ…!」

私の前を早歩きで歩く2人の会話に思い切って入り込んでみた。

だって、何がなんだか分からないんだもん。

「あのさ、離陸とか停泊地とか…何?」

「セントラルだよ。セントラルの話。」

簡単にフェルタはそう言うけど全然分からない。

次第に今朝行き来した街の外側が見えてくると、大きな雲が多く重なり合った風景が見えた。

雲行きが怪しいのかな?街は快晴なのに。


だけど…何か違う。

雲の重厚感と言うか、何か異質な感じがする。


「ねぇセントラルがどうしたの?」

「詳しい話はカズマに聞いて!僕は急ぐから。」

私の頭の中は「?」でいっぱいになる。

「じゃあね、真琴。すっごく楽しかったから又会いに行くね〜!」

そう私に手を振ってフェルタは紙袋を全て片方に持ち、雲に向かって全速力で走った。


いや。あれは雲じゃない。


「ねぇ、カズマ。セントラルってなんなの?」

「簡単に言えばこの世界の中枢だよ。」

地鳴りの様な音が響く。大きな何かが動く様な音だ。

「役目は知ってるの。アレよ。」

そっと指を指して改めてカズマに聞いてみた。

「あれ。なに?」

目の前には今朝のドラゴン騒ぎで見たお城みたいな造りのセントラルが麓付近に例の雲を湛えてそびえ立つ。

確かにフェルタは其方に向かって走って行ったから間違い無くセントラルなんだろう。

でも私の言いたかった事はそれじゃ無い。

更に激しい地鳴りを鳴らしながらセントラルは私達の前を通過し、ゆっくりと空へと上がっていった。

そう。離陸したのだ。

この話をずっとしていたんだ。

「空飛ぶ…城…?」

「まぁ昔はどっかの国の城だったっけな?確か。」

「それにしたって…飛ぶって!」

「セントラルが設立された時に中立な土地探しをしていたんだけど中々無くってさ。だから…」

まさか。

「飛ばした?」

「当時は航空事情が曖昧だったしな。」

「にしたって、なんて無茶苦茶な話!」

「俺に言われても…って、ほら、真琴。」

カズマに言われるまま指差す方へと見ると、カタパルトで手を振るフェルタとクラウンの姿も見えた。

反射的に私も役人達に手を振るとセントラルは急激にスピードを上げ、みるみるとセントラルの姿は小さくなりやがて見えなくなってしまった。



「行っちまったな。」

ぽつりとカズマが呟きながらタバコを出して咥える。

「しかし…困ったな。車どーしよ。寝る所は俺の部屋はあるけど…って真琴?」

心配そうな顔で私の顔を覗きこんできた。

「どーした?大丈夫か?」

「あ。うん。少しびっくりしただけ。」

「びっくりって、真琴の世界には空飛ぶ城は無いんか?っても、ここもセントラルだけだけどな。」

「無いわよ。飛ぶのは鳥と飛行機くらいで、後は物語の中だけよ‼︎」

既にセントラルが離陸するまで立ち込めてた雲は無く、今は眼が覚める様な青い空が何処までも広がっていた。

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