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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
15/41

1-15

化粧水、乳液、歯ブラシ、タオル。

自分が持って良いのか問いたくなる位に可愛いポーチと会計カウンターに並ぶ。

何かクラウンの女子力の高さを感じる買物になった。

そして気になるシート状のシール。


「コレ、何ですか?」

「エレメントのタトゥーシールです。子供がごっこ遊びに使うシールですね。」

そっとクラウンの顔が近付き、私の耳元で

「真琴にはエレメントがありませんからね。何かトラブルがあった場合にシールでも貼っておけば多少は誤魔化せると思いまして。」

「体の見せれない部分にあるって嘘つくのはダメ?」

「相手によりますね。見透すエレメントもありますから。中々特殊なエレメントですが。」

「マジ?何その透視能力みたいなの。」

「ですからオモチャでも貼っておけば安心ですよ。少しでも見えるのが確認出来れば見透す力も使わないでしょうから。」

この世界特有の能力は本当に未知数過ぎる。

会計が終わり、ジープで待つフェルタとカズマの元に私達は向かう。



「声、大きいなぁ。」

ジープの前で大きな声でカズマがフェルタにツッコミを入れていた様で思わず呟いてしまった。

「おはようございます、カズマ様。」

「お、おう。ってか普通だし。」

カズマはジープに寄り掛かって私達を見た。

「買物終わった〜?」

相変わらずな調子でフェルタが聞いてくると「お陰様で」とクラウンは返しながら買物袋から例のタトゥーシールを取り出し、丁寧に包装を開け出した。

「お。懐かしい。タトゥーシールか。」

カズマも身を乗り出してクラウンの手元を見た。

「ドロップした真琴はエレメントがありませんからね。保険です。」

「あーなるほどね。しかしガキの頃、兄貴と良くシールを貼って遊んでたなぁ。」

「矢張り男子はコレで遊んだ経験はあるんですね。少尉もですか?」

「僕はやらなかった〜。結構冷めてたお子様だったんだよね〜。」

シール1つで盛り上がる青年男性3人を引き気味で見てしまう。

どの世界も男性は永遠の少年なのだろうか。


「おい。えっとお前!名前…。」

「真琴です。」

カズマに呼ばれて素っ気ない返事を返した。

これから最短でも5日は一緒何だから、名前くらい早く覚えて欲しいものだが。

「なあ真琴、お前どれにする?」

「だからお前って失礼だなぁ…。」

カズマから手渡されたタトゥーシールを改めて見る。

火や水のモチーフをはじめ、どう考えても理解不能なデザインもある。

「色々あるんですねぇ。」

「俺はガキの頃、これが良くてが良くて兄貴と取り合ったなぁ。」

指された指の先には雷モチーフのシールだった。

「私的にはイマイチ…。」

「フェイクなんだからイマイチじゃ無くっても良いんだよ!」

「カズマは良くても私の体に貼り付けるんだからね!もっとカッコイイのが良い!」

「まあまあ。ならこれは如何でしょうか?」

クラウンが間に入って指してきたのは、翼を広げたモチーフだった。

「天使みたいで可愛らしいですよ?」

ここでも女子力発揮かい。クラウン。

でも、この中ではコレが一番貼っていても良いかな。

「コレにする」と告げるとクラウンはニコニコと翼モチーフを切り取りながら私を眺める。

「やや目立つ場所が良いですね。手首とか。良いですか?」

頷くと私の左手首を手に取り、ブラウスの袖部分を丁寧にまくってくれた。

「少し待って下さいね。」とシールを左手首に押し当てると、ポタリとクラウンの指先から水が滴り落ちた。

「え!何?!」

ポタポタとシールの上に落ちる液体を見て思わず声を荒げてしまう。

「何?汗?何??」

「ただの水ですよ。空気中の物質を液体化しただけです。私の能力ですよ。」


これが…エレメントの能力…?


「……………何か…地味?」

「真琴も中々失礼ですね。フルパワーでぶつけたら腕、もげますよ?」

自然と指からの水も止まり、軽く擦ると翼モチーフのシールは私の左手首に定着した。

私の世界のタトゥーシールと同じシステムなんだなぁ。そんな事を考えながら平常心を取り戻す。

「水浴びしたり入浴するとシールなんで剥がれやすくなりますからね。注意して下さい。」

じっ…と左手首のシールに見入る。

「ねぇ。翼って何の能力なの?」

急に男性3人に向けて聞いてみる。

翼だけに飛べるとか?風を起こすとか?色々考えてみたけど

「翼は…聞いた事無いなぁ。」

カズマが難しい顔をしながら答えると

「まあオモチャだからな。実際に無いデザインも沢山あるし。」

ふーん。

もっと訳分からない能力が沢山あるかと思っていたけど、そこまでじゃあないんだな。

まぁ私にしてみればオモチャでも周りに悟られず無事に目的地に到着すればいい。

これ以上のトラブルはごめんだ。


「じゃあカズマ、よろしく!」

何時もの変わらぬ調子でフェルタはカズマの背中を叩きながらニコニコしている。

スッと右手を差し伸べられ、クラウンも

「比較的安全で治安が良いルートを選択した筈です。何かありましてもカズマ様は力になる方です。」

「はい。」

クラウンの手を取り握手を交わす。

「時間が間に合えば私達も様子を見に伺いますので。良い旅を。」

「ありがとう、クラウン。」

ゆっくりと手を離れジープに乗り込もうとした時だった。



遠くから何かを裂くような音が聞こえる。




ジープのエンジン音?

ううん。ジープは違う低音を響かせている。

又だ。この裂くような音。何処かで聞いた事がある。


「おい、早く行くぞ。乗れ。」


カズマがそう急かすけど、音はだんだん近くなって行く。

「ねぇ、何か聞こえない?」

「何かって何?」

既に運転席に座っているカズマは不思議そうな顔をして私を見る。

「何かって…この音は…。」


飛び交う荷物。逃げ惑う人達。悲痛な叫び声。

一瞬にして記憶の引き出しが開かれる。

ああ。電車事故の時の音だ。まるで…



「ドラゴンみたいな声。」



その時だった。

背後からズシン…と物凄い風圧と振動に襲われる。

私は何も出来ずただジープに衝突してしまった。

ゆっくり目を開くと車内でも衝撃が凄かったらしく、

カズマが頭を押さえていた。

何があったんだろう?振り向こうとした時に生暖かい風が私に纏わりつく。

「………マジかよ。」

明らかにカズマの視線は背後の、生暖かい風辺りに集中している。

視線の先を確認したくて私はゆっくりと振り返る。



大きなビルの様に広く高い体格。

爬虫類の様な体は浅黒い鱗に覆われている。

鋭い目。長く伸びる角。裂けた様に大きな口から牙がハッキリと見えた。

小さい頃の絵本で見た事ある。


「ドラゴン…。」


そう。本から出てきたかの様なドラゴンの姿がそこにあった。

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