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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
12/41

1-12

ディジッツ王国。


コンチ・シティを始め、この界隈のいくつかある街や村を治めている王国。

芸術的文化が盛んで、特にダンスには力を入れているそうだ。

実際に現国王と王妃は社交ダンスのチャンピオンだし、親族の何人かは各国の王族達へダンス指導に呼ばれる程の実力者ばかりで、外交にも一役かっている。

そんな国王には2人の息子がいる。

長男はダンスを通しての外交に日々勤しんでおり、数ある国の中でも超が付くほどの有名な王子だ。

次男もアカデミー時代から数多く大会制覇をし、長男とは逆に国内政治を勉強しながら活躍している。



「と、聞いていますがね。」

ざっくりとクラウンからディジッツ王国の説明を聞く。

「国内政治をしている人が何故こんな寂しい部屋に?」

「まぁコンチもディジッツの傘下ですからね。何か特別な理由で滞在しているかも知れません。」

「そっか。でも私、生まれて初めて王子様とやらを見る。」

「真琴の世界には居ないのですか?」

「いるけど、そう簡単には遭遇しないよ。」

そうですか。とクラウンが言葉を切り上げた時に勢いよく扉が開いた。


「フェルタ!テメェが言うと洒落になんねぇから!」


大声を上げ男性が扉を開けたまま此方を見る。


「噛んだガムはマジでやめろ。タチが悪い。」


少し長い黒髪、黒い瞳。私と同じ見慣れたアジア系の顔立ち。

少々「王子様」とは言い難い野生的な雰囲気の彼は私達を再度ゆっくり見回す。



「………ん?セントラル絡みか。」

カズマは諦めた様な表情で廊下側に出てくる。

フェルタより少し身長が高いかな?長身のカズマにフェルタは爛々と

「まぁ立ち話もなんだから、カズマん家に入ってお話でもしようか!」

「お前が言うな。用件は此処で聞く。入んな。」

「え〜結構重要機密なお話なんだけど。」

「だから重要なのを俺に持ってくんな。」

「じゃあ『依頼』として、は無理?。」

「お前からのは割に合わないから嫌だ。」

「じゃあ正式にデジッツ王から…」

「……………分かった。用が済んだら早く帰れよ。」

カズマはバツが悪そうに部屋の扉を開けて私達を見た。

あれ。国王とは仲が悪いのかな?

ってか王子様となれば国王ってお父さんだよね?

少々不機嫌なカズマの横顔を見つめていると、ふいに彼の切れ長な瞳と視線が重なり合った。

「なぁフェルタ。」

「ん〜?」

扉を抑え、視線が合ったままカズマは私に指を指すと

「コレ、女?」

コレ?コレ…って私の事か?失礼な!!

「女の子だよ。良く見なよスカート履いてるから!」

「あ。本当だ。余りにも小僧っぽくてスカート気付かなかったわ。」


マジどっかで全員シメてやる。


「早く入んな」とカズマに促されて室内に入ると、暮らしているとは言い難い無機質な部屋に辿り着いた。

王族とはかけ離れた空間を感じる。

部屋には机と椅子、ベッドしかないせいか、がらんとした印象があった。

全員がその部屋に入ったのを確認してから、ベッドにどっかり座ってフェルタは口を開いた。

「じゃあカズマが用件を早く言えって事なので。」

ぐるっと私達を見回してからフェルタはカズマの方を見ると

「真琴をトゥーマまで連れてって。」

無機質な部屋の中には沈黙が生まれる。

まあそうなるよね。その為に来たんだもんね。分かっていた事だけど、そうなるよね。

煙草を咥えたまま火を付けずにカズマはフェルタを見ている。

「真琴って誰だ。」

「あのスカートの子。」

「何で?」

「だってトゥーマはデジッツのお隣じゃん。」

「俺トゥーマに知り合いいねぇよ。兄貴に頼みな。」

「レイン王子は他国へ外交中でしょ?たださえ多忙な人だし無理でしょう。」

「だからって俺かよ。」

「カズマは暇でしょう?」

「まぁ…今は暇だな。否定しねぇ。」

「オマケに今回の件は出来る事なら僕の知ってる人に頼みたいんだ。」

「フェルタ友達少ねえもんな。」

ククッと笑いながらカズマは咥えていた煙草にようやく火を付けた。

煙草特有の香りが部屋に広がる。

私とクラウンは立ったまま、ただフェルタとカズマの会話をじっと聞き入る。

「そんな感じで!よろしくカズマ!」

「どんな感じだよ。コイツの何処がセントラルの重要機密なのか分かんねーし。」

「んーとね。何だっけ?」

クルッとフェルタはクラウンの方に向かってSOSを出すと、一歩前にクラウンは出た。

「カズマ王子、お久しぶりです。」

「おう。クラウンだっけ?相変わらずフェルタの子守りなんざ御苦労だね。」

「違うー!」とフェルタの呟きを余所にそのまま2人は会話を進めていた。

「彼女は川北真琴。先週発見されたドロップ者です。」

「へぇ。ドロップなんて久々に聞いたな。そうか。メディカルチェックか。ならばセントラルの暇な連中で良いじゃんかよ。フェルタとか。適任だぜ?」

「そうしたかったのですが明日以降はレーザン国の式典がありまして、女王陛下より直々に少尉が警備に来て欲しいとの申し出がありまして。」

「エリザベート女王ね。随分な所に好かれてるんだねぇ。アイツ。」

「陛下の超お気に入りなんですよ。少尉。」

「俺はあのバァ様がどうも苦手でさぁ。」

「そうは申しますが、まだ64歳ですよ。」

「充分にバァちゃんだろ?でも分かるわ。アイツ昔からマダムキラーだからな。」

「そうですね。大体指名をしてくるのは60代後半の御婦人が多いですね。」

「だろ?」


……………。話が所々が分からないけど、話が脱線しているのだけは分かった。


クラウンとカズマに挟まれて話が見えないのに2人の間に入って落ち着かないでいると、視界の外側からチラチラ入って来たのが分かった。

視線をずらすとフェルタが手を振り、手招きをしている。何だろ。

そっと脱線話を繰り広げてる2人から離れ、ベッドに座っているフェルタの元に移動した。

「何ですか?」

「疲れたでしょ?座ったら?」

ぽんぽんとベッドを叩いて促されたので、そのままフェルタの隣に腰を掛ける。

もう殿方2人の話は何処まで行ってるのか皆目見当がつかない。

「クラウンもそうだけど、カズマも話がすぐ脱線すんだよね〜。」

「そんな2人が会話させたらダメじゃん。」

だよね〜と笑うフェルタは続けて

「真琴はどう思う?」

「何をですか?」

「アイツ。」

「アイツ…カズマさん?」

「うん。」

「えっと…カズマさんは話している感じだと、悪い人じゃないかなと思います。口は悪いけど。」

「カズマはアカデミーで会った時から口が悪いんだよね〜王子様のクセに。」

「そう。王子様らしくないですよね。」

「でしょ?」

そのまま体を倒してフェルタは横になりはじめた。

「良いんですか?人のベッドで。」

「僕はいいの。だって話が終わんないんだもん。」

それは言えてる。

これから知らない場所で知らない人との旅に不安とかメディカルチェックの怖さとか一気に払拭され、逆にトゥーマ迄の道中が心配になって来たわ。


あ。


もしかしてコレ、私の不安要素を取り除く為にフェルタが仕掛けた?

カズマはどんな人物かを脱線話をしてしまうクラウンを使って…。

そっと寝っ転がるフェルタへと視線をずらすと、話が終わらない2人をニコニコしながら聞き入っていた。


………考え過ぎかな?


私の視線に気付いたのか、フェルタは

「真琴も一緒に寝る?」

「寝ません。」


うん。考え過ぎた。


でも、こんな感じだけど若くて少尉になったのは、少し分かったかもしれない。

ほんの少しだけフェルタに感謝した。

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