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ワールズエンド  作者: 轉 優夏
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1-1

世の中の流行りか、異世界を主題とした物語が多くある。


異世界に飛ばされて勇者となり活躍する。

異世界に飛ばされて財を成して成功する。

異世界に飛ばされて王子様と恋に落ちる。


何れも教科書通りの展開。

胸踊る展開が約束されている。


自分の憶測とすれば、現実世界では叶わない事柄を『異世界』と言う非現実世界に置き換えて逃避したい。そんな願いが世の中に蔓延しているんだと思う。

仕方がない。そんなのは自分自身もそうだ。

いつもと同じ電車に乗り、会社に行く。

さして入社希望をしていた会社じゃないから行っても楽しくない。義務的な感じで、食べていく為に行ってる感じだ。

先輩や同僚は悪くない。それが救いかもしれない。

仕事も実は悪くない。だから実際は辞める事無く勤務が続いてるのだろう。

ただ仕事が終わると、何とも言い難い虚空感に襲われる。

入社1年目。我武者羅にやって来たけど、何かが足りない気がする。

仕事の内容?プライベート?はたまたそれ以外?

実際は分からない。

まぁ知った所でって話でもある。


今日も何時もの地下鉄に乗って帰宅する。

週末、今日は金曜日。人の流れが微妙に違う。

明日は掃除と洗濯と…たまに実家にでも帰るか。そんな事をぼんやり頭に描いていた。

珍しく帰りの電車内で座席に着く事が出来たので座って目を閉じる。


本当…………何も無いなぁ…。


そうだ。冷蔵庫に中に何が入ってたっけ?

あ。水曜に録画していたドラマ、まだ見てないや。

来週ライブに着ていく服が無いから買いたいな。

駅前の本屋に寄らなきゃ。新刊出てるんだ。

あの作家も新刊は異世界の話とか書いてあったな。みんな……………逃げたいのかな…?


何から逃げる?

今と言う現状?

逃げてどうなる?どうにもならないよ、きっと。

……………くだらない。

そんな話を反芻するだけ無駄な話だ。

結局は非現実で実際にはあり得ない話。

まぁ…あり得ない話だから、皆んな逃避する訳で、それを胸に秘めて糧として生きていく。

明日も、明後日も。

ずっと、ずっと。


その瞬間だった。

車内が暗転。停電?

そう思った次の瞬間、空間を切り裂く様な金属音を響かせながら電車が急停止をした。

色々な叫び声と投げ出された音。何人か転倒したみたいだ。呻き声も聞こえる。

暗闇で全ては把握出来ないけど、何人かはこの異常事態に右往左往している。

車内アナウンスは…未だ無い。

車掌さんが来るかな?それまで動かない方が良いか?

そんな考えをしている中、もう一度車体が揺らいだ。その衝撃で前に投げ出されてしまう。

冷たい床に叩きつけられる様にして止まった。

周りも騒めく人々の声がする。足音。騒音。


次の瞬間に聞こえたのは又、あの不気味な金属音。


気持ち悪いくらいに切り裂く音は、何処かで聞いた事がある。

ああ。あれだ。

何かのゲームの世界で暴れていたドラゴンの遠吠えに似ている。こんな状況下でドラゴンを思い出すなんて笑える話だ。

慌てふためく周りの乗客達が一斉に扉へと集中した。


自分も…逃げなくては。


そう立ち上がった時だった。

ふわりと何かが歪む感覚に陥る。

何重にも重なり合うドラゴンの様な遠吠えを聴きながら。

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