第4話
アマンダとルークが使える魔法を上級までとしました。
「はぁっはぁっはぁっ」
ハジメは今、両親に手を引かれながら地下にある避難所を目指していた。
(くそっ、身体が小さいせいで走るのが遅い‼︎)
両親が、遅い自分に合わせて走っているのにハジメは気付いていた。
「父さんっ、母さんっ」
「どうしたっ?」
「なにっ?」
振り向くと額にやや汗をかきながら、それでもなにも無いように笑顔を見せてくれる2人。
「・・・・・ごめんね」
「「なにが?」」
「え?いや、足引っ張ってる「なに言ってんの‼︎」からさ」
アマンダが激しく怒った。
「っ⁉︎」
アマンダに今まで、これほど怒鳴られたことはなかった。そのため、かなり驚いた。
「ハジメ、あなたは私たちの大事な息子なの‼︎」
「うん・・・」
「だからね、あなたは私たちにもっと頼ればいいのよ」
「うん・・・」
「お母さんおんぶしてとか、ねっ」
そういうと、アマンダはウインクをして前を向いた。
「いやー、父さんが出る幕なかったなぁ。はっはっはっ。でも、5歳でおんぶってどうなんだ?」
といって、ルークも前を向いた。
ルークはアマンダに、余計なことは言わなくていいのっと頭を叩かれていた。
(いつか、俺が2人に頼られる存在になりたい。)
2人の背中を見ながら、そう心に誓うハジメだった。
北の地下入口付近。
カムイ親子は地下に行く入口付近まで来た。
「どうしよう・・・」
ハジメは目の前の光景に呆然とするしかなかった。
「おらぁーーっ、先に入らせろぉ!」
「どけぇー‼︎邪魔だぁ‼︎」
「ちょっと‼︎どきなさいよ‼︎」
地下の入口付近には街人がごった返していた。中には、怪我をしている人もいる。
「私兵は何をやっているの‼︎」
こんな状況を目の当たりにしたアマンダが怒りあらわにする。
「アマンダ、とりあえず落ち着くんだ」
「でも・・・・あれじゃあ」
そう言って、もう一度街人がごった返しているところを見る。
「となると、・・・・あそこに行くしかないか」
ルークが顎に手を当てながら、呟いた。
「っ⁉︎でもあなたあそこは‼︎」
ルークの呟いた言葉にアマンダが大きく反応した。
(あそこ?)
ハジメは2人の会話上の意図が見えず、疑問を浮かべる。
「もう時間がない。行くしかないだろう」
「・・・・分かったわ」
アマンダは少し逡巡してから、ルークの考えに賛同する答えを出した。
「ハジメ、俺たちは今から南へ向かう」
「え⁉︎大丈夫なの?」
今ハジメ達がいるのは、教会から一番近いところにあった地下への入口で、北の辺りだ。そのため、北から南へ街を横断することになる。ハジメが心配するのも無理はない。
しかし、クエントは北部に住宅が密集しているため、ほとんどの街人は北の避難所に集まる。そのため、南の避難所はここよりかは余裕がある。
「大丈夫だ。父さんと母さんは、これでも上級魔法を使えるんだぜ?」
アマンダはこれでもってなによと口を尖らせている。
書斎に魔法書があったため、2人が魔法を使えることはある程度知っていたが、まさか上級魔法を使えるとは思わなかった。
「そうなんだ。すごい!」
「だから、安心して付いて来い‼︎」
「うん‼︎」
「あっ、でも途中でおんぶは勘弁な。よしっ行くぞ‼︎」
ルークを先頭にハジメ、アマンダとなるように走り出した。
ルークはまたアマンダに頭を叩かれていた。
北から南への横断中間地点。
「ふぅ〜、半分くらいまでは来たな」
ルークが一旦足を止めて小休止する。
「ハジメ、大丈夫か?」
「う、うん」
(キ、キツイ)
ハジメは肩で呼吸しているのを隠そうとしているが、ルークやアマンダが見れば、嘘をついていることくらいすぐ分かる。
「はぁ〜、頼っていいってさっきも言ったのに」
アマンダが大きくため息を吐きながら、ハジメに言う。
「う、うん」
(うーむ)
転生してからの年月を含めると、精神年齢が20歳を超えているためだろうか。あまり、人に頼りたいという気持ちが湧かないのだ。
そうこうしているうちに、上がっていた息も落ち着いてきた。
「俺、もう大丈夫だよ」
ルークとアマンダはハジメに鋭い眼差し向けた後、表情を少し柔らかくした。
「よしっ‼︎あと半分だ頑張るぞ‼︎」
ルークが気合の一言と同時に、一歩目を踏み出そうとした
その時
ボコオォォォォン‼︎
ハジメ達の頭上から何かが吹き飛んだような音がした。
「「「っ⁉︎」」」
3人が同時に頭上を見上げると、澄んでいてきれいだった青空が橙色に染まっていて、太陽が近くにあるかのような熱さが近付いていた。
「「我、目の前に如何なるものも防ぎ通さん壁を発現す」」
『『防御結界‼︎』』
ルークとアマンダが瞬時に『防御結界』を張り、崩れ落ちてくる瓦礫と熱風から自分達を守る。
ーーーガンッガンッガンッミシッミシミシ
落ちてくる瓦礫と熱風により、『防御結界』が悲鳴をあげる。
「くっ‼︎」
「んっ‼︎」
ーーーーーーーーー。
なんとか耐え切った。
「みんな大丈夫か?」
「私は大丈夫よ」
「俺も大丈夫だよ」
ルークはみんなの無事を確認したところで肩の力を少し抜いた。
「ふぅ〜、一体何だったんだ?ドラゴンか?」
「たぶんそうね。方角的に東門からだったもの」
「ここいるのは危険だと思う。早く行こう」
ハジメ達は、周りに転がっている瓦礫の山を横目に南の地下入口を目指して再び走り出した。