第3話
鉄貨100枚で銅貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚
銅貨は1枚1000円。銀貨は1枚10000円。金貨は1枚1000000円、白金貨は1枚10000000円
に変更しました。
「ハ、ハジメ、そろそろ行くぞ」
ジャケットに帽子という、いつもよりもお洒落気を出しているルークがそわそわしながら、ハジメを待っている。
「ハ、ハジメ、早くしなさい。」
アマンダもルーク同様そわそわしながら、ハジメを待っている。
「はーい!もうちょっと待って!っ⁉︎「ゴドッ」いたっ‼︎」
ハジメも興奮している所為か、先ほどから色々なところにぶつかっている。
そわそわするのも無理は無い。今日は待ちに待ったハジメの『神託の日』なのだから。
「よしっ、身だしなみは大丈夫‼︎」
今日のハジメは、白を基調とした、襟から腕にかけて青のストライプが入ったジャケットを着込んでいる。さらに、首には透明度の高い翠色の石がはめ込まれたネックレスをしている。
この日のために、両親が給料の半分も出して買ってくれたものである。
「父さん、母さんお待たせ」
「かっこいいぞ‼︎ハジメ‼︎」
「えぇ、とても似合っているわハジメ」
両親に褒められ、ハジメの頰に朱が差す。
「は、早く行こう‼︎」
恥ずかしさを隠すように、両親を急かしながら子供らしく早歩きするハジメであった。
クエント東門。
「いんやぁ、平和だねぇ」
「んだなぁ」
クエントの東門の守衛が、今日もいつもと変わらない会話をしている。
「そういえばさ、お前今度結婚するらしいじゃん」
「おうよ。めっちゃ美人だぜ」
「いいなぁ、俺も結婚してーわー」
「アッハッハ、お前にはまだはえーよ」
そんな、極々普通の幸せさえ感じる会話にも終止符が打たれた。
それは突然にやってきた。
ッツギャアオオオオオォォォォ‼︎
「「な、なんだ⁉︎」」
東門の守衛が突然の奇音に声を張り上げる。
この奇音はもちろんクエント全体に響き渡っていた。
ーーーーーーー数分前ーーーーーーー
カムイ親子は神託を受けるために、クエントに唯一ある教会へと向かっていた。
「母さん、今日の夕ご飯ってなに?」
「今日は特別な日だから、ハジメの大好きなステーキよ」
「やった‼︎」
そんな他愛もない話をしながら道を歩いていると、屋台がぼちぼち見え始めた。
「父さん、母さん、屋台でなにか買っていこーよ」
「おう、いいぞ」
「ええ、なにか食べましょうか」
しばらく歩いていると、そこで美味そうな匂いを発する屋台があった。
(串焼きっぽいな)
「あそこにしよう!」
すると、ハジメは足早に屋台に向かって行った。
そんなハジメに、ルークとアマンダは微笑ましく思いながらついて行った。
「おじさん‼︎これ1つちょーだい‼︎」
「あいよっ‼︎1つで5イェンな‼︎」
「はい」
チャリン。ハジメはおじさんに鉄貨5枚を手渡した。
やはり串焼きの屋台であった。そこそこでかい肉のブロックが4つ串に刺さっていて、焦茶色のソースがかかっている。美味そうだ。
(5イェンか安いな。日本だったら4倍くらいの値段だな。)
そう、この串焼きは日本と比べるととても安いのである。
この世界の通貨は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の5つの通貨があり、通貨の単位はイェンだ。
鉄貨1枚分を1イェンとしていて、鉄貨100枚で銅貨1枚。銅貨10枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚。金貨10枚で白金貨1枚である。
アマンダに市場について聞いたところ、日本円で換算すると、鉄貨は1枚10円。銅貨は1枚1000円。銀貨は1枚10000円。金貨は1枚1000000円、白金貨は1枚10000000円となることが分かった。つまり串焼きは鉄貨5枚であり、日本円にすると50円になるのだ。
「あいよっ‼︎おまたせぇ‼︎」
「ありがとう‼︎」
(ではでは、いただきます‼︎)
パクッ
肉ブロックに噛み付くとそこから、肉汁が止めどなく出てくる。ソースも焦がし醤油みたいな感じで、香りが口のなかを駆け巡る。
「うまい‼︎」
(やばいな美味すぎだろう。この安さでこの美味さ。最高‼︎)
「「ハジメ」」
肉ブロックを頬張っていると、後ろからハジメを呼ぶ声がした。
「うん?」
串を片手に振り向くと、ルークとアマンダが苦笑いしていた。
「ハジメ、父さん達の分は買ってくれないのか?」
(あっ)
「ごめん、すっかり忘れてた」
てへっ。と可愛らしく頭に手を乗せて2人に謝った。
「はぁ、おじさん2つくれ」
「あいよっ‼︎10イェンな‼︎」
「はいよ」
チャリン。ルークが2人分の串焼きを買った。
「あいよっ‼︎おまたせぇ‼︎」
「ありがとう」
ルークは2つもらった串焼きの1つをアマンダに手渡した。
「はいよ。アマンダ」
「ありがとう。あなた」
そして、2人が串焼きを食べようとしたその時。
ッツギャアオオオオオォォォォ‼︎
「「「っ⁉︎」」」
耳をつん裂くような奇音が肌をピリピリとさせる。
「なんだ⁉︎」
ルークが辺りを見回す。
「おいっ‼︎あれなんだっ‼︎」
近くにいた街人が東門の方向に指を指している。その指は小刻みに揺れているように見える。
その街人の周辺にいた者達は、指の指す方向へと顔を向ける。
「「「「「んなっ⁉︎」」」」」
そう、街人が指を指した先には
『天災を呼ぶ飛竜』がいたのである。
今、ハジメの目にはドラゴンが映っている。
(嘘だろ⁉︎なんでドラゴンがいんだよ‼︎しかも、今日に限って‼︎)
ドラゴンとは、魔物の中でも天災級と言われている存在で、一般市民ではまず太刀打ちできない。それどころか、王国の精鋭近衛兵団でも勝てるか分からない。
魔物にも階級がある。
普通級、希少級、極希少級、伝説級、天災級、天帝級である。
気が動転しつつあるハジメのすぐ横から、大きな声でハジメを呼ぶ声があった。
「ハジメっ‼︎」
ルークである。
「と、父さん」
ルークが必死の形相でハジメの目線まで腰を下ろし、ハジメの両肩を力強く掴んだ。
「いいかハジメ。落ち着くんだ」
ルークのその力強い瞳に、ハジメの気持ちも幾分か和らいできた。
「うん」
「街には地下に避難できる場所がある。」
「うん」
「父さんと母さんと一緒にそこまで走るんだ」
「うん。分かった」
すると、ルークとアマンダがハジメに手を伸ばしてきた。ハジメは震える手をできる限り握り殺し、2人の手を取るのだった。
クエント東門。
「早く配置につけ‼︎」
銀色に輝くプレートメイルに身を包んだ兵士達が、街人を守るべくドラゴンの迎撃準備に勤しんでいた。
この兵士達は、クエントを含めた地域一帯を治めるベルヌート子爵の私兵である。
この国にも爵位があり、騎士、準男爵、男爵、子爵、伯爵、辺境伯爵、侯爵、公爵、王族となっている。
「迎撃準備完了しました‼︎」
「よしっ‼︎バリスタ構え‼︎」
ガチャッガチャッ
飛竜の迎撃専用バリスタをドラゴンに向ける。
「撃て‼︎」
ーーーードドンッドドンッドドンッ
バリスタから鏃を撃つ音が東門一帯に響き渡る。
ーーーーガッガッガッガッガッ
ドラゴンの体に鏃が当たるが、すべて弾かれる。ドラゴンに効いた様子は全く無い。
グゥオオォォォ‼︎
刺激を受けたせいか、ドラゴンが咆哮し同時に口の中に炎が集まっていく。
「『火炎息吹』が来るぞ‼︎」
「魔法班は『防御結界』を張れ‼︎出し惜しみするなよ‼︎」
紺色のローブを着た集団が前衛に出てきた。そして、詠唱を始めた。
「「「「「「「我、目の前に如何なるものも防ぎ通さん壁を発現す」」」」」」」
『防御結界』
魔法班の目の前には、透明な壁のようなものが何重にもなって、目の前の攻撃を防がんとしている。
ガアァォァァァ‼︎
そして、ドラゴンの口からブレスが放たれる。炎の色は触れたものはなんでも熔かせそうな、とても濃い橙色をしている。
ーーーードコオォォォン‼︎
防御結界にブレスが激突した。しかし、ブレスが止まったのはほんの一瞬。
ーーーービキッーービキビキッ
ーーーバリーーン‼︎
魔法班が張った防御結界は跡形もなく粉々になり、ブレスは射線上にいた私兵達を巻き込みながら、クエントの街を襲った。
初めて、戦闘シーンを書きました。うまく書けてるでしょうか・・・・。