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路地裏から生まれた世界最強(旧:路地裏生活から生まれた世界最強)  作者: 蒼たばすこ
3章 始まる冒険者生活
20/22

第19話





「ハジメとリーズベルは今、森の中を歩いている」










「なに言ってるの?」


「いや、もし小説とかだったらこういう感じで話が始まるのかなって」


「くだらないこと考えてないで早く進むわよ」


「へいへい」







ハジメとリーズベルは今、森の中を歩いている。


ーーー参考文献「路地裏生活から生まれた世界最強」、第19話、一行目より引用。


さて2人が進み過ぎてしまう前に、なぜ2人は森の中を歩いているのか回想に入ろう。



ーーーーーーー回想ーーーーーーー



「はっはっはっ‼︎まさかやられるとは思わなかった‼︎」


メンフィスは意識を取り戻した後ハジメを再び部屋に呼び、机を挟んで向かい合って座っていた。


「爺さんが弱すぎんだよ」


「はっはっ、返す言葉もない‼︎俺ももう、ただの老ぼれだな。ところで、模擬戦の時ハジメ君の姿が一瞬消えたんだが、あれはなんだ?」


「あれは・・・・・」


(別にこの人に隠す必要はねぇか)


「ユニークスキルだ」


「ほぉ」


メンフィスの目が一瞬光った気がした。


「《瞬光》っていうユニークスキルだ。これは簡単に言うと、光の速さで動けますよっていうスキルだな」


「光の速さ?」


「あぁ、光の速さってのは・・・・ま、めちゃくちゃ速いってことだ」


「なるほどな、そのユニークスキルは強すぎるな」


「いや、この《瞬光》にも弱点があってだな。一回で無限の距離を進めれる訳じゃなくて、自分の半径50mずつしか進めない。それとめちゃくちゃ魔力使うんだよね」


「ん?スキルに魔力は使わないはずだが?」


「魔力を体に纏わないと移動中に俺が途中で消えて無くなるからな。最初に1mくらい何もやってない状態で《瞬光》を使って進んだ時、空気の摩擦なのかは知らんが体を全身火傷したんだよね。たぶん、50m進んでたら灰に・・・・いや、何も残らなかっただろうな」


「ふむ、弱点を俺に教えてもよかったのか?」


「別に教えたところで負けねぇしな」


「言うじゃねえか。俺なんかじゃあ一生勝てないとでも?」


「あぁ、早いとこ隠居するんだな」


「なんだ?お前が次のギルドマスターになってくれるのか?」


「いやならねぇよ」


「すでにギルドマスターになる資格の1つはクリアしてるんだがな」


「は?」


「ギルドマスターになるには3つの資格が必要だ。1つ目は他のギルドマスター2人以上からの推薦。2つ目は冒険者ランクがSS以上であること。そして、3つ目がギルドマスターに勝つことだ」


「ジ、ジジイまさか‼︎」


「いや、これを狙ってはない。たまたまだ。そうたまたまだ」


「同じことを2回言うところが怪しいんだが・・・・・・・まいいや」


「おっ‼︎ギルドマスターになってくれるのか‼︎」


「ちげぇよ⁉︎もう面倒くさいから早く話を進めてくれ‼︎」


「ふむ、仕方ないな。・・・・では、ハジメ君にあるクエストを受注してもらいたい。これだ」


そう言いながら、メンフィスは一枚の依頼書をハジメに手渡した。


「・・・・・おいおいマジかよ」


依頼書に目を通したハジメは、思わずその内容に呟く。


「・・・・駄目か?」


「いや、駄目ではないけど俺の予想以上だ」


「そうか駄目ではないか。なら受けてくれるな?」


「あぁ受けるよ」


ハジメはメンフィスの目を見ながら、了承する。


「じゃあ、よろしく頼むぞ。無事に君から依頼達成の言葉が聞けるのを楽しみにしている」


メンフィスは席を立つと、ハジメの肩を一度叩き部屋を出て行った。


「ふぅ〜」


閉まった扉を見た後ハジメは軽く息を吐き、手元の依頼書をもう一度見た。


その依頼書にはこう書かれていた。




天災を呼ぶ飛竜(ドラゴン)の討伐


※複数体の確認あり。よって、全滅を任務達成とする。


【場所】

クエン火山付近


【成功報酬】

400万イェン


【依頼者】

メンフィス・イール・バックス



「これを達成すれば白金貨4枚。ドラゴンを売ればもっと貰えるだろうな。よしっ‼︎いっちょやりますか」


ハジメは下で待っているリーズベルに、このことを伝えるべく駆け足で部屋を出ていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー





「リズゥ、暑いぃぃぃ」


「そうね」


ハジメとリーズベルはクエン火山の麓を歩いていた。


「暑いぃぃぃ、死ぬぅぅぅぅ」


「・・・・・・」


「もう駄目だぁぁぁぁ、暑いぃぃぃ、水ぅぅぅぅ」


「もう‼︎うるさいわね‼︎」


「なんで麓なのにこんなに暑いんだよ‼︎」


「このクエン火山は火の精霊がすごく活発らしいわよ」


「あー、だからか」


リーズベルの話を聞きながら、ハジメは怠い体を一生懸命に動かす。


「そろそろ中腹地点ね」


「ここからじゃまだドラゴンは見えねぇな」


「えぇ・・・・でも違うお客さんが来たようね」


「そうみたいだな」


リーズベルとハジメの視線の先には、翼を動かしてこちらに飛んでくる何かがいた。


下等飛竜(ワイバーン)ね」


「俺としてはドラゴンでよかったんだけどな」


「文句言ってないで早く倒して」


ハジメは肩を回しながらワイバーンに向かって歩いていく。


「よーし、お前らそこ動くなよ」


「いや、それは無理でしょう」


後ろからリーズベルがツッコミをいれる。


「そんなことないぞ?」


ハジメがリーズベルに視線を促すとワイバーンが伏していた、


「それは貴方が魔力を当てているからでしょう?」


そう、ハジメは魔力を発することでワイバーンに恐怖心を与えていた。


「じゃーな蜥蜴劣等種(ワイバーン)、『聖光の十字架(ホーリークロス)』」


前に出した手に、身長と同じくらいの十字架の形をした光が現れる。


ハジメはそのまま手を前に押し出すように動かし、光の十字架をワイバーンの群れへと飛ばす。



ーーーーードンッ



飛ばされた光の十字架が1体のワイバーンに当たると、他のワイバーンも巻き込んで巨大化した。


「掃除終了、っと」


巨大化した光の十字架が消滅すると、そこには何も残っていなかった。


「貴方、『聖光の十字架(ホーリークロス)』好きよね。明らかにオーバーキルだわ」


「なんかかっこよくね?」


「私にはよく分からないわね。しかもトドメ刺すとき、ワイバーンの名前変わってたわよ」


「え、まじ」


「自覚ないなんてワイバーンも可哀想ね」


「南無阿弥陀仏。んじゃ、登山再開するか」


「・・・・・・・・えぇ」


ハジメはワイバーンを軽く弔ってから頂上を目指すのであった。







「あそこが頂上か?」


「そうみたいね」


2人は頂上のすぐ傍まで来た。周囲の暑さはさらに増している。


「ドラゴンはどこにいんだよ」


「依頼書にはクエン火山付近としか書かれてなかったものね」


「一発魔法飛ばすか」


「え?ちょ、ちょっと待ちな「『光撃弾(ライトバレット)』‼︎」」


ハジメはリーズベルの言葉を聞く前に『光撃弾(ライトバレット)』を頂上に向けて放った。



ーーーーードォンッ



「・・・・・・・ドラゴンは居そうにねぇな」


「・・・・・・・そうみたいね」


頂上に着弾してから少し経つが、何も変化はない。



「とりあえずもう一回付近を歩くか」


「そうしましょうか」


そう言って2人が歩き出そうとする。



ーーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴッ



「な、なんだ⁉︎」


突然山が音を立てて大きく揺れだした。そして、



ーーーーーードガーンッ



山が大噴火を起こした。


「「え」」


2人はその光景に目を張り、表情を固まらせる。


「や、やばくないか?」


「十中八九貴方の所為ね」


会話している間にも2人に向かって、頂上からマグマが降ってきたり押し寄せてきている。


「退却‼︎」


「まったく‼︎」


2人は咄嗟に判断して、回れ右で来た道を戻る。


「あちちっ‼︎」


「きゃっ‼︎」


退却している間にもマグマが降ってくる。


「ハジメ‼︎貴方がどうにかしなさいよ‼︎」


「この山消していいならどうにかできるけど‼︎」


「それはダメよ⁉︎・・・・・いえ、やっていいわ‼︎」


「お?どうしたんだ?」


「この山を消したら、一緒にドラゴンもやられたりしないかしら‼︎」


「そんな都合いいことは起きないだろ⁉︎」


「でもこのままだとマグマが周囲の森を焼いてしまうわ‼︎一石二鳥よ⁉︎・・・むしろ私達の被害も最小限で一石三鳥よ⁉︎」


「うーむ、リズがやっていいって言うならやるけどさ、後でメンフィスに何か言われないか⁉︎」


「そこは任せるわ‼︎」


「おう‼︎・・・・・・っじゃねーよ⁉︎そこは任せて‼︎だろーが‼︎」


「ちっ」


「おい‼︎今舌打ちしたろ⁉︎」


「ガタガタ言ってないで早くやりなさいよ‼︎」


「なんで逆ギレ⁉︎・・・・・あぁっもうっ‼︎どうなっても知らねぇからな⁉︎」


ハジメは、山の麓まで来たところで足を止めて後ろを向き魔法を放つ。


大聖光の太陽(イクスホーリーザサン)‼︎』


すると、クエン火山の上に超巨大な光の球体が現れる。


「どっせい‼︎」


ハジメがかざした手を下に降ろすと、球体が山の頂上から下に向かって落ち始めた。



ーーーーーードドドドドドッ






数分後。


「いやー、見事に何も無くなったな」


晴れやかな顔をしているハジメの目の前の地面には、直径10kmほどの穴が空いている。元々山があった場所である。


「・・・・・思った以上にやらかしてしまった感がヤバイわ」


結局、山の麓部分だけを残して、そこ以外をくり抜いたような地形になっている。例に挙げると・・・・・シャンプーハットみたいな感じだろうか。


「ドラゴンを殺せたのかも分からんしな」


「でも、こんなに強力な範囲攻撃魔法を放ったのに反応が無いってことは、ここにはもういないんじゃないかしら」


「・・・・なぁリズ、それだと余計に俺らヤバイんじゃね」


「・・・・・・・・」


自分達の所為で山を噴火させ、周囲に被害が出ないように山を消滅。だがドラゴンは討伐出来ているか分からない。最悪である。


「だ、だったらいっそのこと周囲全部吹き飛ばせばドラゴンも殺せるんじゃねーのかな?なんて、どう思うかねリズさんや」


「そ、そうねいけるかもしれないわね」


目が完全にイっちまっているハジメとリーズベル。自分達の首をさらに絞めようとしている。


「よ、よーし行くぞ〜」


ハジメが『大聖光の太陽(イクスホーリーザサン)』の倍以上の魔力を練り始める。


だが、ハジメが魔力を練り終わったその瞬間。




グオオオォォォォ


グオオオォォォォ






「お?」


「あら?」


少し離れた所からドラゴンらしき声が聞こえた。


「リズ‼︎」


「えぇ‼︎」


目に光が戻った2人は、声がした方へと駆け出す。


「確かこっちのほうだったよな‼︎」


「そのはずよ‼︎」


森の中を駆け抜けながらドラゴンを探す。



グオオオォォォォ



「っ‼︎こっちだ‼︎」


ハジメが、再び声のした方へ走る方向を変える。



グオオオォォォォ



「近いぞ‼︎・・・・あれは⁉︎」


「えぇ‼︎・・・・・煙かしら⁉︎」


方向を変えて走った先には、煙が立っていた。


「もしかして村か⁉︎」


「かもしれないわ‼︎」


「だったら急がねぇと‼︎」


2人は全速力で森を駆けていく。そして


「おいおい‼︎マジかよ⁉︎」


森を抜けた先には、10体ほどのドラゴンに襲われている村があった。


「た、助けてくれぇぇ‼︎」


「ぎぃやあぁぁぁ‼︎」


「熱い‼︎熱い‼︎」


2人の目の前には阿鼻叫喚の図が広がっていた。


「リズ‼︎助けるぞ‼︎」


「分かってるわ‼︎『炎撃弾(フレイムバレット)』‼︎」


2人の魔法がドラゴンに当たるが、リズの『炎撃弾(フレイムバレット)』はドラゴンを傷つけることは出来ない。


「リズ‼︎そのままドラゴンを引きつけてくれ‼︎『聖光の十字架(ホーリークロス)』‼︎」


だが、リズの魔法により引きつけられたドラゴンが、ハジメの『聖光の十字架(ホーリークロス)』によって次々と塵も残さず消えていく。



クギャアァァァァッ



そして、最後の一体を倒し終わった。








「これは酷いな・・・・・」


「騎士達に救援を頼んだ方が良さそうね・・・・・」


ドラゴンを倒し終わった2人は、壊滅状態になっている村を前に固まっていた。


「すみません。お二人は冒険者の方でしょうか?」


すると、1人の50歳くらいの男性がやって来た。


「は、はい」


「え、えぇそうよ」


2人がそう答えると、男性が頭を下げてきた。


「ありがとうございました‼︎」


ハジメは、頭を下げる男性に対して何て言葉を返していいのか分からず、拳を握る。


(実際、死者はかなりの数が出てるだろうな。くそっ、もっと早く来ていれば‼︎)


「ハジメ・・・・・・」


リーズベルは、ハジメが体の横で拳を強く握っていることに気が付いていた。


「おにぃちゃん‼︎おねぇちゃん‼︎」


ハジメとリーズベルが男性を前に固まっていると、自分達よりも小さな女の子が走ってきた。その後ろにはお母さんらしき女性が歩いている。


「なにかな?」


ハジメは精一杯の笑顔で女の子と顔をあわせる。


「おかあさんとわたしをたすけてくれてありがとうっ」


女の子も男性と同じく、ハジメとリーズベルにお礼を言ってきた。


「あの、私からもお礼を言わせてください」


ハジメが固まっていると、女の子の後ろにいた女性も口を開いた。


「私の夫は死にました。でもあなた方のおかげでこの子を失わずに済みました。私の夫はもう戻ってきませんが、まだこの子がいます」


そう言いながら女性は女の子の頭を撫でる。


「あなた方に責任はありません。失った命よりも助けた命があるんだということを忘れないでください。」


「「っ」」


女性の言葉は、ハジメとリーズベルの心に強い衝撃を与えた。


「この度は本当にありがとうございました」


「「・・・・・・・・」」


(そうか、助けられた者もいるのか。そんなこと全然考えていなかった。)


「リズ」


「何かしら」


「彼らのお礼は受け取るべきだ」


「そうね。私もそう思うわ」


ハジメとリーズベルはお礼を素直に受けることにした。


「では村の復旧をしなければいけないので、私達はこれで失礼します。」


そう言うと、3人は向こうに歩いていった。女の子は母親と手を繋ぎながら、もう片方の手でハジメ達に手を振っている。


「リズ、俺もっと強くなるぜ」


「そうね・・・・・でも貴方どうやってそれ以上強くなるの?」


「決まってるさ。強者と戦えばいい。俺はもう討伐依頼はSランク以上しか受けねぇ」


「私生きていられるかしら」


「大丈夫だ。俺がいるからな」


「・・・・・・・・そうね」


「・・・・さて、そろそろ帰りますか」


「帰ったらすぐに騎士団のところへ行きましょう」


「そうだな」


2人は村の救援要請をすることを決めながら、街へ帰るのだった。






「あーっ‼︎ドラゴン全部塵にしちまった‼︎なんも売れねぇじゃん‼︎」


「はぁ〜、別にいいじゃない。依頼達成だけで白金貨4枚貰えるんだから」


「そうだけどさ・・・・・・・あーどっかにドラゴン飛んでねぇかな」


「そんな簡単にいるわけないでしょ」


「だよな〜・・・・・・あ、いた」


「え⁉︎」


2人は途中、寄り道をして帰るのだった。

ハジメとリーズベルは付き合ってませんよ?

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