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路地裏から生まれた世界最強(旧:路地裏生活から生まれた世界最強)  作者: 蒼たばすこ
2章 始まる路地裏生活
17/22

第16話


ハジメとリーズベル、そして野蛮な男達以外誰も居ない路地裏。


ここで男の子の声が響く。


「頼むっ‼︎リーズベルだけは見逃してくれ‼︎」


ハジメは取り巻きに拘束され、さらに軋む骨に脂汗をかきつつ叫ぶ。


「ゲヘヘヘ、どうすっかな」


「あぁ、そうだ。あのガキの目の前で犯すってのはどうだ?」


「いや、こんな小せぇガキでヤれるかよ」


「それもそうか。じゃあどうすっか」


リーズベルを拘束している男達がリーズベルをどうするか決めかねている。


「おい」


すると、リーダー格の男が途中で声を発した。


「「へい、なんすか」」


リーズベルをどうするか話していた2人は会話をやめる。


「犯さなくていい。こいつは金になる。顔はかなり整ってるからな」


そう言うと、拘束を解こうと暴れるリーズベルに近づき腹を殴り気絶させた。


「リーズベル‼︎‼︎」


それを見たハジメはさらに声を張り上げる。


「おいおい、クソガキうるせぇぞ。ちょっとだまれや」


リーダー格の男は、次はハジメに近づくとリーズベルと同じように腹を殴った。



ドスッ



ーーーーチャリン



「あん?」


リーダー格の男がハジメの腹を殴ると、ハジメのジャケットから硬貨が落ちてきた。


「おいおい、こりゃあ・・・・」


男は呟くとハジメのジャケットを漁り始めた。そして、


「・・・・やったぜ‼︎こいつは大当たりだ‼︎」


「どうしたんすか‼︎兄貴‼︎」


いきなり興奮気味に声を上げたリーダー格の男に、取り巻きの1人が尋ねる。


「こいつを見ろや」


男は手に持っていた袋をその取り巻きに渡した。


ジャラ


「こ、こいつは‼︎やべっすね兄貴‼︎」


「お、おい何がヤベぇんだ?」


他の取り巻きも袋の中身を見る。


「うひゃあ‼︎金貨が30枚は入ってるぜ‼︎」


「これで、当分は遊び放題だぜ‼︎」


「兄貴、このガキはどうします?」


「男はいらん。捨てておけ」


「そ、それじゃあこのガキには何してもいいんすか⁉︎」


「あぁ、好きにしろ」


「よっしゃ‼︎新しい玩具が増えたぜ‼︎」


そんな取り巻き達を横目に、リーダー格の男はリーズベルを肩に担いで路地裏から出て行く。


「ま、待て‼︎‼︎」


ハジメは背中を見せているリーダー格の男に向かって行こうとするが、取り巻きによる拘束から逃れられない。


「待ってくれえぇぇぇ‼︎‼︎」


「うるせぇクソガキ‼︎」


バキッ


「ぐあっ」


ハジメは取り巻きのパンチを顔面に受ける。体の両サイドを取り巻きに拘束されているため、衝撃を逃すこともできない。


「いやー、やっぱストレス発散になるわ。ゲヘヘヘ」


「おいおい、次は俺だぜ?おらっ」


ドゴッ


「うっ」


「次俺な。おぅらっ」


ドスッ


「が、あ」


「ひゃはははは」


バキッ


「うぅ」


「まだ、くたばるなよ?クソガキ」


ガスッ


「かはっ」


ドゴッ


バキッ


ゴスッ


ゲシッ


バゴッ


バシッ


ベキッーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーー













あれから、どのくらい殴られていただろうか。途中から記憶がない。気付いたら取り巻きは消えており、俺1人だけになっていた。


「っくそ・・・・・」


もはや、声を出すのも息をするのも体を動かすのもキツい。


「リーズベル・・・・」


今ハジメが考えているのはただ一つ。リーズベルの救出。それだけだ。


それなのに体が動かない。こんなにもどかしく、己の弱さを感じたのはルークとアマンダを亡くしたとき以来だ。


「な・んで・・俺は・・こ・んなに弱い・・んだっ」


ーーーーポツンッ


ーーーーポツンッ



雨が降り始め、仰向けになって倒れているハジメの顔を濡らし始めた。








雨が止んだ頃、ハジメは壁に寄りかかりながら脚を伸ばして座っていた。


(リーズベルを助けに行くとしても今の俺じゃ無理だ。体を治さねぇと)


「・・・となると、先ずは飯と治療か」


雨に打たれ少し冷静になったハジメは、痛む体に鞭を打ち立ち上がる。


「リーズベル待ってろよ。すぐ行くからな・・・・・」


肩を押さえ足を引きずりながらも、微かに見える光に向かって歩き出した。












ーーーーリーズベル視点ーーーー


「・・・・ここはどこ?」


リーズベルは目を覚ますと、少しの灯りに照らされた薄暗い場所にいた。体は縄で縛られており、身動きができない。顔を動かして周りを見渡すが、木箱が沢山あるだけであとは何もない。


「起きたか、嬢ちゃん」


すると、前のほうから男の声が聞こえてきた。


「貴方・・・・・・・」


「おっと、そんな怖い顔で睨むんじゃねぇよ。可愛い顔が台無しだぜ?」


「うるさい‼︎ここはどこなの‼︎この縄を解きなさい‼︎」


「あーあー、うるせぇな。縄を解くわけねぇだろ。せっかくの商品なんだ」


リーズベルはビクッと肩を揺らし、口を開いた。


「・・・・・・商品?」


「あぁ、商品だ。お前はこれから奴隷商に売る。いやぁ、いい値段で取引できそうだぜ‼︎」


「っ」


リーズベルは結局奴隷商に売られるのかと目を見開く。


「・・・・・・なんでっ」


「あん?」


「なんでよ‼︎折角ここまで逃げてきたのに‼︎なんでなの‼︎」


リーズベルは悔しさで目から涙が出てくる。


「おいおい泣くなよ。まぁ、俺には知ったこっちゃねぇがな。じゃまた後でな」


そう言って男は部屋の奥に消えていった。


「うっ、うっ・・・・・ハジメ・・・」


リーズベルは泣きながら1人の少年を思い浮かべる。


「・・・・・・・助けてハジメ」




ーーーーーーーーーーーーーーーー






ボロボロのハジメは、周りの街人から冷たい視線を受けながら大通りを歩いていた。


「飯・・・・」


ハジメは飯を探している。


すると、ハジメの鼻にいい匂いが漂ってきた。


「飯‼︎」


ハジメは匂いの元を辿りながら、必死に歩き出した。



「串焼きか・・・・・」


匂いの元に辿り着いたハジメは目の前の屋台に目を細めた。


ハジメが思い出すのはドラゴンに襲撃される前に立ち寄った屋台。そして、燃える薪を前にリーズベルと食べた魚の串焼き。


「よし」


ハジメは頭を振り、一言気合を入れると屋台の主人の前まで歩く。


「・・・・・なんだぁ?」


屋台の主人は目の前に立った、ボロボロの少年に怪訝そうな視線を送る。


「おっちゃん、串焼きをくれ」


「金はあるのか?」


「金はない。これでどうだ?」


ハジメはボロボロになったジャケットを指差す。


「はんっ、ダメだダメだ。そんなジャケットいらねぇよ」


「このジャケットはかなりいい素材を使ってるんだ‼︎」


「ふん、もっと綺麗なのを持ってきてから言うんだな。失せろガキ」


そう言って、もう話はないと言わんばかりに店主は肉を焼き始めた。


「くそっ」


ハジメはそこから立ち去り、別の屋台を同じように渡り歩く。






「・・・・・死ぬ」


ハジメは今にも死にそうな目で夜の街を徘徊していた。


「うぅ、もう1週間なんも食えてねぇぞ」


ハジメはあれからずっと何も口にしていなかった。


「・・・・あぁ、もう歩くのも億劫だ」


よろよろと歩いているハジメに対して、周りの街人はあぁ、まだこいつ生きてるのかと言いながら、ハジメから2m以上離れて歩いている。


「ままー、あのこなんであんなにきたないの?」


「こらっ、ジョセフあんなのを見るんじゃありません」


こんなことを言われる始末である。


「くそ・・・・・・ジョセフ今度会ったら殴る」


ハジメは小さな声で呟く。そして、再び飯にありつこうと意識を向ける。


「うおっ」


と突然、目の前が歪み始めた。そのまま体は力無く地面に倒れ伏す。


ざわざわ


それを見た街人達が軽く騒ぎ出す。


「おい、あいつどうにかしろよ。あれじゃ通りの邪魔になる」


「お前が行けよ」


「なんでだよ!そう言うお前が行けよ!」


街人達はしばらくそんな会話を交わすと、2人の大人が倒れているハジメに近づいてくる。


「しゃーねーな汚ねえけどやるぞ」


「あぁ、さっさと終わらせて酒だ」


そう言うと、ハジメの腕と脚を持ち裏路地へと連れて行く。


「おらっ」


「どっせい」



どさっ



男達はハジメを投げ捨てると、手を叩きながら通りへ戻っていく。


「いやー、いい仕事したぜー」


「がははっ、ちいせぇゴミを捨てただけだけどな‼︎」


ハジメは朦朧とする意識でそんな会話を聞いていた。


(なにが、ゴミだ。お前らのほうがゴミだろ)


そしてハジメの周りには静けさだけが残った。


(こりゃ本気でやべぇかも・・・・)


意識がなくなり始めるハジメ。


「逃すな‼︎」


が突然、静かなこの空間に大きな声が響いた。


(・・・・・なんだ?)


ハジメは閉じかけていた瞼を微かに上げる。



グサッ



「ぐあっ」


瞼を上げた先に映っていたのは、白衣のようなものを着た男が地面に躓き転び、その背後から黒づくめの男に何かで刺されているところだった。


(・・・・・は?)


ハジメは目の前の状況に理解が追いつかない。



コロコロコロッ



さらに、ハジメの目の前に何かが転がってきた。


(なんだこれは?)


ハジメがそれを観察する。


それは薄暗いところでも光を放つほどの輝きを持った石のようなものだった。色はほぼ無色で、中では何かキラキラしたものが舞っている。


「うわ、めっちゃきれい」


満身創痍のハジメでも、つい口を開いてしまうほど美しいものだった。


それを観察していると、向こうから誰かの声が聞こえた。


「おい、そこの子供」


それはあの黒づくめの男だった。心が底冷えするような鋭い声だ。


「それは私のものだ触るなよ」


黒づくめの男がそう言いながら近づいてくる。


(こいつがこれを手にするのはマズい‼︎)


ハジメは近づいてくるその男を見て直感的にそう思った。


そして、ハジメはそれを口に入れた。


「なっ⁉︎」


黒づくめの男は、ハジメがそれを口に含んだのを見て焦りだす。


「き、貴様‼︎それを吐き出せ‼︎」


そして懐からナイフを取り出し、ハジメに向かって突きつける。


男の持つオーラも相まってそれに恐怖した、いやもしくは、久しぶりに口の中に何かを入れたことで食欲が働いたハジメは、口に含んだそれを飲み込んで(・・・・・)しまった。


(・・・・あ)


「どうした?」


目が挙動不審になったハジメを黒づくめの男は不審に思い、それを尋ねる。


「の、飲ん・・・・」


「?」


ハジメはそれを飲んだことを言おうとした瞬間、言葉を詰まらせた。その様子を黒づくめの男は怪訝そうに見る。


「う、うぅ」


ハジメは心臓のあたりからとてつもなく熱い何かが溢れてくるのを感じた。


「が、あっ・・・・ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」


ハジメは徐々に身体全体に回ってくるその熱さに耐え切れず叫ぶ。


「なんだ⁉︎どうした⁉︎」


男はハジメが叫び出したのを見て、すぐさま後ろに飛び退いた。


(あ、熱い‼︎身体中が熱い‼︎)


ハジメは必死に謎の熱さと闘う。そんなハジメを観察していた黒づくめの男は、はっと目を見開く。


「き、貴様‼︎まさかあれを飲んだのか⁉︎」


男は驚愕し、ナイフを構える。


「・・・・ならば、ここで殺さねばならない」


ハジメにはもちろんそんなことは聞こえておらず、苦しみ続けていた。


「ぐっ‼︎・・・・・・・・・・・・」


そしてついに、ハジメはそれに耐え切れなくなり気絶した。


「・・・・・・」


黒づくめの男は、いきなり静かになったハジメに無言で近づいていく。


そして、ハジメの首元にナイフを突きたてようとしたその瞬間。


「っ⁉︎何をしている⁉︎」


前の方から声がした。


男は反射的にナイフを構え直し、声のする方を睨む。そこには、銀色のプレートメイルを着た騎士達が路地裏を塞ぐようにして立っていた。


この騎士達は見回り担当の者達で、突如聞こえた叫び声に駆けつけたのだ。


「何をしているのか聞いている‼︎」


「ちっ‼︎」


男は倒れて伏しているハジメを一瞥してから路地裏の奥の暗闇に消えていった。


「ま、待て‼︎」


数人の騎士達が黒づくめの男を追いかけていく。


「隊長‼︎この子供はどうしますか?」


隊長と呼ばれた騎士はハジメのところへ近づく。


「あの黒づくめの男め、こんな小さな子供をここまで痛めつけおって」


そう言って、ボロボロのハジメを優しく抱き上げる。


「先ずはこの子供の治療が先だ。行くぞ」


隊長と言われた男が騎士達を率いて路地裏を出て行く。



いきなり路地裏から出てきた騎士達に何事かと目を向ける街人達。そして、先頭の男騎士が抱きかかえる子供を見ると驚愕と焦りを覚えるのだった。




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