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路地裏から生まれた世界最強(旧:路地裏生活から生まれた世界最強)  作者: 蒼たばすこ
2章 始まる路地裏生活
13/22

第12話

「・・・・さて、どうするかな」


ハジメはリーズベルの機嫌をどうやって直すかを考えていた。


「・・・またパンツ見えてるぞ作戦でいくか?」


(いや、今やったら確実に()られる)


んー、とハジメが悩んでいると、お腹から音が鳴った。


「そういえば、串焼き食ってからなんも食ってないな・・・・・・・・・・あっ‼︎」


ハジメはベットから跳ね起きる。


「そうだよ‼︎飯だ‼︎飯を食わせればいいんだよ‼︎なんで気づかなかったんだ食欲を満たせば・・・・・・」


(そうと決まったら食材探しだな)


ハジメはリーズベルに気づかれないように静かに家から出るのであった。













「・・・・・見つからん。生き物どころか木の実さえ見つからないとは」


(んー、一旦家に帰る・・・・ん?)


「気のせいか?」



ーーーーーーーーーーーーチョロチョロ



「・・・・やっぱり‼︎水の音だ‼︎」


(まったく誰だよ。俺の聴力が壊滅的だとかいうやつは。むしろ絶好調だっつーの)


ハジメは水の音がする方へ走る。


「おー、めっちゃ綺麗だ」


草木をかき分けて辿り着いたハジメの目の前には、目が痛くなるほど日の光を反射する澄んだ川が流れていた。


「これだけ水が澄んでれば、美味しい魚もたくさんいるだろ」


ハジメはジャケットを脱ぐと、近くの岩に置いて川に入っていく。


「冷たっ‼︎」


波をなるべく起こさないように慎重に歩きながら川の中に目を凝らす。そして、一匹目の魚を見つける。


「・・・・・いた‼︎」


(ふむ、どうやって捕まえようか・・・そうだ‼︎)


「我、目の前に断ち切れぬ光の交差を求めん」


光網(ライトネット)


ハジメが魚に掌を向け詠唱すると、掌から光り輝く網が出てきて魚を覆う。そのまま網を掴み上げると、魚が網の中でピチピチと動いている。


「よしっ、完璧」


ハジメは同じ作業を繰り返し、合計5匹の魚を獲得した。


「ふぅ、満足だな。このくらいでいっか」


ハジメは川を出てから岩に置いていたジャケットを着ると、魚が入った光の網を片手に家に帰ることにした。






(大漁、大漁♪)


口笛を吹きながら歩いていると、ハジメは目の前の細い木に注目した。手のひらサイズの赤い実が生っているからだ。


「お?・・・・やっと見つかった‼︎」


(森生活初の木の実‼︎)


ハジメはその木の実を採るとじっくりと観察した。


(・・・・やばそうな感じではないな。また後で要検討だな)


そしてジャケットのポケットに突っ込み、再び家に向かって歩き始めた。










「さて、調理を始めますか」


家に着いたハジメは外で調理することにした。まずは、火起こしから始める。


「我、目の前に燃え盛る炎を放たん」


火炎(ファイヤー)



ーーーーーボッ



ハジメは小さく魔力を練ることで極小の『火炎(ファイヤー)』を放ち、かき集めた乾いた木の枝に火を点ける。


「後は・・・・・・」


捕まえた魚に木の棒を刺し、燃える焚き木の周りに固定する。


「・・・・・・・うしっ‼︎後は焼けるのを待つだけだ」


ふぅ、と脱力するとジャケットのポケットに重みがあることに気付いた。


(ん?)


ゴソゴソ


「・・・すっかり忘れてたわ」


ハジメはポケットから取り出した赤い木の実を、家の中に落ちていたガラスの破片で切ってみた。


ザグッ


「うーん、中も見た目は普通・・・と」


(次は味見か)


ハジメはガラスの破片に付いた木の実の汁を指ですくい、恐る恐るその指を舐めた。


「っ⁉︎リンゴや‼︎」


赤い木の実は地球のリンゴの味がした。


「こりゃ、当たりだな・・・そうだ魚の味付けに使おう‼︎」


ハジメは赤い木の実を潰して、出てきた汁を魚にかけていった。


・・・ちなみに、ハジメは料理をほとんどしたことがない。これは先に言っておこう。


「さて、そろそろ暗くなってきたしリーズベル呼ぶか」


そう言って立ち上がろうとすると、後ろから声が掛かってきた。






「何してるの?」






ーーーーーリーズベル視点ーーーーー


「・・・・・・ぅん」


今までのことを思い出していたら、いつの間にか眠ってしまっていた。流石に身体が堪えたのだろう。


「・・・・・・・ハジメ?」


家がやけに静かなのに気付いた。


「ハジメッ‼︎」


リーズベルは急いで自分の部屋から飛び出し、大きな声でハジメの名前を呼びながら隣の部屋の扉を開ける。


「・・・・・・・・・ハジメ、どうしていないの?」


部屋にはハジメの姿は見えなかった。


「私のこと嫌いになったのかな・・・・うぅっ」


リーズベルは、先ほどハジメに強く当たったために嫌われてしまったのだと思った。


「ひぐっ、もう、ここから出て行っちゃったのかな。ひぐっ」


顔を伏せ、床を濡らしながら肩を震わせていると、外から何かが匂ってくることに気付いた。


「ん?・・・・ひぐっ、これ、ひぐっ、なんの匂い?ひぐっ」


外から何かを焼いているような匂いがした。


「・・・・・もしかして」


リーズベルは目を拭って涙をすべて拭き取る。そして、家の外へと向かった。


ーーーーガチャ


扉を開けてまず見えたのは、自分が今一番話さなければいけない男の子の背中だった。


その男の子は火を起こし何かを焼いている。リーズベルは目の辺りをもう一度擦った後、顔を何事も無かったかのように引き締め直し、その背中に声をかける。



「何してるの?」



ーーーーーーーーーーーーーーーー






ハジメがそのまま後ろを振り返ると、そこには腕を組んだリーズベルが立っていた。


「えーと、料理?」


「なんで疑問形なのよ」


「一応、自分では料理のつもりなんだけど」


「そう」


それから、お互いに無言が続く。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


すると、リーズベルが先に口を開いた。


「・・・そっち行ってもいい?」


その時のリーズベルの表情は周りが暗くてよく見えなかった。


「お、おう。もちろんいいぜ‼︎」


すると、リーズベルが30cm程離れてハジメの隣に座った。


また無言が続き、焚き木が弾ける音だけが辺りに響く。


「・・・なぁ、リーズベル」


「・・・なに?」


「・・・腹減ってないか?」


「・・・・・・減ってるわ」


一瞬、ハジメの目が光った気がした。


「さ、魚を捕まえて串焼きにしたんだ‼︎ぜひ食べてくれ‼︎」


リーズベルはそれを聞くと、目の前の串に刺さっている魚達を見る。脂が滴り落ちてちょうど食べ頃だろう。


「い、頂くわ」


「おう‼︎・・・ほらよ‼︎」


ハジメは嬉しそうに串焼きを1本取り、リーズベルに渡した。


「ありがとう」


「おうよ」


「いただきます」


「・・・・え?」


「なによ」


「えっ?い、いやなんでもねぇよ‼︎貴族もこういうのを食べるのかなぁって」


「あぁ、そういうことね。お屋敷から出れば食べれたわ」


「そ、そうなんだ」


「えぇ、それじゃこの魚貰うわね」


「お、おう」



ーーーーがぶっ



リーズベルが魚にかぶりつく。ハジメはわくわく顔でリーズベルの感想を待っている。


「・・・・・・・・不味いわ」


「・・・・え?」


「不味いわ」


「・・・・え?なんで?」


「知らないわよ。こっちが聞きたいわ」


「おかしいな。ただ魚を焼いただけだぞ」


「なんで焼いただけで不味くなるのよ」


んー、とハジメが考えていると一つだけ調味料を足したのを忘れていた。


「あー、リンゴみたいな味のする汁をかけてみた。隠し味だぞ♪」


「リンゴ・・・・・。それよ」


「え?なんかまずった?」


(あれスルーすか?なんか恥ずい)


「えぇまずってるわね。魚の串焼きにリンゴの汁をかける奴がどこにいるのよ」


ハジメは無言で自分を指差す。


「・・・たぶん、この世界で貴方だけだと思うわ。もしほかにも居たら・・・」


「居たら?」


「・・・・1日だけ貴方の言う事を聞いてあげるわ」


「あー、それはうれしいなー」


「なによ?不満でもあるの?」


リーズベルがハジメを睨む。今にも手に持った串で刺し殺してきそうな勢いである。


「イイエ、マッタクゴザイマセンヨ」


「そう、なら良かったわ」


そう言って、リーズベルは手に持った串の先を下げる。


ハジメはそんなやりとりをしながらさっきの事を考えていた。


(・・・・・いただきますって言ったよな?この世界に転生してから5年間いただきますなんて聞いたことないぞ。しかもリンゴも知ってそうだし。あ、でもこの世界でもリンゴって言うのかもしれない。仕方ない、勝負に出るか。)


「それじゃ、俺も食べるかな」


ハジメは、目の前にあった魚の串焼きを手に取る。そして、


「いただきます‼︎」


大きな声でそう言って手を合わせる。それと同時にリーズベルの反応を伺う。


「っ⁉︎」


(・・・・・・やっぱりか)


ハジメは最後の詰めにかかる。


「・・・・なぁ、リーズベル。この木の実ってなんて名前か知ってる?」


そう言って、ハジメは赤い木の実をポケットから取り出した。あの時、複数個採っていたのだ。


「んー、シャムの実ね」


「この木の実と同じ味の木の実ってねぇの?」


「私の知る限りだと無いわね」


「・・・・・そうか」


(これで確定した。こいつは・・・・・)


ハジメは早くなる鼓動を抑えてついに疑問を口にする。












「・・・・リーズベル、お前地球って知ってるか?」








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