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現場再確認

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長

加藤 啓太 (35)  警視庁刑事部鑑識課係長


川村 真人 (22)  西正大学法学部法学科4回生

吉岡 勝  (故人)     同      教授

佐野 優奈 (22)     同      4回生

坂倉 俊之 (54)     同      法学部長

 


 ― 西正大学 事件現場  同時刻―




 現場の前には所轄署の警察官が立って、現場を守る。

徳永はゆっくりと現場に近づきながら、警察手帳を見せた。

「ご苦労様です!」

 所轄署の警察官は敬礼して、立ち入り禁止を示す《KEEP OUT》の黄色いテープを上げて、入りやすい様にアピールし、徳永は、しゃがんで現場に入る。

 現場は誰もおらず、天井の照明も切られている。非常に真っ暗な状態だった。

 警部は深いため息をついて、最初に爆破されたポイントに近づいていき、くまなく見ていく。施設用消火栓は無残な状態。これを使っての消火活動は現在も、今後とも不可能だろうと感じている。

 徳永は現場内を移動し、次はステージに登り、川村が立っていた所から被害者が座っていた位置をよく見つめた。

 暗い教室内。現状を見て、改めて事件当時の状態を感じ取る事ができる。

 顎を右手でさすり、今度は左人差し指でテレビカメラがあった場所を照らし合わしていく。

「なるほどね……。正面から見るのは難しいが、吉岡さんが移動しているのを考えてみれば、彼も気付いていただろうな。それに、カメラが撮っていたポイントで写っていたから、絶対に川村さんは知っていただろうな」

 徳永は会場の見取り図を取り出して、ステージの床に広げ、被害者の位置を確認する。

「うーん」

 見取り図を片付けて、スーツのポケットに仕舞い込み、短い頭の髪を撫でて悩んだ。

 ステージを降り、コンクール大会運営委員会の場所へ向かう事にし、場所の確認としてパンフレットを警部は取り出す。

 パンフレットには、《運営主催:西正大学学生課》と記載されている。

「ちょっと、話を聞きに行こう。もう一度」

 現場から出て、再びテープをくぐり、所轄の警察官に軽く敬礼をして挨拶を交わした。

「ご苦労さま。頑張って」

 徳永の敬礼に、テープの近くに立っていた警官はしっかりとした態度で敬礼を返す。

「ご苦労様です! あ、ありがとうございます!」

 徳永は歩いて、学生課の職場がある大学本館へと向かった。

 歩きながら、今回の事件を確認する。



①爆破前は、川村という青年がステージでスピーチしていた。



②爆破した瞬間は、川村が1礼した時。



③吉岡教授は死亡。数名の負傷者も出した。



④犯人は不明だが、疑いがあるのは川村。なぜ彼はあの事を知っていたのか?



 警部が考えている間に、学生課の職場に辿り着き、自動ドアが開く。中に入ると数名の職員が電話対応を行っているらしく、多忙な状態であると感じ取った。

 電話対応を終えた1人の職員が徳永の顔を見て、声をかける。

「あの? 何か?」

「ええ、実を言いますと事件の事で2、3伺いたい事がありまして……」

「ああ、警察の方でしたか。すいません。あれから色々と立て込んでいましてね」

 職員に対して、徳永は同情していた。

「でしょうね。大変ですものね。あんな事が起きた後ですからね」

 徳永の同情に耳で受け流して、職員は徳永の要件に受け答えをする。

「事件の事でお伺いしたいんでしたよね?」

「ええ。事件当日のスタッフ表と、持ち物検査についてのリストを見せていただけないでしょうか?」

「少々、お待ちください」

 職員の女性は、足早に奥の倉庫へ向かった。

 徳永は職員を待つ。

 数十秒してから、奥の倉庫から、女性が2冊のノートを徳永の前にいるカウンターに持ってきた。

「こちらになりますね。記録なら別データが残っていますけどいかがですか?」

 リストを見つめながら、告げた。

「あっ、じゃあ、それもお願いします」

「かしこまりました」

 スタッフは自分の事務机に、行って、ノートパソコンを持ってくる。

「これですね」

「どうも」

 徳永の見ているリストは、事件当日のスタッフ名簿表と持ち物の内容。

 ページをめくると徳永の興味を引き立たせる名前が入っていた。



《会場準備スタッフ 川村 真人》




「川村真人君も会場準備に関わっていたんですか?」

 職員は返答する。

「ええ、彼は2回生からスタッフとして準備してますよ。発表もやられてましたね。彼は良い学生さんですよ」

「そうですか。あっ、発表者の持ち物リストも見ても?」

「ええ、どうぞ」

 ノートから持ち物を確認した。

 



《川村 真人 持ち物:ボールペン、発表原稿、腕時計》




「持ち物は普通か。なるほど」

「一応、不審物の類は、ありませんでした。隣で受付していましたから……」

「そうですか。どうもありがとうございます。あのー? この文書。コピーしてもらっても宜しいですか?」

「かしこまりました。少々、お待ちください」

 職員は徳永からリストを手渡してもらい、コピー機まで持って行って複製を開始する。

「お願いします」

 徳永は、職員の対応を軽く返し、パソコンの画面を見て確認する。

 川村については怪しいが、持ち物からして爆弾のリモコンのたぐいもない事から容疑者の要素が薄い事を感じた。

「やはり、違うか……」

 徳永は頭を掻き、自分の推理が間違っていたのかを確かめながら再度考え直してみる。

 彼自身の考えでは、川村と初めて面識を持った時の発言についてどうも引っかかる点を感じていた。

「うーん」

「おまたせしました。これになります」

 徳永は、リストのコピーされた用紙を女性に手渡され、用紙を胸ポケットにしまい、学生課を後にする。

「どうも、ありがとうございます。では、失礼します」

 職員は、短髪丸眼鏡の警官が学生課を出て行ったのを確認してからまた自分の作業へと戻っていった。 歩きながら徳永は眼鏡の手入れをしていき、綺麗な状態にする。再び眼鏡をかけ直して、彼は、先に高山が向かった坂倉の研究室へと足を運んだ。


遅れまして申し訳ございませんでした!!


第13話です。 

話は続きます!


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