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殺意の芽生え

《登場人物》


徳永 真実 (35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美 (30)     同 巡査部長


川村 真人 (22)  西正大学法学部法学科4回生

吉岡 勝  (45)     同      教授


  ― 西正大学 法学部研究棟 吉岡教授 研究室 ―



 教授の吉岡勝は、自分の机にあった椅子に踏ん反り、目の前に立つ一人の若者に告げる。

「まさか、君を信じていたのに……」

 机には若者に対する調査書と報告書が置かれていた。対象の名前には《西正大学法学部4回生 川村真人》と記載され、その川村が、吉岡の机越しに立ち、焦燥の顔をしている。

「待ってください! 先生これには……」

「なんだね? 何か理由があるのかね? 私の答案を、他人に売りつけて、不当に利益を得ていたと書いてある!」

 吉岡の指摘は当たっており、反論の余地はない。確かに1ヶ月前に、吉岡が担当する法学部卒業必修単位講義のテスト内容を、川村はテスト1ヶ月前に、不特定多数に学生が溜息をつく値段で売っていた。

 教授はその影について理解し、独断で探偵を雇って内偵させる。そしてその影として現れたのが川村だった。調査書と報告書に、《川村 真人》と記載されている時点でお察しの通り。

 川村は、なんとしてでも自分の面子にかけて弁解と言える発言をする。

「待ってください。それは誤解です」

 吉岡の次の1手は、1枚の写真を川村に手渡す事。

 その写真には、丁度、川村がプリントを手渡し、相手が封筒を手渡そうとしている場面。

「誤解の割には、この写真の君は嬉しそうじゃないかね?」

 写真の川村は綺麗な笑顔で写っている。もはや弁解はない。最後の抵抗として、沈黙を通すしか手はなかった。

 少しの間の沈黙。重い空気が2人のいる部屋を静かに包みこむ。

 吉岡はため息をつき、額の汗を手で軽く拭う。

「すまないが、今度、教授会で君の事について話をさせてもらうよ。1週間後か。せいぜい最後まで大学生として反省し、悔いながら過ごせ。話は以上だ。顔も見たくない」

 川村の顔は無表情。

 切り捨て発言を聞いた為に、川村自身、諦めている事が吉岡は、表情を見て感じる事ができた。彼はソファーに置いていたバッグを持ち、踵を返して教授室から出ようとしている。

 研究室を出ていこうと動いている川村を吉岡は口で止めた。

「ああ、最後に言い忘れていた。コンクールはきちんと出てもらうからね。最後まで君の発表の役割を果たしてもらわないと私の面子が持たないからな。教授会も丁度、その後だから、いいだろう」

 教授の発言を聞いて、一度、動いた足を止め、ちょっとしてから一言だけ返し、部屋を後にした。

「そのつもりです。失礼します」

 ドアが開き川村の姿が見えなくなると自然にドアは締まり、独特な音が部屋に響き渡る。部屋にはひとりだけ。吉岡が静かな空間で頭を抱えていた。

 川村は廊下を歩きながら、バックに手を入れて一枚の紙を取り出した。

 紙には大きくワープロの字体で表記されている。



《第25回 ゼミナールコンクール》



 川村は、紙を見て決心した。

「奴を消さないと」

 大抵なら冗談で済む言葉だが、時には冗談ではなかったりする。どうやら川村の心に、冗談という2文字はない。

「あと1週間か。余裕だよな」

 歩きながら吉岡の殺害方法を考えていく。



【できるだけ自分のアリバイは保証したい。それに証拠は綺麗に消しておくべきだ。だとすれば、刺殺か。でも、それではアリバイ作りが至難。毒殺もいいが、テレビドラマの様に簡単に青酸カリが手に入るわけじゃない。どうするべきか……】



 川村は、考え事の世界から気づいた時には、大学を出て、自転車に乗り、帰路についていた。

 


【撲殺? あれは余計にダメだ。証拠の隠滅は愚か血痕が飛び散って面倒だ。いや待てよ。飛び散る?】



 閃きはいきなり起こる物。

 考える事はとても大事なんだなと有名な彫刻に感謝したいぐらいだった。

 川村は、吉岡殺害計画を練り上げ、実行する準備を行う。実行日は、1週間後のゼミナールコンクール中、自分の発表途中で殺害。

 これが一番いいだろうと考えていた。


【アリバイ作りには絶好な日だな。なおかつお客とカメラがある。私がスピーチしている間に吉岡教授が倒れる……この手でいける】




 川村は左拳を握り締め、心の中で作り上げた計画が一番良い方法だと判断し、確信した。まずは、吉岡を仕留める為の凶器を作る。川村真人という男は、どんな事でも自分でやり通す男。裏を返せば他人の手が入るのが実に嫌いな男だった。遠隔装置やリモコン、全てにおいて丁寧に作り上げる。

 パソコンとは非常に便利だ。

 知らない技術でも、探しまくれば、意外と簡単な所に知識が転がっていて拾いやすい。なおかつ使える。長い時間をかけて、遠隔装置とお手製のノック式ボールペン型リモコンができた。

 市販のボールペンとリモコンの融合性は中々のロマンがあるなと川村は感じながら、親指で押したりして遊んだりしている。

 それと同時にリモコンの赤外線に遠隔装置が赤い光を出して反応。

「おお、うまくいったな。やるもんだな」

 川村は背伸びをして、全身に溜まった疲労感を一気に解放させたが、外の景色が明るくなっている事を見て、壁掛け時計の時間を見ると既に朝の5時を回ろうとしていた。

「こんな時間か。……2時限目からか……」

 川村は作業を止めて、ベッドに転がる。

「見てろよ。吉岡。後悔させてやる」

 執念。彼が吉岡に対する思いはもはや殺意しかなかった。



徳永警部! 第3弾! 


あの男が帰ってきた! という事で、シリーズ第3弾となります。今回の犯人は大学生ですね。さて、徳永警部はどう挑むのか! 


 下手くそですが、最後まで宜しくお願い致します!!


※この物語はフィクションです。

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