表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

蛇足のさらに蛇足

蛇足・姉のため息のさらに蛇足。拍手お礼の再掲です

 「君がいないと何もできない」

 ほら見なさい、と彼女は思う。想像した通りのことを、夫は言う。

 「何もできないこと、ないでしょう。こうして、迎えに来たし、歩いているし、なんなら呼吸もできているじゃない」

 「君はすぐそうやって屁理屈」

 「あなたほどじゃないわ」

 つんとそっぽを向くと、夫が小さく息を吸う音が聞こえた。

 「もしかして、僕から逃げたくて村を出たんじゃないよね?」

 「は?」

 夫は真面目な顔をしていた。

 「弟くんのことを口実にして、実家からもう僕の村には戻ってこないつもりだったとか」

 「馬鹿にしないでよ」

 彼女の怒った声に、夫は怯んで口をつぐんだ。

 「そんなことに弟をだしにつかったりしないわ」

 「そう、そうだよね、ごめん」

 「どうして、私があなたから逃げたくなったりするのよ」

 夫はうつむいた。どうにも情けない。

 「…だって、帰ってこないから」

 あっきれた。彼女はため息をつく。それを聞いて夫の肩がますます落ちた。

 「もう少し、私のこと、信じてくれてもいいんじゃない?」

 帰るのが遅くなった彼女が確かに悪いけれど、だからといって、夫も子どもも家族も置いて、彼女が去るなんて思われていたことは心外だ。

 「…私たち、夫婦なんだから、これくらいでもめてちゃ、やってられないわよ」

 家事の途中だから、戻らないと。彼女は置いてきた水瓶のことを思い出して振り返った。

 「全く。心配したの一言くらいあってもいいんじゃない?」

 ぼそりと呟いた言葉は、聞こえていたらしい。

 「もちろん、心配したとも!どこかで迷ってないかとか、襲われていないかとか、探しまわって。だからここまで三日もかかったんだ。満月の夜に出たのに」

 なんと夫は、満月の日には村を出ていたらしい。気が早いにもほどがある。

 「極端なのよ、あなたは」

 怒った声を出した彼女はしかし微笑んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ