五話
早速ですが、と切り出した茨木さんに、イヤーな予感がした。
「我々、特に調査班と対処班は人手が足りません。まさに猫の手を借りたいくらいに
この二つの班は、実力がないと入ることすら出来ませんから、余計に人がいないのです」
「はあ・・・」
「大体、私の言いたいことが、察して頂けたと思いますが、峰岸葵さん・・・調査班と対処班に所属してください。
嗚呼、勿論相応の給金は支払いますし、高校生ですから危険なお仕事は除きます」
にっこり、有無を言わさない迫力ある笑みに頬がひきつる。
「アルバイト、ですか?」
「えぇ。そういう形になりますね。勿論、高校卒業後は正職採用致します」
「え゛
就職決定ですか?!」
茨木さんの言葉に、思わず大声になってしまった。
だって私、無難に大学にいく予定だし!
私の言葉に茨木さん達は首を傾げた。
え、なにその問題ある?って顔は!!
「能力者達は、政府の指示で優先的にウチに所属することになっていますよ。
やはり、能力を活かすという点ではウチが最適ですからね
特殊公務員扱いです。特殊と名は付きますが、公務員ですから、安定していますよ?」
「う・・・」
公務員かあ・・・下手なブラック企業に入るより安定してる方が・・・イヤイヤ、職場が此処だし。
「時給五千円で、初任給三十万ですよ」
「・・・・・やります」
お金大事!
「ふふ、では、書類作成後に館内を案内しましょう。
各課長とは改めて各部署で。
良いですか?」
「構わないよん!」
「ウチも構わない」
鹿島さんと伊達さんが笑顔で其々席を立った。
「俺はどうしたら良い・・・?」
兵庫さんの言葉にそうですねぇ、と茨木さんが顎に手を当てた。
「とりあえず、先に書類を調査班の方で書いていただいて、その後対処班に連れていきますので、一度戻っていただいても結構ですよ」
「分かった」
こくりと頷いた兵庫さんも立ち上がり、課長三人が部屋から出ていった。
「さて、我々も移動しますが・・・その前に、五月雨に聞いておかなければならない事が一件あります」
『麿に?』
「えぇ。
先日の斬殺事件は貴方が?」
マロを見詰める茨木さんに、あ、そうだった、と 私もマロを見る。
・・・というか・・・
「茨木さん、マロを見ることが出来たんですね・・・!」
「え?嗚呼、課長は全員見ることが出来ますよ。
やはり、班員を指示する立場ですから、見るのは最低条件ですね」
ニコリと笑う茨木さんに、そうなんですか・・・と納得する。
「気を取り直して・・・どうなんです?五月雨」
『麿じゃないでおじゃるー。麿、葵と出会った時に久々に起きたでの』
ぱさりと扇を開いて顔を隠すマロに茨木さんは難しい顔をした。
「ああいう事件を起こすのは、そう居ません。ですから此方は貴方だとばっかり思っていましたが・・・」
『違うでおじゃ』
「では心当たりは?
検証の結果、刀による斬殺だったのですが」
『・・・余り思い付かないのぅ。
麿、基本的に周りを気にしないでおじゃるから』
「そう、ですか。捜査は振り出しですね。
・・・良いでしょう、東、貴方は南原くんと共に調査に戻ってください」
「はい。
ではまたな、峰岸さん」
「(気配無かったから忘れてたっ)
は、はい!」
ポンポンと私の頭を叩き、東さんはお茶を淹れに行ったきり戻らない南原さんを探しに部屋を出ていった。
「では、改めて我々も移動しましょうか」
「はい」