三話
『むむ?おぉー漸く麿と葵の力が馴染んだか!』
オホホホホ、と笑うマロ。
先程まで刀の刀身に姿が映っていただけだったのに、自己紹介が終わった途端、ふわん、と刀から抜け出した。
「ぶはっ!!」
「え?ちょ!どうしたの?いきなり吹き出してっ」
南原さんが吃驚したーと目を丸くし、東さんは目をぱちぱちと瞬かせた。
「いや、マロが急に刀身から出てきて・・・(白塗りが突然現れるとか心臓に悪い)」
「えぇ?!五月雨が?
ねぇ!どんな姿なの?!」
テンション上がった南原さんに、此が見えないなんて、幸せなのか、不幸なのか、と苦笑する。
「頭には、黒い烏帽子、朱色の狩衣に白い袴で
イイ声だけど顔面白塗りでマロ眉で、語尾はおじゃる。ですよ」
「後半っ!」
「妖刀五月雨がそんな・・・」
ゲラゲラと笑う南原さんと、どんなイメージを持っていたのか絶句する東さんに、あはは、と苦笑する。
『全く失礼な者達でおじゃる』
ぷりぷり怒るマロに、まあ仕方ないでしょ、と告げた
『むむ。何故仕方ないのでおじゃる・・・』
「人を斬って斬って斬りまくる妖刀が、そんなギャグキャラみたいな格好なんて、脱力しちゃうでしょ
っていうか、そんな殺人刀?を持ちたく無いんだけど」
『なんと!葵、薄情であるぞっ』
「厄介事は勘弁して欲しいわ」
よく、平凡な毎日が嫌だ、非凡が欲しいと声高に言う人間がいるが、私は全く非凡が欲しいとは思わない。
だから、マロの存在は面白いとは思うが、進んで関わりたくはない。
『薄情でおじゃー冷たいでおじゃー切ないでおじゃる』
「峰岸ちゃん、残念だけど、すんなり平凡な日常には帰れないかなー?」
「え」
「嗚呼、五月雨と契約した稀な人間であるし、五月雨と契約したことで厄介事に巻き込まれる事もあるだろう
何より、是非ともウチに欲しい戦力だ」
「五月雨、バラしたいなー!」
「えぇ?!」
『ちょ、物騒でおじゃる!助けてたも!葵!!
目っ、目がギラギラしているでおじゃ!狙われてるでおじゃー!』
きゃー!と慌てて背に隠れるマロに、女子か!と突っ込みながら、あの!と、声を掛ける。
「?どうした?」
「戦力ってどういう・・・?」
私はあくまで、平凡な女子高生で、マロが居ても剣道とか習った事も無いし、到底戦力になれるとは思えない。
「嗚呼、五月雨はね、人や物も斬れるケド、何より通常の武器では斬れない妖や霊も斬れるんだ。
正直、ウチとしては、喉から手が出るほど欲しい」
「え?でも」
「これだけの人数がいるウチなら、似たような存在もいるデショ?って事かな?」
聞こうとしたことを先に言われ、頷く。応接間に案内される迄に随分な人数と擦れ違ったもの。
「いっないんだよネーそれがさあ。
妖達を斬れるのは御神刀か、かなり凄い妖刀か、なんだけど、そんなチートなのそうそうないし、人とも契約しないしサー」
アッハッハッと笑う南原さんに東さんは苦い顔で頷いた。
「妖達に対して此方が行えるのは祓うだけ。
だが、最近は妖の力が増して、祓う人間の質が落ちていてな。
正直、手が足りていないんだ
それにウチに所属している人間は数はいるが、半分以上が無能力者で、能力者の半分は戦闘向きじゃないんだよ」
はあーと大きな息を吐く東さんに、へーーーと実状に驚いて見せれば、分かった?と南原さんに聞かれる。
いや、分かっても、巻き込まれたくはない。
「まあまあ、とりあえず!」
パンパンっと拍手をした南原さんを見れば、にっこりと微笑まれる。
「課長達に会いに行きましょー!」
次回から書き方変えまーす






