二話
「妖刀五月雨っていうのはね、かなり有名な妖刀なんだよ
刀自体が作り出されたのは戦国時代の最中でね、妖刀になったのは江戸の初め。
血を浴びすぎたのが妖刀になった理由だよ。在り来たりデショ?」
道端に何時までもいるのはね、という白衣の男の先導により、車で移動し、とあるビルに案内された。
ビル内には多くの人が行き交い、忘れていたけれど制服の格好だったので、かなり注目を浴びてしまって、憂鬱な気分にいっぺんになる。
促されるまま案内された一室は応接間のようで、座り心地の良いソファに座ると、白衣の男が五月雨に付いて目を輝かせながら語ってきた。
「へ、へぇー
よく、記録が残ってましたね!」
「まあねん!そう言うの調べるのが好きな人が居てね!
ま、ウチの課長なんだけど!」
へらっと笑った男は大人なのに、子供みたいな人だと思ってしまう。
「ほら、つい最近連続殺傷事件あったでしょー?人だけじゃなく、鉄塔までスパーンと斬られた奴!」
「ありましたね。
犯人はまだ見つかってないんでしょう?」
最近お茶の間を騒がしている事件を思いだし、頷いた。
「犯人は、五月雨じゃないか?っていうのがウチの見解でね!
だから神出鬼没の五月雨を探していたんだよ」
「え?マロが勝手に人を斬るんですか?
え?めっちゃ危険じゃないですか」
思わずマロを手放そうとする。
「あは、違うよー。
五月雨が精神乗っ取った人間がするんだ。
五月雨は血を浴びる為に時代の節目に現れては、人を乗っ取って斬って斬って斬りまくる
満足したら、消える
近年の大量殺人やら猟奇事件の原因だと言われているよ。」
笑顔で言った白衣の男の言葉に安心要素は欠片もない。
えぇ?!と更に頬が引き吊るのがわかった。
「え、結局めっちゃ危険!
そういえば、マロも最初お前を寄越せ・・・とか言ってた!
ちょ!私殺人鬼とか冗談じゃないんだけどっ」
『葵は大丈夫でおじゃる。
麿、気に入ったからのー。
契約したじゃろう?』
オホホホホ、と笑うマロに契約?と首を傾げると、マロの声は聞こえていなかった白衣の男と高身長の男が
顔を見合わせた。
「まじまじ?
うわーお。
天下無敵の人斬り刀が、主従契約とか、イマドキ女子高生スゲェ!」
「契約をしたとは・・・」
二人の驚きように、契約ってしちゃダメだったの?!と慌てる。
「うーん。ダメじゃないけど、ちゃんと説明しないとね?まずはウチの事から
だよね、東ぁー」
「嗚呼」
頷きあう二人に、え?ナニ説明されるの??と嫌な予感がする。
「さっきさあ、刀が喋るってナニソレ?!って驚いていたでショ??
でも、実はまあ、珍しい事じゃないんだよね。
ユーレイとか、妖とか、超能力者とか、ファンタジーな世界だと思うでしょ?」
こてん、と首を傾げる白衣の男に、頷く。
だってマンガや小説の話だよね?
首を傾げると、白衣の男はふふん、と笑った。
「ユーレイとか、妖とか、超能力者のような異能力者とか、そういうファンタジックな存在はごく普通に社会に紛れているよ。
別に存在が秘匿されている訳でもないし。
ただ、信じるかどうかわからない話だ。人によっては嘘だと言うだろうし、オカルトだと言うだろう。
だから、知っていても口を閉ざす者が殆どなのさ。
君が知らなくてもムリはないね。
・・・ウチは、そういう異能力者達の暴走や犯罪、妖による事件事故、ユーレイへの対処を専門にしている公的機関なんだよ。
調査班、対処班、記録班、研究班に大きく別れていてね、このビル全てがウチのなんだ。
あ、ちなみに僕は研究班の南原!ヨロシクね!」
「は、はあ」
ワンブレスだよこの人・・・と驚きに目を見開けば、白衣の男、基、南原さんはこてんと首を傾げる。
「んん?どうかした?」
「お前のマシンガントークに驚いたんだろ。
オレは東。ちなみに調査班で、身長は195cm」
よく聞かれるんだと苦笑する高身長の男、基、東さんにあはは、と苦笑で返す。
「えっと、県立中央高校の、二年生、峰岸葵です?」
流れ上、自己紹介をし、よろしく。と挨拶を返した。