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乙女が奏でる恋の協奏曲  作者: 八重桜
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6/8

6話 屋上での密談①

かなり久々の更新となってしまいました、すいません。

でも、なかなかに収穫があったので楽しみに待っていてください。


にしても、久しぶりに書いてみると自分の文章に対して何とも言えない違和感が・・・。

「ここの展開が急すぎる」とか「ここはもうちょい心情を入れるべきか」とか「ここの部分くどいか」とか、かなり悩むんですよね。


なので、もし変な部分があったらどんどんお知らせください。もちろん変な部分がなくても意見がもらえたらうれしいです。


あと、すっかり忘れてました。



みなさん、メリークリスマスです!

食堂で昼食をとった後、直哉は用事があると言って、途中で別れ、春樹は最初の約束通り里奈に学校内を案内してもらっていた。

案内は、食堂内の階段を上った先にあるカフェから始まり、最初は校舎外の場所から回っていった。

校舎からあるいて約3分ほどかかるところにある体育館や歩いて10分ほどかかるところにある図書館などを回った後、他の学園と比べるとはるかに大きいグラウンド2つのわきの道を通って、個室棟に向かった。

個室棟とは名前の通り個室が存在している建物であり、大きさ的には4階建てで、なおかつ面積的にも体育館と同じか、それ以上という、かなりの大きさがあった。

ちなみに、個室棟は1階と2階は個室ではなく、団体での練習部屋があった。この練習部屋は申請すれば時間制で誰でも使うことができる場所なので、バンドや重奏をする人たちはよくこの部屋を使っている。そして3階にはBランクの個室があり、4階にはAランクとSランクの個室がある。

春樹たちは、どうせならと思い、春樹の与えられた個室を見に行ったものの、まだ運び込まれていないものがあったため、入ることはできなかった。ただ、部屋の広さを見た限り、里奈曰く『私のもらった個室の2倍くらいの広さがありますよ』だそうだ。


個室棟を見た後、春樹たちは校舎内に戻り、校舎内を見て回っていた。校舎内には特に目新しいものもなく、化学実験室、生物実験室、物理実験室、保健室、家庭科室、美術教室などのどの学校にもありそうなありきたりな場所を回った。基本的にこれらの部屋は保健室が1階にあることを除いて、2階と3階にあったので、さらに階段を上り屋上へとやってきた。


春樹が屋上の扉を開くと、4月にしては少し肌寒い風が2人のそばを通り抜けて行った。春樹はそのまま、屋上のフェンスギリギリのところまで歩いていき、里奈はその後を追っていった。

「どうですか、春先輩。いい景色じゃないですか?」

「ああ、そうだな」

この桜嵐学園は長い坂を上ったところにあり、さらにそこに建っている建物の5階に当たる部分から見ているだけあって、遠くの場所まで見渡すことができた。

春樹はその目の前に広がる景色をしばらく見続けていた。

「ねえ、春先輩」

春樹が景色を見続けていると、ふと隣から里奈が声をかけてきた。

「どうした?」

「どうして、先輩は日本に帰って来ようと思ったんですか?」

春樹はようやくその景色から目をはなし、里奈の方を見てみると、里奈は真剣な目つきで春樹の方を見ていた。

「えっと・・・日本が恋しくなったから、とかじゃダメなのか?」

「ダメです、そもそも恋しくなってたなら去年あった時に何か言ってるでしょうし」

「じゃあ、里奈に会いたくなったから・・・とか?」

「もしそうならうれしいですけど、語尾が疑問形の時点で若干落ち込みます」

春樹もさすがにまじめに答えないといけないと思ったのか、再び景色に視線を移しながら答えた。

「俺はな、単に普通の学園生活を送ってみたいと思ったんだよ」

「もしそうなら別にあっちでもいいじゃないですか」

春樹はこの学園に編入してくる前も普通に学園に通っていたため、里奈には春樹の言っていることがわからなかった。

「あそこでの俺は、俺であって、俺ではないからな。俺を俺として扱うのは一部の人間だけだ。

別にそれが嫌いなわけでもないけど、ふと普通の学園生活を送ってみたいと思ったんだ」

『あっち』では春樹がどういう存在なのか知ってる里奈はその言葉を聞いて里奈は春樹の言いたいことを理解した。

「春先輩、ちょっとこっち向いてください」

「ん?」

春樹は言われたままに里奈の方を向く。すると、里奈は春樹の顔を10秒ほど見つめていた。

「どうしたんだ?」

さすがに春樹は恥ずかしくなって里奈に尋ねた。

「嘘ではないようですけど、それがすべてではなさそうですね」

「え?」

突然の里奈の言葉に春樹は驚いた。

「先輩の今の話、嘘ではないみたいですけど、ほかにも理由がありますよね?」

今度は確信めいた言い方で春樹に尋ねてくる。

「というか、里奈はなんで嘘か本当かわかるんだ?」

「昔から春先輩の嘘は全て見抜いてたじゃないですか。なんとなく表情を見ると分かるんですよね」

その言葉を聞いて春樹は幼少時代を思い出していた。すると確かに里奈に嘘を見破られた記憶ばかりが思い浮かんできていた。

「とはいえ、10年間近く会ってなかったんだがなぁ」

「根本の部分は変わってないってことですよ」

里奈は少しうれしそうに言った。

「う~ん、なかなかに厄介な共犯者だな」

春樹は観念したように言った。

「共犯者って・・・別に悪いことしてるわけじゃありませんし」

「まあ、ほかの人を欺いているんだからある意味間違っていないんじゃないか?」

「なんか、その言い方だと、私が悪いことしてるみたいじゃないですか」

里奈は少し頬を膨らませながら言った。


そんな会話をしているとふと里奈が来る前に翠たちと話していた内容を思い出した。

「そういえば、里奈たちのグループ、今人数足りないんだって?」

「あれ?どうしてそれを? って麗華先輩たちから聞いたんですよね」

「ああ」

里奈たちのグループは、ピアノ五重奏のグループだったのだが、春休み中に突如、ピアノ担当の女の子が家庭の事情で転校することになってしまい、今のままだと今月末の文化祭に参加できないという状況に陥っていた。

「代わりの人を見つけようと春休み中にも声かけてみたんですけどね、やっぱりみんな気おくれしてしまうようで・・・」

里奈が国内で一番大きい高校生以下のバイオリンのコンクールで準優勝の成績を残しているのをはじめ、麗華、翠も国内のコンクールで優秀な成績を収めていた。直哉は…特に普通の一般学生だが。

「要するに、里奈たちとは実力が違うだろうから、協力できないってことか」

実力がはるか上の人たちと一緒に演奏をしたら、自分の下手さが目立つ可能性もあり、また、他のメンバーの足を引っ張ってしまう。だから、ある意味断るのはしょうがないと言えるだろう。

「はい、一応まだ声をかけ続けてはみてますが・・・」

里奈のその反応を見る限り、結果が芳しくないのは一目瞭然だった。

「優衣さんとかはどうだったんだ?あの人はピアノ専門だし、実力的にも十分なんじゃないか」

優衣はSランクの個室をもらっている時点でその実力は保証されていた。

「会長は・・・やはり文化祭を仕切りつつ、2つのグループで参加するのは難しいし、生徒会長の立場として、特定のグループに力を貸すことはできないと」

「生徒会長は文化祭の最高責任者だから時間的にも厳しいし、特定の人たちをひいきすることもできないということか」

「はい。でも、もし本当にダメなときは力を貸してくださると言ってくださいました」

『(優衣さんらしいな)』

春樹は内心、厳しくなり切れなくてなんだかんだで優しい優衣に対してそんなことを思っていた。

「ねえ、先輩」

「なんだ?」

里奈の目つきは先ほど帰国の理由を尋ねたときよりもさらに真剣味が増したものになっていた。そして、春樹は里奈が次に何を言うかもほとんど想像ができていた。

「私たちに力を貸してくれませんか?」

里奈はその言葉を言いきった後、春樹の返事を求めて不安そうな表情をしていた。春樹は春樹で里奈に対してすぐに返答しなかったため、沈黙の時間が流れて行く。

「ダメですか?」

その沈黙を破ったのは里奈の押しの言葉だった。

「結論から言うと、ダメというか、やめたほうがいい」

すると、あっさりと春樹は返事を述べた。

「どうしてですか?」

断られた里奈は当然食い下がった。

「里奈もわかってるだろ?俺はバイオリニストだ。里奈たちのグループに足りないのはピアニストだ」

「でも、それは!」

「里奈が言いたいこともわかる。だけどな、俺が手を貸しても、里奈たちが損するだけだ。だから、俺はやめたほうがいいと思う」

「それは春樹先輩の意見ですか?それとも「俺自身の意見だよ」・・・」

里奈が言い切る前に春樹は里奈の質問に答えた。

「そうですか・・・、ごめんなさい、無理を言ってしまって」

里奈は見るからに落ち込んでしまい、今すぐにでも泣き出しそうだった。

『(どうしたもんかな~。さすがにこれはかわいそうか・・・。幼馴染の頼みだし手伝ってやりたいんだけどなぁ)』

春樹自身も厳しくなりきれないあたり、ある意味優衣に似ていた。

「里奈、俺は今言ったように、俺が手を貸すことに反対だ。

でもな、もし本当にダメそうだったら、そうだな、もし1週間前になってもメンバーが見つからなかったら俺に連絡しろ」

それが春樹の中で打ち出した妥協点だった。そして、春樹のその言葉に里奈の表情が少し明るくなった。

「それって・・・、手を貸してくれるってことですか?」

「もし本当にダメだったら・・・だ。俺が保険にいるからってメンバーさがしを怠けるなってことするなよ」

そういって、春樹は里奈の頭を撫でた。

「先輩、くすぐったいです」

里奈はさすがに恥ずかしいのか顔を赤く染めていたが、まんざらでもなさそうだった。

「くすぐったいのが嫌だったら、早く泣きそうな顔をやめて、元気出せ」


結局春樹が里奈の頭を撫で終わったのは、そのセリフから3分後のことだった。その後、里奈がトイレに行くと言ってその場を離れた後、春樹に里奈からメールは届き、その内容は『麗華先輩と会ったので、そのままグループの話し合いをすることになったので、そっちには帰れそうにありません』というものだった。

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